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SDGsを経営戦略として読み解く

「誰一人取り残さない」ために

 SDGs(Sustainable Development Goals)とは2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標のことです。それ以前には、2001年採択のMDGs(Millennium Development Goals)がありました。MDGsは8つの目標からなるものでした。活動は一定の成果が出たものの、副産物として、その恩恵を受けた国とそうでない国との格差が生じてしまいました。

 SDGsでは、その反省をふまえ「誰一人取り残さない(Leave noone behind)」という方針から、格差や不平等の是正を新たに付け加え、目標を17に増やしています(下図)。さらに国家レベルの活動の枠組みにとどまらず、民間企業やNGO、自治体といった単位に積極的な関与を呼びかけるものとなっています。


 このことでSDGsは発展途上国の問題のみならず、先進国自身も取組むべきユニバーサル(普遍的)なものとなり、日本政府も積極的な推進を開始しています。
 また民間企業を積極的に関与させるために、2005年に世界経済に大きな影響力を持つ機関投資家等に対して、投資を通じて環境問題(Environment)や社会問題(Social)、企業統治(Governance)の3つの責任を全うするため、ESGに積極的な企業への投資を促す、6つの責任投資原則(PRI)への署名を呼びかけました。すでに世界中の多くの機関投資家が応じています。企業はこうしたESG投資を呼び込むために、SDGsに取り組むという流れも生まれています(下図)。


 日本の産業界でも経団連を中心に、企業のSDGs推進を積極的に働きかけており、胸にSDGsバッジをつけている会社員の姿も見慣れたものになってきました。
 企業がこうした経済、社会および環境の3つの側面をバランスをとりながら経営することは、財務価値の評価だけではなく、持続的な経営に資する非財務価値の評価を重要視している時代背景があるといえます。
 日本企業の中には、これまでのCSR(企業の社会的責任)やフィランソロピー、メセナを通じた活動をSDGsに置き換えることで、すでに達成をアピールする会社もありますが、この点には誤解が多いものと考えます。

カギは「経営への統合」

 前述の「2030アジェンダ」では、企業の活動、投資、イノベーションは、生産性と経済成長、雇用創出などの課題解決の重要なカギと位置づけられ、とくに創造性とイノベーションの発揮に期待が寄せられています。言い換えるなら、企業の事業活動自体が、社会や環境の改善につながること、すなわち本業を起点に、よい社会変化をもたらすサイクルを生み出すことなのです。一過性の慈善的、義務的な社会貢献を期待したものではありません。
 SDGsの企業行動指針であるSDGCompassには、5つの推進ステップが提示されています(下図)。この中で4番目の「経営へ統合する」ステップは重要であり、SDGsの定着のためには、CSR部門だけでなく、全社の経営管理システムにSDGsが組み込まれ、全部門の活動と成果がモニタリングされることが望まれています。これこそ経営ガバナンスが十分に発揮されている状態といえます。

SDGs取り組みの期待効果

 SDGsに取り組む企業は様々な期待効果を得ることができます。例えば、従業員や求職者に対して、社会性を伴ったユニークな企業として働き甲斐などのエンゲージメント向上が期待できるでしょう。JMACのコンサルティングでは、重要なステークホルダーに対してどのような影響を与えたいかを整理することを重視して進めます。

 またSDGsの枠組みはサステナビリティを推進していくうえでの共通言語といえます。各企業は社会の社会的責任を果たすといった、ともすれば義務的になりがちなCSR型の取り組みではなく、 CSV(Creating Shared Value)型の活動へ発展させることが求められています。

 SDGsはビジネスと社会をつなぐ新しい枠組みです。SDGsの枠組みをベースとした共有価値の創造へ向けた活動は、企業がサスティナブルな経営ブランドを確立するための手段でもあります。本業を通じて社会課題の解決に貢献する、社会価値(SDGs)と経済価値(業績)の同時実現を目指す戦略とも言えるのです。


コンサルティングプロジェクトにおける検討課題例

  • 17のゴールの達成手段(製品・サービス・業務プロセス・人づくり・貢献活動...)
  • マネジメントシステムへの組込み方法
  • 指標の設定(業績指標、社会的影響)
  • これまでの活動の位置づけや取り込み方法

 事業が拡大することで社会がよくなり、そして社員の働きがいにつながる、こうしたサイクルを企業が自らつくり上げる、新しいビジネスモデルの戦略的なフレームワークではないでしょうか。