第96回 たえまなき経営改革実現に向けて(5) ~経営改革と人材づくり~
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
今回は、経営改革を推進する人材づくりについて、お話しします。たえまなき経営改革には、ワンランク上の経営改革人材づくりがポイントです。また、実践面と人事面の2面から、経営改革人材づくりに取り組むことが重要です。
経営改革を意識した人づくりとは
人づくりと言えば、人事面を切り口とした、階層別や職種別の研修が思い浮かびます。階層別研修は、経営人材・マネージャー人材・第一線リーダーといった、経営階層別人材が対象になります。職種別研修では、技術・生産・営業など、機能別人材が対象です。また、業種を意識した人づくりも、思い浮かびます。製造業ではモノづくり人材が、サービス業ではサービス人材づくりがベースとなります。
さらに、特定テーマを意識した人づくりもあります。経営改革人材は、このジャンルに入ると考えられます。しかし、経営改革人材づくりと言うと、体系だった研修方法は少ないのが現状です。経営改革の実践を通じて人材が育つ、という考え方が中心となっているからです。いずれにしても、たえまなき経営改革を進めるには、改革の実践面と人事面、2つの面から経営改革人材づくりを進めることが重要と考えています。
ワンランク上の経営改革人材づくりとは
真の経営改革とは、「全体最適の経営改革をたえまなく永続して行うこと」です。これについては、第6回でお話をしました。全体最適の経営改革は、全体を見渡し上下左右の関連メンバーと連携して、経営改革を進めます。したがって、高い視野に立ち、先を見据えた経営改革テーマを想定・推進することが重要です。
全員が会社の目指す経営改革の全体像を理解することは前提ですが、私は、自分の立場よりワンランク上の視点に立った、経営改革人材づくりを提唱しています。たとえば、事業経営改革であれば、次のような経営改革人材像です。
・事業経営者 ・・・ 全社経営視点に立った、全社統合改革人材
・部長クラス ・・・ 事業経営視点に立った、部門横断改革人材
・課長クラス ・・・ 部門経営視点に立った、課題解決人材
・現場リーダー ・・・ チーム経営視点に立った、問題解決人材
また、本社スタッフ部門の責任者であれば、トップマネジメントの経営改革を支援できる人材が、目指す姿となります。また、本社スタッフメンバーは、部門責任者や事業部門の経営改革を支援できる人材を、目指すことが求められるでしょう。
経営改革人材づくりの視点
経営改革人材は、経営改革のキャリアを積むことと同時に、人事面の環境を整備することによって、育成されます。上図は、経営改革の実践面と人事面の2つの視点から、人材開発の代表的な方法を示したものです。
実践アプローチは、経営改革の実践を通じて、人材づくりを進める方法です。その代表的なものが、職制組織やプロジェクトでの経営改革実践、そして、第94回と第95回でお話ひした、経営改革の場の体験です。実践経験を経営改革事例としてまとめ、社内外の経営改革イベントで発信することも、良い方法でしょう。
人事アプローチは、会社の人事制度や研修制度を通じて、人材づくりを進める方法です。具体的には、経営改革のキャリアを計画的に積ませるローテーション制度や、経営改革能力を人事評価に反映させる形があります。また、経営改革の研修を受けて、その能力を身につける方法もあります。さらに、自己啓発で経営改革の知識・スキルを学ぶことも、欠かせません。
経営改革の実践を通じた人づくり
経営改革の実践は、経営成果の実現が目標となります。しかし、真の経営改革は、「経営成果と人材開発の同時実現」を目指すことです。その実現には、上図に例示したように、経営改革のPDCAに沿って、求められる能力を明確にし、経営改革人材づくりを進めることがポイントとなります。
「経営改革マスタープラン策定」においては、会社や事業のトップの戦略力が求められます。戦略力は、経営改革の全体像デザイン力と、経営課題を重点化し優先順位づける意思決定力とも言えるでしょう。ミドル(部課長)は、中期改革テーマについての改革骨子を立案する企画力が求められます、また、第一線リーダーも、自分が担当するテーマの企画力が問われます。
「経営改革マスタープランの具体化」でトップに求められるのは、経営改革の具体化力です。ヒト、モノ、カネ、ITといった、経営資源の面から、経営改革の実行を支援する環境整備力がポイントです。ミドルは、中期改革テーマの企画を具体化する実行計画力が必要とされます。 また、第一線リーダーも、担当テーマの実行計画力が求められます。
経営改革の実行評価において、トップは経営改革の実行を阻害する要因を取り除くことが求められます。また、経営改革の実行に対して、経営改革メンバーを積極的に称賛する力も必要です。その根底には、経営改革をあきらめない、やり抜くトップの根気力が必要です。ミドルや第一線リーダーも、改革テーマを実行して、実際の成果を実現する実践力が求められます。
次回も、引き続き「経営改革と人材づくり」について、お話しいたします。
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