第36回 事業ユニット発想はなぜ重要か
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
今回から、7つの事業戦略発想についてその考え方と活用について紹介します。そのスタートは「事業ユニット発想」です。
事業ユニット発想とは
事業ユニットは、SBU(セクター・事業本部など)をブレークダウンした事業戦略を策定し実行検証する単位を意味しています。事業ユニット発想とは、事業ユニットを明確にして事業戦略を策定し実行検証をすることを指しています。より本質的な言い方をすると、事業ユニット発想とは、事業経営のKFS(Key Factors For Success )が共通な事業のかたまりを事業ユニットとして、事業戦略を立て実行検証をすることを意味しています。
A食品メーカーの事業ユニット例
消費財企業のA食品メーカーは、加工食品・健康食品・医薬品など5事業(SBU)を経営しています。事業ユニットは、市場・顧客と商品・サービスの切り口から設定することが基本です。加工食品の事業を例にとると次の図に示すように4つの事業ユニットが考えられます。
BU1.チェーン小売BU
家庭用市場の主力得意先であるチェーン小売業に対して直接取引(直接商談)によって自社ブランドと得意先ブランド(PB:プライベートブランド)の商品を提供するBUです。
チェーン小売業は、SM(スーパーマーケット)・CVS(コンビニエンスストア)・DRUG(ドラッグストア)などの業態に分けることが一般的です。チェーン小売業は、競争も激しく購買力(バイイングパワー)の発揮や魅力ある商品導入のためにメーカーとの直接取引(直接商談)を志向しますので、食品メーカーは商品の品切れ防止や販売促進の提案をタイムリーに行うことがKFSと言えます。
BU2.独立小売BU
家庭用市場の独立小売業に対して間接取引によって自社ブランド商品を提供するBUです。独立小売業は、少数店舗の地域SMや加工食品を扱う一般商店を指しています。食品メーカーは、独立小売業の取引については食品卸を活用する間接取引となります。食品卸を有効に活用して効率的なビジネスを展開することがKFSと言えます。
BU3.新商品BU
新商品BUは、家庭用市場を対象に自社ブランド商品を中心に新商品を企画開発して、市場へ投入・育成するBUです。家庭用市場は、食品メーカーにとって新商品の投入と育成が事業経営のKFSとなりますので、A食品メーカーでは事業戦略を立てる一つのBUと設定しました。商品の切り口を重視したBUと言えます。
BU4.業務用BU
業務用市場に対して間接取引を中心に業務用商品を提供するBUです。業務用市場は、レストラン・ホテル・給食などの得意先によって形成されています。地域にネットワークを形成している業務卸を流通チャネルとして活用することがKFSとなるBUです。
事業ユニット発想の重要性
A食品メーカーの事業ユニットの設定を通じて事業ユニットのイメージをもっていただきましたが、事業ユニット発想の重要性について述べておきます。
1.事業領域を意思決定する
事業戦略の基本となる事業領域は、市場・顧客と商品・サービスを想定することです。事業ユニットの設定は、A食品メーカーの事業ユニット図に見るように加工食品の事業領域を示していることが分かります。事業ユニットを設定して事業戦略を立てる発想は、事業領域を検討して意思決定することになりますので戦略的な思考法と言えます。
2.事業KFSの違いを峻別して経営をする
事業KFSの把握は、事業特性(市場・顧客特性、商品・サービス特性、競争特性など)を認識し、事業の成功要因を突き詰めることと言えます。一つのSBUで事業特性が異なる複数の事業を展開している場合、事業KFSの違いを峻別して経営にあたる必要があります。事業KFSが共通な事業のかたまりを事業ユニットとして事業戦略を立てる発想は、事業KFSの違いを峻別して経営をすることの重要性を意味しています。
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