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第49回 事業構想をまとめる

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

事業戦略は、事業ユニット設定から事業評価のステップを踏まえて事業構想としてまとめられます。今回は、事業構想のまとめ方について話を進めます。

事業戦略の骨子をまとめる

事業構想とは、事業戦略の骨子を意味しています。それでは、事業戦略の骨子は何をまとめればよいのでしょうか。

私は、「目標、戦略と事業シナリオの要点」をまとめることが、事業戦略の骨子をまとめたことになると考えています。GOAL(目標)-STRATEGY(戦略)―TACTICS(施策)の頭文字を略したGST思考が、私の頭の中にありますが、特にGとSの部分が事業戦略の骨子に該当すると言えます。GとSを関連づけて次のように発想することが、事業戦略の骨子をまとめる上で大切と考えて実践しています。

1.事業目標は?
   ・経営改革の目標である財務目標と市場目標は?

2.事業目標を実現する事業戦略は?
   ・基本戦略(CS・競争優位を実現する基本となる事業戦略)は?
   ・事業利益は還元されるか?事業モデルは?
   ・個別戦略(基本となる事業戦略を具体化する機能戦略の方向)は?

3.戦略を実行する事業シナリオは?
   ・経営環境変化に柔軟に対応した事業シナリオは?

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これら3つの内容については、上図に事業構想のまとめ事項として示しましたが、それぞれのポイントを説明しておきましょう。

事業目標は経営改革の成果目標

事業目標は、経営改革の到達点である成果面の目標を意味します。事業目標は、一つは財務目標であり、もう一つは市場目標です。

財務目標は、最終的には「利益」であることは述べてきました。事業全体では「営業利益」、事業ユニットでは「貢献利益」を現状水準(成行水準)からどう変化させるかについて、必要性と可能性の両面から目標設定することがポイントです。

市場目標は、市場における顧客満足・競争優位の指標である市場シェアについて、現状シェアポジション(成行水準)からどう変化させるかの意図を明確にして目標設定することが重要です。自社事業の市場競争タイプ(群雄割拠市場、激戦市場、三つ巴市場、一騎打ち市場、ガリバー市場など) や市場地位(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーなど)を認識して、市場シェア目標を立てるよう留意してください。

事業戦略の適合性

事業目標を実現する事業戦略は、基本戦略(CS・競争優位を実現する基本的な事業戦略)が中心となります。基本戦略は、その内容である事業領域・BUの事業方向づけと市場顧客/商品サービス戦略(競争戦略を含む)、さらに事業モデルに適合しているかがポイントです。

また、基本戦略と個別戦略(基本戦略を具体化する機能戦略の方向づけ)との適合性も要になります。基本戦略との適合性がないまま機能戦略を展開している会社も見受けられるようですが、要注意です。

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上の表は、日配食品メーカーを顧客に設備機械を製造販売しているS社の事業関連メンバーが、事業戦略の適合性を確認するために作成した事業戦略を一覧化したシートです。参考にしてください。

利益が還元される事業モデルを構想する

私は、事業モデルを「(事業領域と事業方向づけ、市場顧客/商品サービス戦略に基づく)利益が還元される事業の考え方と仕組み」と解釈しています。CS・競争優位を実現する事業戦略にするために、事業戦略の一環として有効な事業モデルを立てることが肝になると考えています。事業モデルの策定によって、個別戦略も見えてきます。

柔軟な事業シナリオを立てる

事業構想のまとめには、柔軟な事業シナリオが必要です。事業シナリオは、今後3年、もしくは5年の事業戦略の具体化・実行を時間軸で示すものですが、経営環境変化に応じた意思決定を可能にするために複数の事業戦略選択案(オプション案)を用意しておくことがポイントです。また、リスクマネジメントの観点から、重要な事業リスクが発生した場合の対応を想定するコンティンジェンシープラン(不測事態対応計画)も重要だと言えます。

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ご参考までに、M社の事業シナリオを上図にてご紹介します。


以上の事業構想については、経営力と現場力が連携した経営改革を推進するために、トップから第一線までの共通認識が欠かせないことは言うまでもありません。

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