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「製造業のサービス化」で事業成長を目指す

第2回 あらためて「サービスとは何か」を考える

渡邉 聡

 製造業のサービス化とは、「モノ+サービス」から「価値競争」へシフトしていくことだとお話しました。製造業のサービス化を論じる前に、これまでのサービスについての捉え方を確認していきます。

そもそもサービスとは何か?

 今日、私たちはさまざまな場面でサービスという言葉をつかいます。「大盛りサービス」であれば無料といった経済的な価値、「お届けサービス」であれば機能的な価値、「接客サービス」といえば情緒的な価値、「補償サービス」であれば機能的な価値に加え、安心感のような情緒的な価値も含んでいるのではないでしょうか。このように多様なつかい方をされるサービスという言葉ですが、そもそもサービスとはどのようなものなのでしょうか? たとえば、有識者や辞書には以下のような記述がみられます。

●フィリップ・コトラー

 具体的な形のあるものに加え、サービスも製品に含まれる。サービスとは、販売のために行われる活動や提供されるベネフィットのことで、本質的に無形であり、長期的に所有されることはない。広い意味では、経験、人、場所、組織、情報、アイデアといったものも製品に含まれる。[1]

●クリストファー・ラブロック、ローレン・ライト

売買の対象ではあるが、物理的実体はないもの。[2]

●同文館マーケティング辞典(改訂版)

 サービスは、「本質的に無形で所有権を生じない行為またはパフォーマンス」であると定義されているが、これ以外にも「活動」「便益」「プロセス」などさまざまな用語が用いられている。サービスは無形であるが故に、製品(有形財)と異なり概念規定をするのが極めて難しい。[3]

 このように、サービスという言葉はやはり多様な意味を含み、その概念や定義を明確に表現することが難しいといえます。しかし共通してみられる考え方もあり、これらはおおむねモノとの関係においてサービスを定義しようとしていると考えられます。モノとの対比において語られるサービスとは、「本質的に無形であり、顧客満足ために行われる活動や提供する価値のすべて」というような整理ができると考えます。

モノとの対比で語られてきたサービスの特性

 モノとサービスという分け方をした場合、サービスにはいくつかの特性があると考えられてきました(下図)。

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①形がない

 有形のモノに対してサービスとは無形のもの。たとえば、旅行会社が販売している旅行という商品には形がない。

②生産と消費が同時

 旅行という体験(=商品)は、その都度生産され、その場で消費されるというように、サービスには製造→在庫→納品といったプロセスがない。

③人への依存度が高い

 今日では機械やシステムによるサービスも増えてきたが、サービスの提供主体は人であることが多い。

④プロセスも商品

 ヘアサロンは結果としてのベネフィット(=ヘアカット)だけでなく、提供プロセス(顧客との会話や室内環境)も商品となる。

⑤所有権の移行がない

 ヘアカットしたい場合、ハサミを購入すれば「モノ」の所有権そのものが移行するが、ヘアサロンという「サービス」を利用するということ求めるベネフィットのみを購入することになる。

⑥顧客がサービスの一部を担う

 レストランの雰囲気など顧客そのものがサービスの一部を負うことがあるとともに、相談しながら要望を形にしていくヘアサロンのように顧客と共同でつくり上げるという特性がある。

 従来のサービスはこのように特性を語られてきました。そして、この特性によってモノとは異なるマネジメントのポイントが確立されるようになっていきます。

【参考文献】
[1]フィリップ・コトラー、ゲイリー・アームストロング、マーケティング原理第9版、ダイヤモンド社、2003
[2]クリストファー・ラブロック、ローレン・ライト、サービスマーケティング原理、初版第6刷、白桃書房、2007
[3]宮澤永光・亀井昭宏監修、マーケティング辞典-改訂版-、同文舘出版、2003

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