第64回 BPR業革の人材づくり
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
BPR業革については、今回が最終回となります。BPR基本計画策定の基本技術を身につける研修事例をご紹介します。
A社の事例:BPR業革リーダー人材研修
1.背景
A社は、化学会社で多角化事業を展開しています。 各事業の競争力強化のために、経営改革の観点から全社の業務改革を伴った情報システムの再構築に、3年がかりで取り組むことになりました。 経営企画室と情報システム部が、全社の推進事務局となりましたが、各事業部の業務改革をどう進めるかが大きな課題でした。 特に、BPRによる業務改革を各事業部でリードする人材育成が必要との認識をもっていました。 そこで、事前にBPR業革の社内研修を企画・実行することにしました。 BPR基本計画策定のオープンセミナーを実施していた、JMACのコンサルタントがご支援することになったのです。 研修参加者は、モデル3事業部のメンバー9人と推進事務局メンバー6人の計15人でしたが、研修概要は以下の通りです。
2.目的
(1)業務改革リーダーの基本技術の習得
社内の経営改革に対応したBPR基本計画策定の基本技術を、自社事業を対象とした実習方式で身につける
(2)BPR業革の基本構想(仮説)の策定
モデル3事業部のBPR業革の基本構想(仮説)を策定して、実際の事業競争力改革に役立てる
3.研修プログラム
研修プログラムは、第1単位(半日)と第2単位(2日)で構成され、下図の内容で行われました。
4.研修後の評価
参加メンバーによる研修評価は、今後の業務改革に前向きに取り組む声が多く、その後の全社業務改革に活用されました。
・BPR業革の考え方、進め方や手法を習得することができた
・モデル3事業部について、BPR業革の実際の課題や改革方向の仮説が策定できた
・1チーム4~5人の協同作業で取り組んだため、お互いの思いが共有化された
(技術・生産・営業の事業部メンバー3人と事務局メンバー2人で、チームを編成した)
・トップも、報告会に参加することによって、経営改革視点からの自社の業務課題を認識することができた
・モデル事業部の業務改革を先行実施して、全社的な業務改革を繋げる気運が高まった
その後、A社は、研修プログラムを一部カスタマイズすると共に、研修を全社展開しました。 BPRの基本技術を習得しながら改革構想の仮説を設定する、実践的な研修スタイルは、他社からもベンチマーキングの事例として評価されました。
U社の事例:BPR実践研修による人づくり
1.背景
U社は、価格競争の激しい包装資材業界で、3つの事業を展開しています。 U社は歴史もあり、業界ではトップグループを形成していましたが、各事業の売上・利益も横ばいとなり、事業競争力の強化に本格的に取り組む転換期にありました。 トップの事業戦略は的確でしたが、各部門の機能連携力やシステム力は充分ではありませんでした。 特に、一人ひとりの意識が部分最適に陥っており、意識改革が必要との認識がトップにありました。
経営企画室の担当役員である専務は、転換期にあるU社を改革していくためには、経営目線によるビジネス・プロセス改革が必要と考えていました。 また、トップから第一線まで、人の意識・行動・能力の変革が必要不可欠とも、認識していました。 最終的には、社長が専務の思いを受け止め、その具体化を指示しました。
専務は、「業績改革と人づくりを同時実現したい」との考えから、自社事業を対象に、事業部メンバーが主体となってBPR業革を推進することを考えていました。 詳細は省きますが、トップを対象とした基調講演を皮切りに、3ヶ月間でBPR基本計画を策定する実践研修をスタートさせたのです。 実践研修概要は、以下の通りです。
2.目的
(1)BPR基本計画の策定
3事業部の事業競争力強化を図るBPR基本計画を策定する。 特に、顧客満足と競争優位を実現する、事業システムの改革シナリオを明らかにする。
(2)事業部メンバーのBPR業革力の開発
事業戦略を具体化・実行するBPR業革力を開発する。 特に、一人ひとりの意識・行動・能力開発に繋げることに留意する。
3.研修プログラム
研修プログラムは、集合研修延べ9日と職場での準備・検討・まとめを組み合わせた下図の内容で行われました。
4.研修後の評価
3事業部とも、BPR基本計画を実践研修方式で無事に策定することができ、次のような評価を得ました。
・事業戦略を具体化して実行に移すBPRの考え方・手法を、身につけることができた
・中期の経営改革目標を実現する業務改革後の姿と課題が明確になった
・「事業=市場・顧客×製品・技術」の視点から業務改革に取り組むことを認識した
・従来の積み上げ的改善だけでなく、事業経営の視点から取り組むプロセス改革が新鮮だ
・製品の品質・価格・納期をシステムで支える事業システム発想が不可欠だ
・営業・技術・調達・生産・物流など、機能連携を実現する横断業務改革が明確になった
・他事業部の業務改革力をお互いに認識することができて、競争意識が高まった
・トップの事業戦略の思いを現場が受け止めて、業務改革を実行する意識が深まった
・本社や工場の管理間接部門なども顧客志向でBPRに取り組むことが可能だ
その後、U社はBPR基本計画を2年間で具体化・実行し、経営目線による業績改革に繋げました。 一人ひとりの意識・行動も、受身から前向きな姿勢に変化を遂げました。 2年後に社長になった専務も、U社がBPR業革を通じて事業戦略を実行できたことで、体質転換を感じました。
JMACのBPR研修の特徴
JMACの提供するBPR研修は、ケーススタディによる基本技術習得の方式もありますが、A社とU社の事例で紹介したように実践的な研修方式であり、以下の特徴を持っています。
1.経営改革視点からのBPR研修
BPRとは事業戦略を具体化・実行する業務改革である、という考えにもとづいた研修です。
2.コンサルティング・プログラム・ベースの研修
「基本計画策定の基本技」(10のワークシート)など、BPRコンサルティングのノウハウを研修プログラムに反映しています。
3.自社事業を対象に実行を前提とした実践研修
自社事業を対象に、生データを活用して実際の事業競争力強化に結びつける実践研修です。
次回から、「管理面からの経営改革」について、お話しいたします。
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