連載のはじめに
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
バブル以降の経営改革とは
1990年代初めのバブル崩壊後、金融資本の弱体化、3つの過剰(借入金・設備・人材)、急速なグローバル化、情報通信技術の進展など様々な経営環境変化がありました。これらの経営環境変化に対応するために、企業は構造改革的な側面からの経営改革を実行しました。事業再生やM&A、事業の選択と集中、海外への生産拠点進出、アウトソーシングと雇用流動化の拡大などです。
また、グローバル化に伴う企業ガバナンスの強化、国際会計基準の対応、CF(キャッシュフロー)経営、成果主義人事の採用など経営スタイルの変革を促すマネジメント改革も進めてきました。
さらに、IT(情報通信技術)の発展に伴い、ビジネスモデル改革を意図したプロセス改革にも取組んできています。インターネット基盤を活用した新事業開発は、全く新しいビジネスモデルを生み出しました。ITを活用したSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)、CRMの推進は、従来にない横断的改革の取組みだと思います。
これらの経営改革は、企業に一定の経営成果を生み出しましたが、この好景気は新興国の成長や外需に支えられた面が多く、近年は、その反動としてマイナス面も生じています。たとえば、大企業と中小企業、都市と地方、正社員と非社員などさまざまな格差問題の発生です。過剰な利益意識ゆえの企業の違反行為、成果主義志向による社員への過度なプレッシャーも顕在化しています。ミドル人材の育成不足など継続的な人材開発の問題、IT投資に対する活用能力不足も指摘されています。
新たな経営改革が求められている
日本の優良企業はこれまでも、第一線である顧客接点の業務改善、チームワークによる日常的な継続改善の推進、新商品・新サービス・新技術の改良・開発、環境問題への取組みなど、日本企業の強みである現場力を発揮した改善・改革を実施し続けてきました。
しかし、米国発のサブプライム問題に起因する金融リスク・為替リスクが発生し、日本企業はこれまでの長い好況から世界同時不況というかつてない景気不況に直面しています。
今、日本企業はこの厳しい経営環境変化に対応した新たな経営改革を迫られています。そしてこのようなマイナスの状況だからこそ、強みを活かした新たな経営改革に取組む転換期にあるといえます。経営改革が不可欠であり、「真の経営改革」が求められていると考えています。
経営改革の知恵袋の構成イメージ
次回から経営改革の知恵ぶくろをスタートしますが、大きく5つの切り口からご紹介していこうと思っています。読者の皆さまからの叱咤激励をいただきながら、経営改革の知恵を発信できたらと思います。どうぞよろしくお願いします。
□経営改革全般の考え方
□経営改革にどう取組むか(進め方)
□経営改革に必要な知識と身につけたい技(発想法・手法など)
□業種・業態・規模を意識した経営改革
□経営改革をやり続ける力とするために
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