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第28回 戦略・施策と成果目標の関連づけ

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

第24回経営改革と財務目標の関係の中で、「戦略・施策と成果目標の関連づけ」が重要だと述べました。
今回は、経営改革マスタープラン策定における「戦略・施策と成果目標の関連づけ」について、どのように考えればよいかをご紹介します。

戦略・施策と成果をどのように関連づけて考えるのか

事業単位の戦略・施策と成果の関連づけの枠組みを考えてみましょう。
次の図は、G(Goal)ゴールである成果目標を示し成果目標を実現するS(Strategy)戦略とT(Tactics)戦術は何かを示すGST発想法に基づいて、①経営成果と事業戦略、②事業戦略と現場施策、③現場施策と現場成果、④現場成果と経営成果の4つの相互関連づけを示したものです。

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経営改革マスタープラン策定においては、相互関連づけの枠組みを活用して次のような問いかけが可能です。戦略・施策と成果の関連づけの発想法として身につけてください。

①経営成果と事業戦略
・最終ゴールである経営成果(財務指標)を実現する事業戦略は? 
・その事業戦略によって目標とする経営成果は実現できるか?

②事業戦略と現場施策
・事業戦略に基づく戦術としてどのような現場施策が考えられるか?
・その現場施策で事業戦略は実現できるか?

③現場施策と現場成果
・現場施策の現場成果(現場指標)目標とその水準は? 
・その現場施策で目標とする現場成果を実現できるか?

④現場成果と経営成果
・現場成果は経営成果に貢献するか? 
・最終ゴールである経営成果はその現場成果で実現できるか?

BSCの視点を活用した関連づけの例

BSC(バランス・スコア・カード)は、多くの企業に普及した戦略・施策と成果の関連づけの方法と言えます。
次の図は、私がある企業Y社でのコンサルティング支援の際、「BSCのCS(顧客満足)向上、プロセス改革、学習と成長」の3つを現場施策の視点として取り入れたものです。

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この図の枠組みは、次の点を特徴としています。
① 最終的な経営成果は営業利益とCFの目標達成としている。

② 次に経営成果を実現する事業戦略を明確にして共通認識する。

③ 事業戦略に基づく現場施策はCS向上・プロセス改革・学習と成長の視点より展開される

④ 現場施策による現場成果はCS向上・プロセス改革・学習と成長に関する業績指標であるKPI(Key Perfomance Indicator)を設定して運用される。

⑤ 経営成果(財務指標)はKGI(Key Goal Indicator)と呼ぶことにして、現場成果の
KPIと体系的に関連づけをする。例えば、KGI「売上高」は、KPI「成約件数」から、さらに「成約件数」は「顧客からの引き合い件数」や「成約率」のKPIから実現する。

関連づけは各社とも課題

私は、戦略・施策と成果の関連づけに関して、次の2点をまだ課題として抱えている企業は多いと考えています。
① 事業戦略と現場施策の関連づけ

・事業戦略が曖昧なまま現場施策が先行している企業がある
・事業戦略と現場施策の関連づけを意識はしているが、見える化ができていない
・事業戦略と現場施策の関連づけを見える化しているが、共通認識には至っていない 事業戦略の重要性と現場施策との結びつきにこだわる姿勢が不可欠です。

② 現場成果と経営成果との関連づけ

・現場成果と経営成果との関連づけにこだわりがなくマネジメントされていない (例 在庫や人の生産性の向上は測定されているが、財務成果との関連まで追及していない)
・現場成果と経営成果の関連づけを意識しているが、見える化ができていない
・現場成果と経営成果の関連づけを見える化しているが、共通認識には至っていない

Y社事例のように現場成果であるKPIを経営成果とするKGIへ結びつけるマネジメントが必要と考えます。

図  戦略・施策と成果の関連付け(実態調査)

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