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ZD(Zero Defects)

 ZDとはゼロ・ディフェクツ(Zero Defects)の頭文字で、わが国では無欠点運動あるいはZD運動と呼ばれている。1962年に米国のマーチン社フロリダ・オーランド事業部が、国防省からの要請で陸軍のミサイルの納期を2ヵ月から1ヵ月半に2週間短縮するために、ミサイル製造に携わる全従業員に「はじめから正しく仕事をすること」を呼びかけたのがZDのはじまりである。もともと技術水準も管理水準も高かった同社では、納期を短縮する余地がどの工程でも見つからなかったが、組立後にある2週間のテスト・手直し工程をなくすことで納期短縮の実現を目指したのである。そこで、全員参加で手直し・やり直しをしないで、はじめから完全な製品をつくることに取り組んだ。そして、図面のミス、部品製作のミス、組立のミスなどをしないように関係者全員が心掛けた結果、どこにも欠点がない製品をつくり上げ、見事に納期短縮を達成した。すなわち、納期短縮という企業目標を「欠点ゼロ」と「動機づけ」という2つの手段を用いて実現したのである。
 この「はじめから正しく仕事をするように従業員を動機づける計画」がZDプログラムと名づけられ、当時のマクナマラ国防長官がこれを高く評価して産業界にその実施を勧告したため、急速に全米に普及した。
 ZDが日本に導入されたのは1965年(昭和40年)のことである。米国でZDが誕生した1962年に、QC(品質管理)に熱心な日本電気が日本国内でいちはやくQCサークル活動を開始していた。そして、同社の社長であった小林宏治氏が1964年に渡米した際にZDに感銘し、1965年にZDを導入したのである。すでに開始していたQCサークル活動と一本化して"ZDグループ活動"とした日本電気式のZDを、日本能率協会(JMA)が日本の産業界に広めることで急速に普及していった。日本電気では、ZD運動の目的を次のように述べている。
 「ZD運動とは、従業員1人ひとりの注意と工夫によって、仕事上の誤りの原因を除去し、はじめから正しい仕事をすることによって、品質と原価と納期に対し、効果的に仕事をすすめることである」(日本電気編、『ZDの実際』、JMA刊)
 すなわち、品質と原価と納期に対し、効果的に仕事をすすめるという企業目標を達成することが、ZDの目的であることがここでも明確に示されている。
 ZDのもっとも大きな特色は、その名のとおり欠点をゼロにすることである。欠点とは不良、故障、災害などであり、これらをゼロにすることは"あるべき理想の姿"である。従来の欠点をゼロにする方法としては、たとえば不良品を出してから良品と選り分けたりしていた。しかし、ZDでは「はじめから正しく仕事をする」ことによって、不良品をつくらないようにする。これを欠点予防(Defects Prevention)という。また、米国ZDと日本のZDを比べると、米国は1人ひとりが行うのに対して、日本は小集団活動で行う点が大きな違いとなっている。
 ZDは、いわば動機づけプログラムであり、予防の実践的方法論であり、企業目標の達成のために全員参加で取り組む活動であること、さらに無欠点を目指すために要因系やプロセスでの欠陥をゼロにする点などは、まさにTPMと共通する哲学を持つものといえる。