第44回 競争発想と事業評価
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
今回は競争発想とは何か、そして事業評価に結びつける事業競争力の評価について話しを進めます。
競争発想とは?
市場には顧客と自社、そしてライバルが存在します。
事業戦略は、顧客に自社の関係だけでなくライバルとの競争を意識する「競争発想」が欠かせません。
私は競争発想を「ライバルとの競争を認識して事業戦略を練ること 」と捉えていますが、下図に示す次の3つの問いかけを事業全体・BU(事業ユニット)毎にするようにしています。
Q1 ライバルは?
Q2 ライバルの競争力は?
Q3 ライバルの事業戦略は?
3つの問いかけ
Q1 ライバルは?
「ライバルは?」の問いかけは、自社事業の競合商品とライバル企業を確認することを意味しています。
自社事業の競合商品は何かを明確にすることによって、ライバル企業も明確になります。
たとえば、軽自動車メーカーの競合商品は軽自動車と考えれば、他の軽自動車メーカーがライバル企業といえるでしょう。
しかし、小型車も競合商品と考えれば、小型車メーカーもライバル企業と考えなくてはいけません。
ライバル企業の情報を継続的にリサーチをして、蓄積・活用することが重要となり、主なライバル企業については、その事業全体(BU単位)で次のような情報をリサーチしておくことが必要です。
・事業概要・・・取扱商品、主な市場・顧客、営業エリア、シェア・業績など
・企業内の位置づけ・・・専業事業、コア事業、補完事業、縮小事業、新規事業など
・競争力評価・・・事業KFSに関する強みと弱みは何か
・事業戦略の特徴・・・過去・現在・将来の事業戦略の特徴は何か
Q2 ライバルの競争力は?
「ライバルの競争力は?」の問いかけは、自社事業とライバル企業との事業競争力を相対評価することを意味します。
事業の市場性評価と合せて競争力評価を行い、事業の方向づけをすることを前回お話ししました。事業の方向づけ (経営資源配分方針の決定)に役立てることが大きな目的となります。
競争力評価の事例は後で紹介しますが、 次の点に留意してください。
・事業KFSとの繋がりで競争力評価をする
・自社事業の強み弱みを棚卸して競争力評価に役立てる
・競争力評価は市場シェアや顧客シェアとの関連も確認する
Q3 ライバルの事業戦略は?
「ライバルの事業戦略は?」の問いかけは、ライバルの事業戦略を想定して自社の事業戦略に反映することを意味します。
ライバルの事業戦略情報を直接入手することは、もちろん出来ませんが、自社事業の市場競争タイプ(群雄割拠市場、激戦市場、三つ巴市場、一騎打ち市場、ガリバー市場など) やライバル企業の市場地位(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーなど)から事業戦略を想定することはできます。
常日頃からライバル企業の情報リサーチをしていれば、ライバル企業の事業戦略の特徴は想定できます。
また、市場・顧客戦略や商品・サービス戦略の特徴 について、過去・現在の流れを把握しておけば将来の流れも類推することは可能となるのです。
BU別の競争力評価
前回に紹介したS社の事業競争力評価の事例を紹介します。
S社は、日配食品メーカーを中心に設備機械を製造販売している企業です。
S社はターゲット市場別に4つのBUを設定しましたが、その内の一つであるCVS・BUの競争力評価をした例が次の表です。
CVS・BUは、CVS(コンビニエンス・ストア)関連の日配食品メーカーを顧客とするBUです。
競争力評価項目は、重要度の高い事業KFSとの繋がりでより具体的に抽出することがポイントです。
S社のCVS・BUでは次のような事業KFSから競争力評価項目が抽出されました。
KFS1.CVSの新商品開発対応力
→新製品開発力(多様化・スピード対応力)
KFS2.市場価格に適合する製品提供力
→市場価格競争力(投資・維持のコスト競争力)
KFS3.上位のCVS企業への事業展開力
→上位CVS企業の先行提案力(実績含む)
また、競争力評価項目に対する自社事業の強みと弱みを棚卸してライバル企業とのとの優劣比較を相対的に行うことがポイントとなります。
競争力評価は、事業関連メンバーによる自己評価の他にトップやスタッフの評価も加えて、お互いのギャップを認識することも大切です。
S社では、さらに主要顧客の顧客満足度調査を実施しています。競争力評価をより客観的に 行うためです。
競争力評価は自社とライバルとの相対的な力を評価するものですが、市場シェアや顧客シェアの実態を確認しておくこともポイントです。
実際の市場シェアや顧客シェアが低いのに競争力評価を甘く事がしてしまうことがあるからです。
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