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Withコロナにおける営業現場の試行錯誤

  • マーケティング・営業

坂田 英之

坂田 英之(チーフ・コンサルタント)

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社会がWithコロナに舵を切っていくなかで営業現場はどう変わっていくのか。Beforeコロナでは、顧客とのコミュニケーションは担当者による面談、展示会やセミナーといった「対面」が主体であった。最近でこそ、さまざまなアプリケーションによる訪問しない営業に光が当てられてきたものの、その進展は全体としては緒に就いたばかりだった。

この状況がコロナ禍という圧倒的な外圧により一変し、現在は「訪問しない営業、対面しない営業」への転換が迫られている。こうした変曲点である今、営業現場はどのようにもがき、試行錯誤しているのか。4社へのインタビューから垣間見えるリアルな姿を探る。

変革の波が押し寄せる営業部門

これまで変革の波が小さかった営業部門に、いよいよ変革の大波が押し寄せてきている。コロナウイルスの影響で、直接対面での営業ができにくくなり、多くの商談がZOOMやMeetなどを活用したオンライン営業に切り替わりつつある。
「なかなか商談が進まない」「これでは営業活動ができない」などの声も聞く。これまで対面で人間関係を構築することを主体とした営業が通じなくなっているのではないだろうか? このような状況の中、営業部門はどのような課題を抱え、どのように変わろうとしているのか? 

私は30年間営業部門の支援を中心としたコンサルティングを行ってきた。思い返すと、30年前に私が目にした営業マニュアルには次のような記載があった。「まず、キーパーソンの行きそうなゴルフ練習場を探せ。そこで待ち、偶然装って会え。そして人間関係をつくれ」と。
当時はこのような営業のことを、GNN(G=義理、N=人情、N=浪花節))と呼んでおり、人間関係の構築を軸に受注を取っていくという営業スタイルが主流であった。
そして、昭和・平成と過ぎる中で多少の変化はあったものの、営業部門の活動の主テーマは、対面で人間関係をいかに効率良く効果的に構築していくかがメインであった。しかし、このように長らく続いた「対面」重視はコロナ禍で通用しなくなったのである。営業現場はこの緊急事態にどのように対処したのか。

JMACでは、緊急事態宣言が解除された直後の6月にさまざまな企業にインタビューを実施、緊急事態宣言解除後の営業実態、これからのWithコロナ下での営業部門の課題についての各社の認識を収集した。その中からいくつかの典型的なインタビュー内容を紹介する。

内装資材卸会社A社

緊急事態宣言中は、商談という意味ではまったくできなかった。私たちの商品は、たとえば壁紙といった実際に目で見て触ってもらって初めて商品を理解してもらえる。したがってオンライン商談に切り替えることが難しかった。また、主たるお客様であるアパレルショップなどがコロナウイルスで多大なる影響を受けており、そもそも商談を行う状況とは思えなかった。それぐらいコロナの影響は大きかったが、それは同業他社も同じであり、重要なことは今後どうしていけばよいかだと考えていた。

(緊急事態宣言解除後の)今後はお客様に受け入れられるか心配ではあるがオンライン営業に切り替えていかざるを得ない。リアル訪問とオンライン営業を融合した形で展開していこうとしている。ネックになるのは、商品紹介だが、非対面でもできるプロモーションのやり方を見つけていきたい。

健康食品メーカーB社

緊急事態宣言中も緊急事態宣言後も、基本的にはオンライン商談中心に切り替えて対応している。オンライン商談については、決してマイナスな面ばかりではない。対面だと、複数のキーパーソンが違うロケーションにいる場合は別々に訪問して商談せざるを得なかった。しかし、オンライン商談ツールを使うことで、同時にコミュニケーションが取れ、商談を進めることができる。また、遠方のお客様に片道3時間かけて会いに行って1時間の商談、そしてまた3時間かけて帰る、ということもあった。オンラインなら移動なしで商談できるのもメリットだ。顧客もわが社もここまで実態を変革してきたこともあり、これを止めてはいけないと考えている。今後ともリアルとオンラインをハイブリットでやっていきたい。

しかし問題もある。具体的には「飛び込み」のような自ら仕掛ける新規開拓ができにくくなったことである。またオンライン商談では、会話を通じて相手の雰囲気が掴みにくいことも難点である。訪問であれば義理もあって質問などしてくれたが、オンラインでは質問が出にくいこともある。そもそも根本的に、世の中がオンライン商談を始めたばかりなので、ツールを使える人そうでない人のバラツキが大きいことも問題ではある

教育ベンダーC社

私のお客様は、本社人事部の方が多いので、緊急事態宣言中もほぼオンラインで商談することができた。とはいっても、新しい案件の話というよりも、進行中の案件の打ち合わせばかりであった。今後はリアルとオンラインを5:5ぐらいの割合でいくのではないか。

やはりオンライン商談はやりにくい。まず、相手がカメラをONにしていても表情が読みにくい。うなずきも少なくなる。とくに、商品を売り込む場面が難しい。リアル商談だと、「ここで事例を紹介しよう!」というタイミングが計れるが、オンラインだとそれがわからない。だからこそ、事前のシナリオをしっかりつくるようにした。30分のオンライン商談でゴールをどこにするか? そして、次のオンライン商談にどうつなげるか? これを練っておかないと商談が進まない。ベテランであれば、ある程度できるが、リアル商談でも経験が少ない方は、さらに商談が難しくなったのではないか。


ここまで3社のインタビューからは以下の3点が浮かび上がってくる

  • リアルな対面営業からオンライン営業に全部ではないにしろ移行せざるを得ない
  • オンライン営業では新規案件を創出する難易度が高まった
  • オンライン営業では相手の反応が読みにくく、求められるスキルが変わってきた

いずれも「変わってきた」「難しい」という率直な認識である。しかし顧客接点を担う主役である営業としては、嘆いてばかりもいられない。われわれは「変革が進まなかった営業部門がついに速く・大胆に変わらざるを得ないときがきた」と考えている。言い古された表現ではあるがまさに「ピンチをチャンスに」であるし「攻撃(変革)は最大の防御」である。

最後にこのような環境のなかで積極的に営業変革を進めている企業のインタビュー内容を紹介しておく。

ITカンパニー会社D社

私たちは、このコロナの状況を変革のチャンスと捉えている。これまで徐々に進めてきたWEB上のバーチャル展示がここにきて注目を集めてきた。確かに売上は減ったが、それでも新規の問い合わせはある。さらに、MA(マーケティング・オートメーション)ツールを導入してきたことも幸いした。バーチャル展示からお客様のWEB上の行動をトラッキングすることで、お客様の購買意欲を把握できた。そこにオンライン営業を仕掛けることで、以前よりもコミュニケーションの質が上がってきたと感じている。
確かに大変な時期ではあるが、これを期にこれまで進めてきた営業部門の変革を一気に浸透させ、進めていきたい。

変曲点を生かし切る営業へ

紹介した企業の取り組みはまさに変曲点を的確に生かし切るための試行錯誤であると言える。変曲点に受け身で対応しているだけでは、乗り切ることはできず、流されてしまう。営業は「変わる顧客」「変わる環境」「変わる競合」と向き合うことがミッションであり、変曲点を捉え、変化を主体的に創出することが求められる。

JMACは今後も営業領域に関わらず、変曲点を生かし切るヒントとしてさまざまな事例や実態を紹介していく。

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