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第74回 経営管理に欠かせない管理会計

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

経営の意思決定と業績向上に有用な経営管理システムには、管理会計が欠かせません。 管理会計の基本とポイントを、5回に分けてご説明します。

財務会計と管理会計の違い

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会計には、財務会計と管理会計の2つの分野があります。 上の表は、その違いを簡単に比較したものです。

財務会計は、企業外部の利害関係者(株主・金融機関・税務機関など)に対して、財務諸表報告を第一の目的とした会計です。 会計制度(会計基準)に基づくPL・BS・キャッシュフローなどの財務諸表を作成し開示するための「制度会計」です。 したがって、財務会計は、国のルールや国際ルールの求めに応じて、会計の処理と報告をする点に意義があります。

一方、管理会計は、企業内部の経営管理者(経営トップ・マネージャー)が経営管理に役立てることを目的とした会計です。 各企業の経営の考え方に基づく、経営管理に関する会計情報を提供するための「経営管理会計」です。 したがって、管理会計は、経営の意思決定や業績向上に役立てる点に意義があります。

この他にも、次のような特徴の違いがあることも頭に入れておいてください。

・財務会計が日々の経営の結果を示す「過去会計」であるのに対して、管理会計は日々の経営の意思決定や業績向上に有用な「未来会計」の特徴をもっている。
・財務会計が企業全体やグループ全体の会計情報が中心の「全体会計」である。一方、管理会計は、事業・組織・商品・顧客・地域などのセグメント別の会計情報を提供する「セグメント会計」の特徴を有している。
・財務会計は会計制度に基づく利益概念であるが、管理会計の利益概念は、経営の意思決定や業績向上に役立つ利益概念が活用される。

なお、財務会計については、第18回第29回の「財務面の知恵ぶくろ」を参考にしてください。

なぜ管理会計は重要か

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会計と言うと、財務会計を重要視しがちですが、日々の経営において重要なのは、管理会計です。 上図は、管理会計の重要性と位置づけを示しています。

1.経営管理システムに不可欠な会計情報を提供する

経営管理システムを有効に機能させるために、管理会計は、次のような重要な会計情報を提供してくれます。
・営業や生産など組織階層に応じた、業績評価に必要なコスト・損益
・事業戦略の意思決定に必要な事業別損益
・顧客政策に必要な顧客別損益、商品政策に必要な商品別損益
・マーケティング政策に必要なマーケティング利益
・今後の先行損益管理や先行資金管理の情報
・グループ経営管理に必要な、連結ベースの事業別の損益やキャッシュフローなど

2.IT活用による経営の見える化を実現するための要件となる

IT活用による経営の見える化が、各企業の経営改革課題になっています。 物量情報を中心とした現場の見える化は、イメージが浮かびやすいようですが、経営の見える化については漠然としている企業が多いようです。 IT活用により経営の見える化をいつでも可能にするシステムを開発するためには、前述の1で例示した経営管理に必要な管理会計情報を明確にすることが要件となります。

3.経営トップ・マネージャーの経営管理力向上に必要な技である

経営管理力を身につけるには、管理会計の知識・活用スキルが欠かせません。 管理会計には会計という言葉が入っていることで、苦手意識を持つ方がいます。 しかし、管理会計は経営管理力向上につながる技ですので、その基本とポイントを理解して積極的に活用してください。

管理会計システムの位置づけ

管理会計の考えや方法は、ITを使いながら管理会計システムとして構築・活用されます。 管理会計システムは、上図に示すように、経営管理システムとIT活用による経営の見える化、経営トップ・マネージャーの経営管理力を結びつける、という位置づけにあります。

なお、管理会計には、その目的に応じて2つの管理会計がある、と認識しておくことが大きなポイントです。 一つは、業績評価のための管理会計です。 もう一つは、事業評価のための管理会計です。 次回以降にその内容とポイントをご説明しますが、ここでは2つの管理会計があることを頭に入れておいてください。

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