第27回 成行予測の技
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
今回は、経営改革マスタープラン策定における成行予測と目標とのギャップ認識について理解します。ギャップを埋めるための戦略・施策の策定を促す技についてお話し致します。
成行予測とは
「成行予測」は、中期の財務数値を可能性から厳しく見る予測を行い、必要性から目標とのギャップ認識をして戦略・施策の策定を促すために行います。成行予測による中期の財務数値は、過去や現状の財務数値をベースに変化要因を加味しながら今後の推移を予測した予測値といえます。
たとえば、過去3~5カ年の営業利益がほぼ横ばいで推移してきたとすれば、今後3カ年の営業利益は横ばいとしながら変化要因(顧客の値下げ要求、ライバルの価格政策、原価アップなど)を加味して営業利益の成行予測をします。成行予測については、次の点に留意してください。
・成行予測は、数値だけを予測している訳ではありません。成行予測の根底には、「現時点の財務数値は、過去の戦略・施策の結果数値である」「今までの戦略・施策をそのまま採用すれば財務数値はどうなるかを予測する」という考え方が流れています。
・成行予測は、主にPLの売上高や利益について行いますが、予測の単位は、事業単位で行うことが基本です。成行予測の数値は事業単位で異なり、事業単位の目標とのギャップを認識して戦略・施策の策定に繋げることが必要です。
・成行予測は、計画ではなく思い切った"戦略・施策の打ち手"を引き出すために客観的かつ厳しく行なう将来予測です。
目標とのギャップ認識
中期の財務数値を可能性から厳しく見た成行予測と経営の必要性から立てた目標とのギャップ認識が重要となります。ギャップを解消するために戦略や施策をどうしたらよいかを発想することを促すからです。中期の財務目標は、現時点の財務数値と比較してギャップを認識するのではなく、成行予測による予想値と比較してギャップを認識することに注意してください。3年後の財務目標は、現時点の財務数値でなく3年後の成行予測値と比較する点を理解してください。
また、成行予測が甘いほど目標とのギャップは小さく、成行予測が厳しいほど目標とのギャップは大きくなります。
したがって、成行予測をする際の姿勢が問われますがギャップ認識は、思い切った戦略や施策を引き出すことに繋がることを理解して、厳しく行うことがポイントとなります。
ギャップを埋める戦略・施策のオプション案の評価
次の表は、業績が悪化したL社の中期の営業利益についての成行予測と目標とのギャップを埋めるオプション案の評価を示したものです。
営業利益の成行予測は、3カ年で-460百万円と厳しい数値です。営業利益の目標は、3カ年で1850百万円、ギャップは2310百万円と大きな数値が認識されました。
オプションA案は、事業ミックスや拡販・コストダウンの施策を検討してまとめられた有力案ですが、その営業利益は3カ年で2190百万円です。ギャップが2310百万円ですから、オプションA案は、120百万円の不足という評価になります。
L社のトップは、戦略の見直しや施策の追加検討を指示し、L社は、最終的にはギャップを埋める3カ年の経営改革マスタープランを策定することができました。
このように、成行予測は、今まで検討した戦略・施策の成果見積でギャップは埋めることができるかの検証に役立てるために有効な技です。また、さらにギャップを埋めるための思い切った戦略・施策は何かの発想を促す技といえます。
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