第85回 三位一体でイニシアティブを発揮する
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
ユーザー企業がIT活用においてイニシアティブを発揮するために、トップ・事業ライン・経営スタッフ(IT部門)がどのような役割を発揮すべきかをお話しします。
三位一体の組織力
事業競争の激化・グローバル展開に伴い、IT活用がより重要になっています。これからは、第80回に述べた「経営改革のためのIT活用」と「IT活用の人材マネジメント」という、攻めのIT活用課題に積極的に取り組む必要があります。この課題は、IT部門だけでは解決できません。「トップ・事業ライン・経営スタッフ(IT部門)の三位一体」による組織的取組みが欠かせないのです。三位一体とは、上の表に示すように、それぞれが果たす役割を明確にして、お互いに連携し、組織力を発揮することを意味します。
トップ/CIOの役割とは
トップ/CIO(Chief of Information Officer)の基本的役割は、経営改革とIT活用の目的を明示することです。たとえば、事業競争力の強化や新しいビジネスモデル実現にITを活用することを全員に明示して、その重要性を伝えることです。
経営改革のためのIT活用では、トップ/CIOが経営戦略とIT戦略を連動させる役割を担います。また、IT活用の人材マネジメントでは、IT活用の人材ビジョンを明示することが役割となります。たとえば、事業ラインやIT部門に対して、「事業とITに精通した新人材」への成長を目指すことを表明することです。
トップ/CIOの役割を、IT化の局面を意識して想定することも重要です。上図は、ある中堅企業のCIOと議論してまとめた例です。IT企業への期待も明確にして、IT企業と共通認識をした例です。
事業ラインの役割とは
事業ラインは、経営改革とIT活用を主体的に推進する役割を担います。経営改革のためのIT活用では、事業ラインが自らの事業競争力を高めるためにITを積極的に活用している状態が、目指す姿です。事業ラインは、自社独自のビジネスプロセスを設計しITを有効に活用することが、これからは欠かせません。IT活用の人材マネジメントでは、事業ラインは、IT活用のビジネスモデル発想ができる人材を開発する立場にいます。また、事業ラインに蓄積されたビックデータを情報分析して、事業戦略の意思決定に活かす人材開発も求められています。
IT部門の役割とは
IT部門は、第80回に述べたように、IT活用の守りだけでなく攻めの役割も持っています。コスト削減やITリスクマネジメントの守りのIT活用は、全社的な立場から、IT部門が中心となって推進する役割を果たします。一方、事業ラインの経営改革とIT活用については、攻めのIT活用になりますが、IT部門は事業ラインを支援する立場にいます。事業競争力強化のIT活用を支援することが、その役割となりますが、ビジネスモデルを実現するIT人材やBPR業革力をもったIT人材の開発が必要になります。
なお、IT部門の役割をどこまで求めるかについては、上の図に示すように、3つのタイプが想定できます。
「業務処理型」は、コンピュータ処理を中心とした内向きのタイプです。今後は、事業競争力強化につながる「業務改革型」と「事業開発型」の2つのタイプが期待されるでしょう。多くの企業が業務改革型のIT部門を目指していますが、業務改革人材の開発に苦労しています。また、「事業開発型」のIT部門は、事業部門に近い立場に踏み込んだ姿です。IT活用を組み込んだ事業の新しい価値を企画提案する姿です。サービス産業において、事業とIT活用がワンセットになるビジネスモデルは、事業成長の可能性を秘めています。今後、このようなビジネスタイプは増えていくと思われます。
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