連載のはじめに
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
マーケティングについて
「マーケティングとは買われる仕掛け作りである」ということは、多くのビジネスマンが理解しておられることと思います。しかし、「マーケティングは分析から始まる」こと、および「マーケティング戦略を実現するのは営業である」ことへの理解は充分に浸透していないように思われます。この連載では、個々の手法の考え方や事例については勿論ですが、この2つの事柄の重要性もご理解頂ければ、と考えています。
まず、第1点目の「マーケティングは分析から始まる」ですが、マーケティングあるいはマーケティング戦略は極めて分析的な事象です。
マーケティング戦略は大局を押さえることなのだから、分析のような細かいことは枝葉末節の問題であると思い違いをして、分析をおろそかにしているケースを多々目にします。勿論、すぐれた事業家の勘やひらめきによって素晴らしい戦略が生み出されることもありますが、その場合でも、その事業家の頭の中では分析がなされていると考えるべきではないでしょうか。
また、マーケティングというと、広告や販売促進あるいは商品デザインやパッケージングのように、アイディアやセンスを必要とするものであり、分析とは遠い存在のものと考えている人も多いようです。たしかに、これらは、特に消費財のマーケティングにおいては重要な地位を占めますが、マーケティングの一部の局面に過ぎません。
いずれにしろ、「買われる仕掛けを作る」には、混沌とした現状の本質を捉え、その本質に即した手を打たなければなりませんが、この本質は分析をしなければ見えてきません。分析とは、ドンブリで考えていては見えてこない事柄を、細かく分けて考えることによって可視化することです。
当連載では、この分析ということが、的確なマーケティングにどのように結びついていくかをできるかぎり紹介していきたいと考えています。
第2点目は、「マーケティング戦略を実現するのは営業である」ことです。これは、営業活動は単なる物売りではなく、マーケティング戦略の実現の手段でもあり、営業活動を通してのみ実現されるマーケティング戦略も少なくないということです。たとえば、「A商品は店内占有率を上げ、B商品はストアカバレージを上げよう」といったマーケティング戦略は営業マンの活動がその方向に向けられなければ実現できません。
つまり、マーケティング戦略は、営業マンの活動の指針にまでブレイクダウンされていなければ、成果が出ない場合が少なくないのです。
このことは、考えてみれば当たり前のことですが、それができておらず、マーケティングはマーケティング、営業は営業と、それぞれが別物であるかのように扱われることが多いのが実態です。
何故こうなってしまうのか。それは、頭では判っていても、それを実現する良い方法や方針を徹底させるコツを知らないからです。つまり、「戦略を行動化する」方法が判らないということです。当連載では、この「戦略の行動化」の方法論にもページを割いていきます。
(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)
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