第46回 ポジショニング発想と基本定石
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
今回はポジショニング発想による事業方向づけ(経営資源配分の方針決め)の基本定石をご紹介します。
ポジショニング発想とは?
ポジショニング発想とは、市場の魅力度である市場性評価と事業KFSの競争力評価の2つの視点から事業ユニットを図上にポジショニング(位置づけ)して、事業の方向づけを発想することです。
43回~45回に紹介した日配食品メーカーに設備機械を製造販売しているS社の事業ポジショニングを例示したものが下図です。
ポジショニングは、下図に示すように事業ユニットを4つのゾーンに位置づけて事業の方向づけを行うことを原則としています。
4つのゾーンは、事業方向づけの基本定石を示していますので、各事業ユニットの経営資源配分の方針を客観的に議論して決めることを可能とします。
また、各事業ユニットの戦略・施策を、事業ポジシヨニングに応じて検討することを促します。
下図参照
4つのポジショニングと基本定石
4つのポジショニングに基づく事業の方向づけの基本定石はつぎのように考えられます。
ポジショニングⅠ
ポジショニングⅠは、市場性が高もしくは中(普通)であるが、事業の競争力がライバルより優位の位置づけにあるゾーンです。
事業の方向づけは経営資源配分を積極拡大することが基本となります。
経営資源配分をライバルに負けずに行うことが必要です。
ポジショニングⅡ
ポジショニングⅡは、市場性が高もしくは中(普通)であるが、事業の競争力はライバルと同等の位置づけにあるゾーンです。
事業の方向づけは重点市場や重点商品を選択して経営資源配分をすることが基本となります。
また、事業の競争力をライバルより優位にもっていく戦略・施策を発想することが求められます。
ポジショニングⅢ
ポジショニングⅢは、市場性が高もしくは中(普通)であるが、事業の競争力がライバルより劣位の位置づけにあるゾーンです。
ポジショニングⅢに位置づけられる事業は、成長時期にある事業や成熟時期にある事業、社内的には撤退が騒がれている事業が多いと言えます。
経営資源の過不足を判断して、経営資源配分の見直しをすることが基本となります。
事業の競争力をライバルと同等に持っていけない場合は、事業の撤退も視野に入れて考えることが求められます。
ポジショニングⅣ
ポジショニングⅣは、市場性が低で、事業の競争力はライバルと比較して、劣位・同等・優位の位置づけにあるゾーンです。
事業の方向づけは維持・刈取もしくは撤退が基本となります。
事業の競争力がライバルより優位にある事業は、市場の魅力度は小さいが収益を出しているケースがあります。
この場合は、事業は維持もしくは刈取が基本となります。
刈取は、経営資源配分を縮小しながら利益が発生しなくなったら撤退を選択していくことを意味しています。
収益性を加味する
事業の方向づけは、市場性と競争力の他に事業を収益性の視点からシビアに見ることが必要です。
また、ビジネスモデルの変更など収益改革の戦略・施策を発想することを促すためにも収益性をシビアに見ることが必要となります。
次の図は、事業ポジショニングごとに収益性水準を加味して事業の方向づけを検討する場合の例示です。
横軸は収益性水準を4段階で表現しています。
事業ユニット別の損益を把握する必要がありますが、事業の収益性水準を評価する見かたとして活用してみてください。
下図参照
S社の事例
事業ポジショニングを行う前提として、市場性・競争力・収益性の3つの視点からの事業評価を行う体質や仕組みが重要です。
S社は、中期計画策定に当って、事業ユニットの責任者は事業評価を客観的に行います。
次の表はS社の4BUについて事業評価をまとめたものです。
事業ポジショニングの前提となる事業評価の議論に活用しています。
下図参照
S社では事業評価に基づくポジショニング発想を経営幹部が身につけることにより、議論が活発となり客観的な意思決定ができる体質へと変化しました。
言い方を変えると、事業ラインの経営幹部一人ひとりが、経営者感覚を身につけたと言えます。
合わせて、経営企画スタッフにおいても、事業評価のデータ蓄積だけでなく、活用する発想を学び仕組みを構築する事で、事業ラインを支援する体制へと変革しています。
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