第55回 生産財ビジネスの事業システム改革例(2) ~改革テーマ~
- 経営改革の知恵ぶくろ
神奴 圭康
前回、生産財ビジネスの事業システム改革例として、Y社の改革背景、推進ステップなどを中心にご説明しました。 今回は、Y社の改革テーマについてお話しいたします。
事業システム改革のテーマ
事業システム改革は、事業モデルを具体化して実行するものです。 Y社では、次のテーマが主な内容となりました。
■ECM改革
ECM(エンジニアリングチェーン・マネジメント)改革は、「企画開発~設計~購買~生産技術」の事業プロセスを対象としました。
1.グローバル対応の開発設計・購買システム
国内外市場における製品のシステム化を実現する統合部品表の導入・活用を図る
2.グローバル・レベルの企画購買力の強化
海外中価格市場の進出に備えて、海外での企画購買力を強化する
■SCM改革
SCM(サプライチェーン・マネジメント)改革対象の事業プロセスは、「素材・部品の社内外調達~完成品の生産~顧客への物流」までにしました。
1.グローバル対応の受注生産システムの確立
実需をベースとした素材・部品の調達~受注生産~物流のシステムを構築して運用する
2.国内の受注生産システム活用の徹底による在庫最適化
内注ルールの見直し、受注後組立システムなど在庫最適化を図る事項を改善する
3.グローバル対応のERPパッケージの導入
SCMの実行プロセスについては、海外進出に備えてグローバル対応のERPパッケージを導入する
■DCM/CRM改革
DCM(デマンドチェーン・マネジメント)改革は、新規顧客と既存顧客の新規需要開発プロセスを対象にしました。 また、CRM(カスタマーリレーション・マネジメント)改革の対象は、既存顧客との長期信頼形成を基本目的に、既存顧客の既存需要(保守・修理、更新など)開発プロセスとしました。 このDCMとCRMは相互に関連することに留意して、組織・システム・人の3面から改革に取り組みました。(下図参照)
1.新規需要開発プロセスの見える化と拡販
・コンタクトセンター支援の下に営業担当者が中心となり、見込客および企画提案のデータベースを
活用して新規需要を開発する
・営業マネージャーと営業担当者が、新規案件の進捗情報を共有して拡販に結びつける
2.既存顧客の信頼形成マネジメント
・既存需要は、営業担当者、コンタクトセンター、サービス担当者が連携し、既存顧客のデータベースを
活用することで既存需要を開発する
・Web受発注システムの開発と運用を進める
3.コンタクトセンターの組織化と顧客との関係づくり
・既存顧客の長期信頼形成を主目的に、コンタクトセンターを軌道に乗せる
4.サービスの事業化
・診断・保守・修理等のサービス事業化を維新するためのサービスメニューを構築して、
顧客満足と収益還元を実現する
Y社設備機器事業の経営改革は、事業モデルを見直して事業システム改革に取り組んだ例です。 事業モデルの変革は、一人ひとりの仕事に対する考え方や業務のやり方を変えるだけに、人の抵抗に合うこともあります。 Y社でも同様のことが起きましたが、グローバル化や情報化の流れを全員が認識して、事業の転換期を乗り越えることができたのです。
その後、事業成長と収益獲得を実現したこともあり、海外のライバル企業からもY社は注目を集めました。 また、人材力を支援する組織・システムの経営改革事例として、社内外で高い評価を受けました。
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