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オンライン営業のスキルを上げるには

  • マーケティング・営業

坂田 英之

坂田 英之(チーフ・コンサルタント)

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前回のコラムでは、オンライン営業における定量的側面の変化と定性的側面の傾向についてお伝えした。今回はオンライン営業のスキルを高めるための具体策を紹介する。改めて対面営業からオンライン営業に移行した際に、一般的にどのような違いが出てくるのかを確認してみよう。

〈オンライン営業で起こる変化〉

  • 商談時間が減り、話量が増える
  • 買い手からの質問量が減り、売り手からの質問量が増える
  • クロージングワードが減る(とくに不成約商談)
  • 共感的態度が少なくなる
  • 会話を深められる人とそうでない人の差が出る
  • 個別顧客に応じて提案ができる人とできない人の差が出る
  • 最後のまとめが少なくなる

以上のとおり、オンライン営業では「意図せざる変化」が起きてしまい、対面営業と同様のスキルだけでは営業の質を高めることができない。

ここでは対面からオンラインへ営業をシフトするにあたり、どのような課題があり、どのような検討をしたのか、どのようにスキルを高めていったらよいのか、具体的な流れを説明する。

オンライン営業スキルのバラツキをなくす

A社の事例を見ていこう。A社ではコロナの影響で営業全員がオンライン営業に移行する方針が決まった。使用ツールはZoomである。

A社はIT業界ということもあり、一部の部門ですでにインサイドセールスを行っていたため、オンライン営業への抵抗感はなかった。しかし、オンライン営業スキルにバラツキがあり、成約に結びつけられる人とそうでない人との差が大きくなっていた。

そこで営業企画部が主体となり、オンライン営業スキルのバラツキをなくすために、以下の対策を行った。

①モデル部門の選定
②現状のスキル把握
③スキル向上のための研修
④研修後の効果測定

それぞれの内容を詳しく見ていこう。

①モデル部門の選定

対策の実証検証と進め方を標準化するため、ある領域を担当している20人のBチームをモデル部門として選定した。選定理由は、

  • 部門長が取り組みに前向きである
  • 人員構成(経験)のバランスが、平均的である
  • 以前から一部でインサイドセールスを行っていて、比較的早くからオンライン営業に移行できている
  • 同様に先行してオンライン営業を行っていた他の部門に比べて、成約率にバラツキが大きいという問題を抱えている

からである。

②現状のスキル把握

次にA社はコンサルティング会社に依頼して、20人全員のオンライン営業スキル診断を行った。30分程度のオンライン商談をお客さまの了承を得て録画し、そのトーク内容をAIと専門コンサルタントが解析するという診断方法を用いた。

オンライン営業スキル診断

AIでは、主に量的側面から以下の診断、解析を行った。

  • トーク内の構成バランス(客観的根拠説明、主観的理由、具体的な理由・事例などの構成、話者バランスなど)
  • 質問回数(買い手の質問回数、売り手の質問回数など)
  • クロージング語の利用量

専門コンサルタントによる診断は、主に質的側面からの診断である。具体的には、

  • 顧客対応マナー(声が聞き取りやすいか、画像の映りはよいか)
  • インタビュー力(一方的な話になっていないか、深掘りできているか)
  • 顧客聴解力(状況を聞き取り、課題を顕在化できているか)
  • 個客提案力(お客さまから聞いた状況を踏まえて個別の提案ができているか)
  • 商品訴求力(お客さまの課題とひも付けて商品訴求が行えていたか)
  • クロージング力(意図的に商談を次のステップに進められていたか)

などの視点から、専門コンサルタントが録画した商談を解析した。モデル部門では以下のような結果が出てきた。

◆良かった点

  • 売り手からの情報提供(話量)は適正であった
  • クロージングワードも頻繁に出ていた
  • 売り手からの質問は出ていた
  • 発声が聞きやすくスピードもおおむね適正であった

◆改善が必要な点

  • 「あの、その」など、あいまいな言い回しが多い
  • 同じ話題を深掘りし過ぎ
  • お客さまの使用実態などの情報収集をしないまま商品説明に入る
  • 買い手からの質問を促進できていない(一方的に話す)
  • 次のアポにつなげるための商談のまとめがない

③スキル向上研修

現状のスキル把握で改善すべき点が明確になったため、次に研修で各人のスキルアップを図った。ねらいはオンライン営業スキルのバラツキをなくすことである。

研修に先立ち、各人に②のスキル診断結果のフィードバックを行った。具体的には、各人別のフィードバックレポートを作成し、それをもとに各人が改善すべきスキルと改善のために今後やるべきことを書き出しておく。

その後、半日2回のオンライン研修を行った。研修内容は講義よりも討議とロールプレイングが主であった。討議では診断したある方の商談(録画)をオンラインで見て、その商談の良かった点や改善点を検討した。「頻繁に投げかけしているのがよい」「このタイミングでなぜ、この説明をしているのか」などの意見を出し合い、抽象的ではなく具体的にオンライン商談で何をすればよいかを理解する。

頭で理解できたら、次は具体的なアクションの習得である。テーマを絞り込み、ロールプレイングを行った。たとえば、「一方的な商談にならないよう5分に1回はお客さまに質問を促すロールプレイング」などである。

さらに、短期間でスキルが定着するような工夫も行った。1回目と2回目の研修の間に2週間のインターバルを取り、そこで1回目の研修で習得したスキルを実際の商談で使えるようにした。

④研修後の効果測定

2回目の研修が終わった後、1カ月経過したところで、再度コンサルティング会社に依頼して、②と同一の方法で効果測定を行った。

効果測定の結果は、全体的にはオンライン営業スキルの底上げはできたものの、以下が改善点として残った。

  • 「あの、その」などのあいまいな言い回しが多い
  • お客さまの使用実態などの情報収集をしないまま商品説明に入る
  • 次のアポにつなげるための商談のまとめがない

底上げができたのは、2回のオンライン研修を通じて、オンライン営業で対面営業よりも明確に行わなければならないことへの共通認識ができたからだ。改善点が残ったのは、頭だけでなくアクションを習慣づけていくために、本人が意図的な商談を繰り返す必要があり、もう少し時間がかかるだろうということだった。

以上が大手SIer A社の取り組みである。進んでいる企業はオンライン営業に移行しただけでなく、改善のためのPDCAを回している。オンライン営業は、コロナの影響が一段落してもなくならないだろう。A社のように適用・進化のための取り組みを、今からでも始める必要がある。

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