第32回 マーケティング志向の事業戦略
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
経営改革の知恵ぶくろでは、マーケティング志向で事業戦略を立てることを基本に事業戦略の技を紹介します。
では、なぜマーケティング志向か、今回は、マーケティングの意味についてその変遷を概観します。
プロダクトアウト志向とマーケットイン志向
メーカーの事業経営の姿勢として、2つの考え方が昔から言われています。
一つはプロダクトアウト志向、もう一つはマーケットイン志向です。前者は、自社事業の持つ製品をいかに市場に投入していくかの「もの不足・競争不足時代の考え方」です。後者は、自社事業の市場を想定していかに製品を投入していくかの「もの充足・競争激化時代の考え方」です。
皆さまの会社では、どちらの考え方で事業戦略を立てているでしょうか?私は、事業戦略とは顧客満足・競争優位を実現する事業の目指す方向を明確にすることであり、マーケットイン志向で事業戦略を立てることを基本と考えています。マーケットイン志向は、自社内部の製品よりも市場を第一と考えて行動することですが、その概念を拡げるとマーケティング志向と言ってよいかと思います。
マーケティングの変遷
ここで、マーケティングの意味を理解するためにその変遷を紹介しておきます。
(下図参照)
●第1段階:販売機能の一部
マーケティングを、販売機能の一部であるマーケットリサーチ(市場調査)と同じ意味で捉えた段階です。製品を工場から販売店へ流通させれば製品が売れた時代でした。販売部門の一部として市場調査組織があり、製品をいかに大量に効率的に販売店へ売るかという調査機能が主眼でした。
●第2段階:事業経営の重要な機能
製品が販売店を通して売れるという時代から、いかにユーザーである顧客に買ってもらうかという時代になり、マーケティングの概念が必要となりました。市場・顧客の開発から商品の販売促進や流通チャネル開拓、そして日常営業までを含めたマーケティング概念が登場しました。マーケティングは、研究開発・生産と並ぶ事業経営の重要な機能という考え方になりました。
●第3段階:事業経営そのもの
製品を顧客にいかに買ってもらうかに加え社会との関わりが問われるようになり、顧客満足と競争優位を実現する時代を経て、マーケティングは顧客を原点においた事業経営そのものという概念に発達しました。マーケティングを研究開発・生産・営業のライン機能だけでなくラインを支援するスタッフ機能も含めて、全ての機能に一貫して流れる基本的な考え方として捉えるようになったのです。
また、マーケティングはトップから第一線担当者まで、顧客を原点に置いてものごとを発想し行動することで顧客を創造することも意味しています。グローバル企業など先進企業は、マーケティングを事業経営そのものと捉えていますが、マーケティングを第2段階の意味で活用している企業も多いと思います。
JMACのマーケティング定義
マーケティングを事業経営そのものとする考え方は、「市場重視・顧客原点で事業経営機能を統合する」ことが大きな特徴と考えられます。JMACでは、この考え方からマーケティングを以下のように定義してコンサルティング活動に活かしています。
(下図参照)
マーケティング志向とは、マーケティングを事業経営そのものとの考えるという意味で使用しています。
次回はマーケティング志向で事業戦略を立てる上でどのような発想が必要かをお話しします。
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