生産性(労働生産性)
生産性は「アウトプット(産出)÷インプット(投入)」で示される指標である。生産性が向上することで、過去より、安い費用で、より便利なサービスを得ることができる。その結果、人類は年々豊かな暮らしを手に入れてきた。たとえば、洗濯という行為を例にとると、手洗い→初期の洗濯機→2層式洗濯機→自動洗濯機→洗濯乾燥機、というように、人の手間をできるだけかからないように改善し、かつ、エネルギーや水など資源を節約してきた。
生産性は、資本生産性、労働生産性、設備生産性、原材料生産性など、資本を含む投入資源全般について対象とするものである。だが、前置きがない場合、労働生産性を生産性と呼んでいる場合が多い。労働生産性は生産量を分子に置き、投入工数や人数を分母に置いた指標である。毎年、新聞等で発表される、生産性の国際比較とは労働生産性である。
生産性は投入資源全般について対象とするものであり、算出方法も多岐にわたる。例えばアウトプット(算出)は産出成果をとることとなるが、生産量として個数や重量、あるいは金額として売上高や生産高、売上から原材料費など直接費を除いた付加価値額を取ることもある。また、インプット(投入)は投入資源をとることになるが、人に関しては人数、工数、設備に関しては台数、設備の時間など、活用目的に応じた生産性指標を設定することが重要である。
また、設備生産性は設備総合効率、原材料生産性は歩留や収率、資本生産性はROEと言い換えられるように、それぞれの企業で使用している管理指標は全て生産性指標をベースにしているといえるほど重要な概念である。
(労働)生産性を向上させるには、分子であるアウトプット(生産量)を増やすか、分母であるインプット(投入工数:人数×時間)を減らすかが、基本の取り組みとなる。今と同じ人数で2倍の量を生産できれば生産性2倍となるし、今と同じ量を、半分の人員で生産できれば生産性2倍となる。いずれも生産性2倍ではあるが、通常、アウトプットは自社で決められるものではなく、お客様の要求や需要で決まる外的要因の要素が強い項目である。一方、インプットはお客様には関係しない内部努力で変化させられる項目である。インプット減の工夫や努力を、日々推進することが不可欠である。工夫や努力の積み重ねが企業間の競争力の差となって現れる。結果として生産性向上ができればよいという取り組みではなく、置かれている環境に応じた、狙いを明確にした取組が求められる。
また、労働生産性を向上させるためには、生産性向上の3側面という見方を知ることも重要である。生産性を向上させるには、いまより、良い作り方がないか、うまいやりかたを皆で共有できないか、繁忙閑散など作業ができない状況を打破できないかなど、生産性向上の3側面に応じた的確な取り組みが求められる。
生産性を他社より向上させられる企業は勝ち残り、生産性を向上できない企業や産業は淘汰される。たとえば、同じ機能の洗濯機を作るのにA社は5万円必要とし、B社は10万円必要となれば、生産性に2倍の開きがあるB社は負けるのである。
(文責:JMACコンサルタント 伊庭 栄)
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