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供給リスク拡大下における サプライヤーマネジメントのポイント
サプライヤー戦略の重要性
調達部門は、調達環境やさまざまなリスク状況の変化に対し、スピード感をもった対応を求められてきました。現在は、調達品の供給途絶リスクへの対応に加え、環境負荷やコンプライアンスへの意識の高まりを踏まえ、従前のコストダウン中心の役割からの変化が求められています。
多くの企業では、外部環境の急激な変化に対処することに追われ、本来求められていることの全体に目配せをした戦略立案ができていないのではないでしょうか。
調達に対するリスクには、以下のようなものが挙げられます。
- 震災、洪水、台風、大雪、等の天災
- グローバルなパンデミック
- 市場の高騰・逼迫 (ex.半導体、コンテナ)
- 禁止物質
- 地政学、経済安全保障
- 人権 など
これからのサプライチェーンには、
- 社会的責任を果たすことができ
- QCD競争力が高く
- 不確実性が高まる中でも強靭な安定供給性
が求められます。
これらの実現には、強い調達体制を確立し、サプライヤー戦略の高度化が重要です。
サプライヤー戦略立案の要点
サプライヤー戦略立案では、一般に主要な施策であるサプライヤー開拓・サプライヤー集約・サプライヤー強化などの検討に終始しがちです。
サプライヤー戦略立案で重要なことは、次の2つです。
調達カテゴリーの目指す状態をカテゴリーの中期目標(競争力+協力度)として具体化
目指す状態とは、カテゴリーのQCD側面だけでなく、リスクマネジメントやサプライヤーとの取引関係も含めた観点で考えることが重要です。
- 競争力= Q: 品質、C: コスト、D: 納期、T: 技術力、M: マネジメント、E: 環境、R: リスクマネジメント
- 協力度=ベクトル合致度
また、この目指す状態の実現度を見えるようにするには、サプライヤー評価の内容と連動させることも重要です。
内外の環境分析を広く行い、その結果を踏まえ、描く戦略の道すじを明確化
社内外の環境分析を広く行い、自社の課題を抽出した上で、戦略を描くことが、目指す姿の実現には重要です。
サプライヤー戦略立案のステップ
サプライヤー戦略は、調達カテゴリー単位に立案していきます。
多くの調達カテゴリーがある中で、個別の担当任せの戦略立案としないためには、サプライヤーマネジメント基本方針やサプライヤー評価基準などのサプライヤー戦略立案の基盤を整え、推進することが重要です。
ステップ1~3は、サプライヤー戦略立案のための基盤整備の推進です。
ステップ4以降は、具体的なカテゴリーを対象に、環境分析を行い、カテゴリーのサプライチェーン強化目標を設定し、その目標達成のための具体的な戦略を立案し、実行していきます。
事例①
業 界:電気部品メーカー
テーマ:サプライヤー戦略の見直し
背 景:調達リスクが多様化する中で、より競争力ある調達の実現に向けてプロジェクトを推進。
プロジェクト初期段階で、診断を通じて調達機能強化に向けた課題整理を行い、推進マスタープランを策定。
サプライヤーマネジメント領域では、サプライヤー層別やサプライヤー評価基準の考え方の再構築から着手し、重要カテゴリーから順次、サプライヤー戦略を策定した。
取り組み内容:
- サプライヤー格付け階層の見直し、各階層のサプライヤーに求める姿の定義を明確化
- サプライヤー格付けごとの運用の考え方を整理
- サプライヤー評価基準を刷新 (評価項目と評価基準の見直し)
- サプライヤー戦略立案手順とフォーマットの標準化
- カテゴリー別に順次、環境分析~サプライチェーン強化目標の設定を行い、戦略立案を実施。原料サプライヤーまで遡ったリスクの洗い出しとQCD目標達成に向けた戦略立案
- 各戦略を実行計画に則り推進
事例②
業 界:精密機器メーカー
テーマ:サプライヤー戦略策定ワークショップ(研修)
背 景:中堅バイヤーのサプライヤー戦略立案能力の強化を図るため、ワークショップに参加するバイヤー各自が実際に担当するカテゴリーを題材としたOJT型の実践研修。
取り組み内容:
- 「サプライヤー戦略立案の考え方と進め方」の講義
- 受講のバイヤー各自が担当するカテゴリーの現状実態の振返り
- 取組みの目標設定
- 環境分析を行い、サプライヤー戦略を立案
- 半年後、戦略推進状況の報告会を実施