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物流2024年問題とは?業界の課題と対策を紹介

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広瀬  卓也

   

物流業界は2024年問題に直面している。

物流業界は2024年問題に直面している。
2024年問題によって、現在物流業界が抱える人手不足、コスト増加、サービスの高度化など複数の課題が浮き彫りになっている。当記事では、これらの課題を詳細に解析し、実効性のある対策を提案する。

物流業界現状への理解と、持続可能な発展への道筋を探る一助としていただきたい。


目次

1. 物流2024年問題とは
 - 時間外労働規制によってどうなるのか
 - なぜ労働基準法は改正されたのか

2. 物流業界の現状と課題
 - 個人需要の高まる物流業界
 - 物流2024年問題が浮き彫りにした、物流業界の課題
  ① 人手不足
  ② サービスの高度化
  ③ 燃料費の高騰
  ④ 多重構造の業界

3. 物流業界が抱える課題に対するソリューション
 - ネットワークの見直し
  ① 拠点新設、中継輸送 
  ② モーダルシフト
 - 配送の効率化
  ① 配送条件の見直し
  ② 共同配送
  ③ 配送ルートの適正化
  ④ サプライチェーンの可視化
 - 荷主先滞留時間の削減
  ① 待ち時間削減・バースの確保
  ② 作業効率化
 - DX化

4.コンサルタントを上手く活用する
 - 外部コンサルに依頼する意義
 - JMACは“ツールありき”ではない、課題解決型

5.事例
  ① 中食業
  ② 住宅建材
  ③ 株式会社シーエックスカーゴ

6.まとめ



1.物流2024年問題とは

物流2024年問題とは、労働基準法の改正によって「時間外労働の上限規制」が運送業務に適用されることから生じる諸問題のことである。具体的には時間外労働時間の上限が960時間/年(80時間/月)と定められている。

労働時間改正

この法改正により運転手の労働時間が制限されることで、労働力不足やサービスの質の低下が懸念されている。

参考:物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン|経済産業省、農林水産省、国土交通省

時間外労働規制によってどうなるのか

時間外労働の規制によって、ドライバーの労働時間が減少する。それにより、「現在の運行ができなくなる」可能性が非常に高い。
長距離輸送の場合、1日に進める距離が短くなる。例として、これまで1日の輸送距離が715kmだったトラックは、520km程度になる。実際にトラックが1日に走行できる距離は400km前後にまで落ちるという観測もある。また配送においても、勤務時間が短くなることにより1日辺りの配送件数が最大25%減少するとみられている。
こうした時間外労働の規制によって現在の運行に影響が起きる運送会社は全体の40%にのぼると想定される。

参考:トラック輸送状況の実態調査結果|国土交通省

労働時間と走行距離

なぜ労働基準法は改正されたのか

そもそもこの改正は、労働時間の短縮や過重労働の防止などを通じて労働者(特にドライバー)の労働環境改善を行なうことが目的である。しかしながら、長時間労働が常態化していた物流業界にとってこの改正は大きな影響を与えており、当の労働者である運送業界からも不安の声が上がっている。

他業界では2019年からこの法律が施行されていたが、物流業界においては激変緩和措置として2024年まで施行が延期されていた。それでもこれだけの問題になっているのが実情である。

2.物流業界の現状と課題

個人需要の高まる物流業界

物流業界の市場は20兆円を超えている。特に2020年のコロナ禍以降はECサイトを中心とした個人需要が急増した。コロナが沈静化しつつある中でも、その生活スタイルは定着し、日用品から食事までをBtoC型の宅配に頼るケースは増えている。

参考:物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)|矢野経済研究所

物流2024年問題が浮き彫りにした、物流業界の課題

もともと、物流業界は様々な課題を抱えていた。むしろ物流2024年問題により、それまで個々の企業などの努力によって抑えられていた諸問題が噴出している、と言う見方が正解であろう。
代表的な課題を紹介する。

①    人手不足

物流業界は全般的に参入障壁が低く、事業者が乱立していた。その結果値引き合戦が繰り広げられ、賃金が上がりづらい状況が続いていた。低賃金に加え長時間労働という悪条件が重なり、離職率が高く、それがまた担い手不足につながるという悪循環となっている。
人手不足により、現在配送業務の遅延やサービス品質の低下が既に起こりつつある。

②    サービスの高度化

物流業務には様々な顧客サービス・付帯作業が存在する。具体的には翌日配送・再配達・納品時の様々な付帯作業などである。法人・個人需要両面において、これらのサービスの需要は相変わらず高い。これらは当然現場の労働者の負担となり、時間外労働が増える大きな要因である。
2024年問題を契機として、これまで利用者が当たり前と考えていたサービスを大幅に見直すことが必須となってきている。

③    燃料費の高騰

ロシアのウクライナ侵攻などを契機として、ここ2年ほどは世界的に燃料費が上がっている。特に日本は燃料の多くを輸入に頼っているため、国際的な燃料費の変動の影響をより受けている。物流業界においても燃料費高騰は最大のコストアップ要因であり、特に多くが中小規模の運送事業者にとっては、経営を圧迫するほどの大きな問題となっている。

④    多重構造の業界

物流業界はその特性上、元請けから下請けを介してサービスを提供する多重構造の業界となっている。
この多重構造は、多様なニーズに対応する柔軟性を持つが、他方で各段階でのコスト加算が問題となる。また、プロセス全体の透明性を低下させ、非効率やコミュニケーションミスを招く要因ともなる。

   

3.物流業界が抱える課題に対するソリューション

物流業界はこれらの課題に、どう向き合えばよいのか。その具体的な対策案をいくつか紹介する。

ネットワークの見直し

物流ネットワーク(拠点や輸配送ルート構造)の最適化は、効率的な物流システムの基盤となる。

①    拠点新設、中継輸送

2024年問題によって輸送可能距離が短くなるため、中継輸送という考えが有効である。よく知られているのはハブ&スポーク方式というものであるが、適切な拠点の新設や、効率的な中継輸送システムの構築により、輸送能力全体の減少を補うことが必要となってきている。

②    モーダルシフト

トラックによる陸上輸送から、鉄道や船舶、航空輸送へのシフトを検討する。もともとはCO2削減などサステナビリティ関連の施策としてモーダルシフトは活用されていたが、トラックに比べ利便性が低いためそこまで需要は高くなかった。
しかし、ここ数年は人手不足の影響で急激に需要が増加している。既に多くの業界が検討しており、早く着手しないと活用が難しくなる。

配送の効率化

配送プロセスを見直すことにより、効率化を実現する。

①    配送条件の見直し

時間指定、受注~出荷までのリードタイム、納品時の付帯作業、手積み手降ろし、小口納品など、物流現場に負担をかける要因の多くは配送条件である。これらを見直し、ドライバーの負担を軽減していかなければならない。
既にトラックの待ち時間や過重な積込積卸などについては、国土交通省が主催するトラックGメンによって各企業への要請や指導がスタートしている。

②    共同配送

多くの業界で共同配送は今や当たり前のこととなりつつある。
複数の荷主が同じ物流ネットワークを活用する共同配送を実施するためには、①で述べた「配送条件見直し」をより徹底して行ない、複数荷主の条件を揃えなければならない。また、受注~配送に至るデータや帳票の一元化も必須である。

③    配送ルートの適正化

配車システムを使って最適なルート探索をするなど、配車・配送ルートの適正化は重要となる。混載や受注〆時間の適正化も同時に図ることで、より効果が見込まれる。昨今はTMS(配送管理システム)を活用することで、人手に頼らないルート構築が一般化しつつある。

④    サプライチェーンの可視化

荷物を送り先に届けるまでの供給プロセス(サプライチェーン)の可視化をすることは、すべての効率化施策の前提といえる。さまざまなDXツールを用いて、配送ルート・車輌効率・待機時間などのロス・ドライバーの負荷などを可視化していくことが望まれる。

荷主先滞留時間の削減

配送プロセスの中でも、意外とその積み重ねで大きくなっていくのが荷主先での滞留時間である。滞留時間の削減は、全体の効率を著しく上げる可能性を秘めている。

①    待ち時間削減・バースの確保

配送先でのバース(荷物の積み下ろし場所)の空きがなく、順番が来るまで待機するというケースがある。バースを車輌到着前にあらかじめ確保しておくことで、待機時間を削減することができる。上記の実現にはバースの予約システムの導入が有効である。
また、待機時間の可視化を行っておくことも有効である

②    作業効率化

作業効率を上げることで、滞留時間の削減を図る。パレットやカゴ台車での納品、トラックバースやパワーゲート車・フォークリフト等のマテハン機器活用、検品の適正化などやるべきことは多岐にわたる。

DX化

ここまで紹介したソリューションは、人力で行えないこともないが、DXを導入することでより多様なソリューションを適用することが可能となる。

4.コンサルタントを上手く活用する

物流業務の課題は、様々な企業や部門の利害が複雑に絡み合った結果であり、現場任せでは問題解決を進められないことが多い。これらに対応するためには、専門知識を持つコンサルタントの助けを求めることも一つの手段である。

外部コンサルタントに依頼する意義

自社内だけで改善を進めようとしても、限界があることが多い。俯瞰的な視点を得るために外部コンサルタントの意見は有効である。外部の専門家は、業界全体のトレンドや様々な企業の事例(成功・失敗を含む)を基に、客観的かつ幅広い視野で問題を分析し、実行可能な解決策を提供する。

JMACは“ツールありき”ではない、課題解決型

物流問題のソリューション提供というと、一般的には自社のサービスやツールありきのアプローチをとることが多い。その点でJMACは一線を画している。

JMACのコンサルティングは、基本は顧客伴走型である。まず現状を徹底的に把握し、根本的な問題を明確に特定することから始まる。その上で施策を立案し、最適なツールや仕組みを選定する。
物流改革のような構造的な問題に対処する際、往々にして内部では変革に消極的になってしまうことがある。JMACは担当者に寄り添い、粘り強く支援を続け、マインドの変革を促し、持続可能な改善を目指す。また、意思決定を行なうトップマネジメント層に直接働きかけることが出来るのも、外部コンサルタントの長所である。

JMACの特徴は、単に計算やツールの提供にとどまらず、考え方そのものを変えることをゴールとしている点にあるといえる。行動に結びつくことがなければ、いかなる提案も意味を成さないという考えの下、実行可能な解決策を提供している。

    

5.事例

JMACが支援した事例の一部を紹介する。

中食業

【問題・課題】

ミールキットを製造し、店舗から直接顧客への配送を行なっていたが、時間帯別の受注件数がバラバラであり、効率が上がらず車輌が増える原因となっていた。

【実施事項】

・各店舗から個別に配送するのではなく、集約物流センターからの配送に切り替えた
・需要が集中する10時・16時帯は受注キャップ(上限)を設け、他の時間帯への受注を促した。昼間の件数の少ない時間帯は値引きを行なう「ダイナミックプライシング」も実施した
・2時間ごとに区切っていた配車のバッチを12時間単位に変更し、より柔軟な運用を可能とした

【改善効果】

配送台数20%削減

住宅建材

【問題・課題】

倉庫での待機・積込の時間が長く、運送会社より改善要求が出ていた。

【実施事項】

現状分析の結果、午前11時までに待ち時間のピークが来ることが判明した。これを受けて
・到着時間が集中しないよう、バース予約システムを導入した。
・ドライバーが積込場所を探す行為が多発していたため、ビーコンを用いた位置情報把握を行なった。
・ユニットロード化の徹底や積込順番の変更など、個別改善を徹底した

【改善効果】

待機時間が平均1時間だったところを20分に縮小。

株式会社シーエックスカーゴ

通販物流での改善事例。センターでの人員が過剰に必要となり大幅な赤字となっていたが、徹底した現状分析~作業改善・標準化・要員適正化などの仕組み導入を進め、活動開始から半年で赤字をほぼ解消できた。

    

6.まとめ

物流2024年問題とは、労働基準法の改正による物流業界の労働時間制限に伴う諸問題のことである。これをきっかけにして、元々業界にあった多くの課題が顕在化されつつある。

人手不足、サービスの高度化、燃料費の高騰、多重構造による業務の複雑化など課題は様々で、複雑に絡み合っている。これらに対処するための手段として、外部コンサルタントの活用は、新たな視点をもたらし、固定化した問題への取り組み方を変えるきっかけとなりうる。

2024年問題は、同時に新たな事業機会を創出するための契機でもあるといえる。持続可能な発展を目指し、物流業界がこれからも社会の重要な柱として機能し続けるために、革新的な取り組みと絶え間ない努力が必要不可欠である。

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