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第57回 BPRは前向きの経営改革

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

BPRは、単なる業務効率化ではなく、前向きな経営改革の一環としての業務改革です。 今回は、BPR推進の7つの基本姿勢をご紹介します。

業務改革を取り巻く問題

日本企業は、「顧客満足の変化と事業競争の激化」「グローバル化の進展」「情報技術の進展」の3つの大きな経営環境変化により、BPRも事業システム改革と共に進化していくことが必要であると前回述べました。

日本企業は、デフレ経済の下で各社とも経営改革に結びつく業務改革に取り組んできました。 しかし、顧客満足・競争優位を実現する業務改革に至っていない企業もあります。 たとえば、次のような問題を抱えている企業があると認識しています。 事業戦略や人材変革を実現する前向きな経営改革に繋がるBPRを推進する余地がまだまだあると考えられるでしょう。

 ・新たな市場・商品戦略や事業モデルに、業務改革が追いついていない
 ・業界再編に伴う情報システム統合に、業務改革が追随しない
 ・企業内部の効率化中心の業務改革で、顧客や取引先との連携改革が進んでいない
 ・事業運営の仕組みが製品供給サイド優先で、市場・顧客からの改革が進んでいない
 ・ビジネス・プロセスの迅速化の改革余地が大きい
 ・J-SOX法の対応など業務の可視化は進んだが、業務改革には結びついていない
 ・経営と現場の連携が不足している、業務の効率化で満足している
 ・人件費削減先行で、業務ノウハウ化が蓄積されていない
  ・・・アウトソーシングや非社員の増大による、業務ノウハウ化の蓄積不足
 ・ITの投資・コストに対する成果実現が見えていない
  ・・・業務改革が弱いIT導入、IT運用コストの増大、情報活用力の不足など
 ・マインドイノベーションの視点が欠落している
  ・・・人材変革イメージの欠落、人の意識・行動改革の不足など
 ・ビジネス・パフォーマンス・マネジメントの仕組みが運用されていない

BPR推進の7つの基本姿勢

BPRによる業務改革推進の基本姿勢をあげると、次の7つに要約されます。

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1.白紙姿勢(ゼロ・リセット)
 ・現状のビジネス・プロセスを白紙にして、根本から新たなビジネス・プロセスを創出する
 ・顧客は誰か、顧客満足につながる提供価値は何か、という根本的な問いかけから、顧客起点の
  ビジネス・プロセスを再設計する

2.経営力と現場力の連携
 ・トップのリーダーシップ発揮とミドルの改革推進を連携させる
 ・トップのリーダーシップ発揮・・・BPRの基本方針宣言、キーマンの配置、改革阻害要因の除去、
                    改革の徹底など全体最適化の立場からの活動
 ・ミドルの改革推進・・・ビジネス・プロセス・オーナーとしての改革リーダー役、人材変革の先頭者、
              基盤整備の推進役としての活動

3.段階的成果出し
 ・短期成果と中長期成果を分けて、段階的に成果を実現する
 ・現場成果を経営成果に結びつけることを意図する
 ・オペレーション成果からマネジメント・マーケティング成果、事業創出成果へ結びつける

4.ITの実際的活用
 ・IT万能という考えでなく、業務改革後の姿を描いてITを有効活用する
 ・「トップ・ライン・スタッフ」の三位一体で、ITを活用して成果を実現する

5.業務面・情報面の基盤整備
 ・業務のルール・流れの標準化や業務の共通化など、足元の改善を推進する
 ・全社的に共通するコードやシステムの考え方を整備して、情報システムを構築する

6.人材変革の重視
 ・経営各層が自らの役割や能力を見直し、業務改革後の人材変革像を想定して推進する
 ・経営環境変化に対応した課題解決ができる業務改革人材を、計画的に開発する

7.業務改革の徹底実施
 ・経営成果と人材変革を実現するために、業務改革の実施を徹底する
 ・ビジネス・パフォーマンスをモニタリングする仕組みを導入して、改革を徹底する

BPRの推進期間

BPRによる業務改革は、次のような場合に行われることが多いと考えています。

 ・事業戦略(事業モデル)に基づく事業システム改革時に行われるケース
 ・グローバル事業展開やM&Aなど、構造改革に伴って行われるケース
 ・全社もしくは事業部の情報システム再構築に併せて行われるケース
 ・全社の業務改革活動の一環として、事業部が取り組むケース
 ・各事業部が中計経営計画に基づき、主体的に行うケース  など

したがって、BPRによる業務改革にどのくらいの時間をかけるかは、ケースによって異なります。 また、個々の会社のニーズ・実態によっても変わりますが、2~3年の中期スパンでの取組みが多いと認識しています。 自社の業務改革の実力も考慮して、BPRに取り組んでいただけると良いでしょう。

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