TPM(Total Productive Maintenance)
生産システム上に存在するあらゆるロス(Loss)をゼロにすること(これを生産効率の極限追求という)で、継続的に生産性向上、収益の確保を実現する活動である。米国から導入した生産性や経済性を高めるための生産保全(Productive Maintenance)の概念を日本独自に拡張させ、全社規模で展開する生産革新活動として進化した。多くの書籍では「全員参加の生産保全」と称されており、正式にはTotal Productive Maintenanceと表記される。だだし現在のTPMによる革新は、製造現場の効率化だけに留まらず、「企業の継続的繁栄の基礎条件を確立する」を期待されており、TPMそのものが「新しい経営モデルを構築する手段」として進化しており、Total Productive Managementと拡張して解釈すべき側面が多くなっている。
TPMの特徴
TPMの特徴は、ものづくりのあるべき姿(ロス・ゼロなど)への改善アプローチを「人」「設備」に着目していること、成果を出し続ける仕組みを現場・現物・現実で構築することにある。TPM活動を実践するプロセスで「人が変わる・設備が変わる」、そしてその成果を出し続けるように「職場が変わる・工場が変わる・企業が変わる」ということである。
たとえば、TPMが目指す「ロス・ゼロ」を実現するには、ロスの顕在化、ロスの分類、ロスの削減、ロスの再発防止・未然防止(潜在化したロスへの対策)が大前提となる。TPM活動の実践とは、そのための人づくり、設備づくりを模索・追求していくことであると言える。
TPMは「現場が主役」となる活動ではあるが、「現場の活動だから...」と経営トップが関心を示さない、あるいは経営課題と現場の活動がリンクしないようになると、ほぼ間違いなく活動は停滞、収縮する。そのため、経営トップ層・管理監督者、リーダー、従業員が参画できる仕組みが必要となる。リッカート(1903-1981米国の社会心理学者)が提唱した参画型経営を図る「重複小集団活動」によるTPM推進が有効とされている。
TPMの活動
8本柱(TPMの主要活動) | 活動内容 |
生産システム効率化の個別改善 | 対象職場、ライン、単体設備のロス分析により改善テーマに取り組む。「テーマ選定 → 現状把握 → 目標設定 → 要因解析 → 対象の立案と実施 →効果の確認 → 標準化と管理 → 反省と今後の計画」のようなストーリーに従って改善を展開する |
オペレーターの自主保全体制づくり | 設備がある現場において、作業者1人ひとりが「自分の設備は自分で守る」ことを目的として、自分の設備の日常点検・給油・部品交換・修理・異常の早期発見、精度チェックなどを行う。設備のない部門、手作業の部門においても、職場環境の整備、業務・作業のムリ・ムダ・ムラをポイントに不具合点を改善する |
保全部門の計画保全体制づくり | 専門保全として故障低減、部品寿命延長に取り組み、予備品管理、保全費管理、さらには予知保全体制の確立などを行う |
製品・設備開発管理体制づくり | さまざまな改善情報のフィードバックによるつくりやすい製品開発や、信頼性・安全性・操作性・保全性の高い設備づくりを行う |
品質保全体制づくり | 不良の出ない条件設定とその維持管理によって、不良ゼロ・クレームゼロを目指す活動である。従来のようにできた製品の検査強化により流出防止を図る品質保証ではなくて、工程・設備で品質をつくり込み不良の未然防止を図る |
教育・訓練の体制づくり | 仕事を進めるうえでその職場に必要な知識、技能を整理しスキルの評価と向上を図っていく |
管理・間接部門の効率化体制づくり | 事務所の5Sや事務工数の削減など事務の効率化活動さらには購買、物流在庫ロス削減、営業の売上拡大など効率化と価値創造の活動を展開する |
安全・衛生と環境の管理体制づくり | 生産性に優れた工場でも、災害があり、環境がよくない工場は良い工場とはいえない。「災害ゼロ、公害ゼロ」が従来からTPMでは強調され、さらには「廃却ゴミゼロ」など環境にやさしい生産活動にも展開していく |
TPMの定義
TPMは一般的には下記のように「定義」されているが、実際に自社でTPMを導入する際は、自社の経営環境や経営課題に合わせ、下記を参考に各社各様に定義するとよい。
TPMとは、
- 生産システム効率化の極限追求(総合的効率化)をする企業体質づくりを目標にして、
- 生産システムのライフサイクル全体を対象とした「災害ゼロ、不良ゼロ、故障ゼロ」など、あらゆるロスを未然防止する仕組みを現場・現物で構築し、
- 生産部門をはじめ、開発・営業・管理などのあらゆる部門にわたって、
- トップから第一線従業員に至るまで全員が参加し、
- 重複小集団活動により、ロス・ゼロを達成する
ことをいう。
(文責:和泉 高雄)
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