本社の業務改革は「総合格闘技」である!
- JMAC EYES
大谷 羊平
BPR活動の残された対象は本社
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング:業務の抜本的な改革活動)という言葉が一般化してから早いもので20年ほど経っています。われわれが日々お付き合いしているほとんどのクライアント企業においても、今までにBPR活動に取り組んできています。
JMACでは、数年おきにBPR活動の実態調査を行っていますが、その回答結果(下図)を見ても7割程度の企業がBPRに取り組んでいました。それほど一般的になってきているBPR活動ですが、成果が上がっている領域と、成果が上がりにくい領域があるのも事実です。
成果が出にくい領域とは実は「本社」なのです。バリューチェーンに直結する機能領域のBPR活動は順調に進んでいるようですが、本社領域の改革活動が進まない、取り組んだけれど元に戻ってしまったという声をよく聞きます。
昨年度の調査結果を見ても、従来以上に管理間接プロセス、戦略策定プロセスといった本社領域のプロセスが、改革の重点対象であるという意見が増えています。
BPR活動の残された課題は、本社部門の改革活動であると言えます。
本社の改革活動をうまく進めるための3つのポイント
われわれが相談を受けたり支援をしたりしている会社の方々とお話をしていると、本社部門の改革活動を上手に進めていくためには、いくつかのポイントがあることがわかります。ここでは、ポイントを3つに整理してみます。
1つは、「業務改革活動の目指す方向」、2つめは「業務改革活動の進め方」、そして3つめは「新しいアプローチの組み合わせ」です。これらの視点を各社の状況に応じて、上手く適用することで効果的な活動にすることができるはずです。それでは、それぞれのポイントを少し詳しく述べてみたいと思います。
ポイント1:業務改革活動の目指す方向
ある会社から「社内で活動推進をしていたのですが、上手くいきません」と相談を受けました。実際に訪問して話を聞いてみると、「活動の目標・落としどころが不明確」「PDはあるが、CAがない」ということが多くみられます。今回は、この2点に関してコンサルタントとしてアドバイスしておきます。
まずは、活動の目標・落としどころを明確にすべきです。改善・改革の活動を効果的に行うためには、目標を設定することが重要なのは言うまでもありません。本社や間接部門の改革活動でも、各社、工数や人数の目標を設定しています。
ただ、生産現場のようにピッチが決まっていて台当たりや、日当たりの生産実績や標準が明確であるわけではないので、実際にどう効果を見ていくのか? の設定が不明確なままで活動をしているケースがよく見られます。
たとえば工数を30%削減するという目標は、経営目標的にどのくらい必要な目標なのか? また工数が削減された結果がどう経営成果につながるのか? 人数20%削減という目標の根拠となる削減工数目標はどのくらいなのか? などが明確に説明できない状況を放置しておくと、目標や結果に対して確信が持てないままの活動となり、活動途中で頓挫する一因となりがちです。
改善効果が目に見えにくいからこそ、業務工数削減効果をどう把握し、どう評価するのか。工数削減した結果、人員を減らすのか、新規のどんな業務をどの程度増やすのか、などの「落としどころ」をしっかりと明確化することが求められます。
次にPDCAです。PDCAを回すために改善案をつくって実行しているが、本当に効率的になっているのか? という疑問も多く聞きます。これも上記のような業務の特性が邪魔をしているのです。改善案数やその実行率を管理することも重要ですが、残業時間や処理件数、問合わせ件数、イレギュラー業務の発生件数、ミスの発生件数など、業務のやりやすさやテーマの進捗度を測るための指標(部門KPI)を設定し、管理していくことも重要となります。
以上の2点に留意して改革に取り組んでいただきたいですね。
ポイント2:業務改革活動の進め方
「業務改革を推進しているものの、部門別活動に落としたところで止まってしまった」「業務の棚卸しはしたものの、その後どう進めてよいのかわからない」という声も最近よく聞きます。ライン部門の改革活動は進めてきて経験も蓄積されているのですが、本社や間接部門の改革活動のノウハウが薄まってしまっている会社が多いのではないでしょうか? 進め方に関しては、以下の点が重要となります。
まずは「見える化」です。本社の業務は、はたから見るとわかりにくい仕事です。であるからこそ、文殊の知恵を出すためには仕事の見える化が重要となります。業務の見える化を行う場合には、「業務の分担構造」「業務工数(業務量)」「業務フロー」などいくつかの整理の方法があります。どんな目的で分析をしたいのかを明確にして取り組むことが重要です。
次に重要なのが「改善視点」です。見えるようにした仕事をどう料理していくのか、という点が重要になります。対象部門の特性や、対象業務の特性によっても当てはめるべき視点は多少異なりますが、改善の基本視点(後述の8つの視点)などを活用しながら、アイデア出しを進めていくことが有効です。
ポイント3:新しいアプローチの組み合わせ
先のポイントに留意しながら、「仕事そのものの見直し」や「システムの見直し」を推進することも重要ですが、最近はそれに加えてわれわれが「働き方の見直し」もセットにして改革推進を支援しているケースが増えています。まさに本社の改革は「総合格闘技型」で進めるべきでしょうか(笑)。
それはこういうことです。部門単位では主要な仕事を確認して改善を進めつつ、部門内での業務の計画化と相互支援体制づくりを進めています。たとえば、簡単な仕事のマニュアル化を進めたうえで、日々の個々人の予定を見えるようにして、応受援の相談を朝会で実施して、マニュアル化できた仕事を手伝うことで、部門全体の残業時間を減らすような取組みです。
また、会社全体としては会議や資料づくり、メール配信時のグランドルールの作成・浸透を仕掛けたりします。企画を生み出す土壌づくりとしては、創発的なコミュニケーションを増やすオフィスレイアウトなどのハード面の改善、さまさまざまな働き方を選択できるダイバーシティ支援型制度の構築などのソフツ面の改革など、長く・生産的に働ける職場環境づくりの支援もセットで行っています。
以上3つのポイントをベースに、さまざまな会社の本社改革をお手伝いしていきたいと思います。総合格闘技が得意なJMACにぜひお声がけください。
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