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第21回 マーケティングの個別戦略を考える(2)~4P製品戦略の課題と対処策~

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

前回は、マーケティングの4P戦略の基本的な考え方についてお話しました。
今回から、個々の4P戦略について考えてみたいと思います。まず、Product:製品戦略です。

製品戦略の考え方とは

【製品戦略の狙いを絞る】
製品戦略の狙いとは、ターゲット顧客の市場ニーズを適切に分析し、ニーズに適した製品を企画することです。製品は、その価値の基本となるコンセプト、サイズ、形、色といったパッケージハード、価値を分かりやすく伝えるネーミングなどから構成されます。

【プロダクトミックス(製品構成)をどうするか】
製品戦略を考える際、まず確認すべきことは現在の製品構成にどういう特性があり、それを将来どのように持っていくかということです。これをプロダクトミックスといいます。

 ・製品毎の成長性や、収益性、競争力がどうなっているのか
 ・全体としてバランスが取れているのか
 ・品揃えの奥行きと幅が競合と比較して優位に立っているか
 ・製品毎のライフサイクル(成長期、成熟期等々の製品)がどうなっているか

などを確認した上で、将来像を描き、必要な製品(領域)企画を行います。
(下図参照)

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【製品企画の方向は】
製品企画に当たっては、以下の点を明確にすることが重要です。

 ・強化すべき機能は何か
 ・提供するベネフィット(開発ポイント)は何か
 ・品質レベルはどうするか(耐久性、デザイン、使いやすさなど)
 ・コストはどれくらいに押さえるか(粗利を○○%確保するための原価設計)
 ・(市場創造/顧客拡大/顧客定着化・・・)何を狙うのか

【製品企画開発のネックプロセスはどこか!?】
消費財企業を例に製品戦略における課題を考えてみましょう。
A社は、トイレタリーカテゴリーでトップシェア製品を有しながら年々売上が下降傾向にありました。既存品のリニューアルや他カテゴリーで新製品導入を図り、製品の改良・開発で業績回復にも取組んでいました。
しかし、競合が激しく消費者ニーズが多様化している環境下では、新製品を市場導入しても業績が伸びず、製品を軸とした検討プロセスに課題があるのではないかと、下記2つの側面から製品企画のネックとなっているプロセスを検討することにしました。

 1.仕事の掘り下げ方に弱点があるプロセスは?
 2.関係部門間の連携に弱点があるプロセスは?

その中で、特に商品企画段階において多くの課題があることが分かりました。具体的には

■市場情報が共有されないなど関連部署間でのキャッチボールがうまくできていない。そのため、顧客が何を望んでいるのかというきめ細かな探索が不足し、各部署が持っている限定情報で開発プロセス業務を進め、結果として自分達の作りたいものを作っているだけで、消費者を向いた商品開発ができていない。

■商品化計画初期に関連部署のすり会わせが不足しているため、製品コンセプトや原価目標が決まらず、技術・生産面では、設計品質や設計コストの正確な検討ができず実現性や精度の低い開発目標となり、結果的に無駄な開発が多くなっている。
一方、マーケティング側面では市場競争力を踏まえた柔軟な価格設定ができない。
■商品企画段階での(商品化や市場導入可否について)ゴー&ストップ基準がなく誰がどのタイミングで判断するのかが曖昧になっている。
・・・機能施策、サンプル施策などの評価法や判断基準が不明確になっている。
・・・売上・利益などの数値予測が曖昧な計画になっている。

■(金型発注した後での企画の見直しなど)企画開発の諸プロセスにおける方向づけが遅すぎる。

以上のような課題は、他の企業でもみられます。

製品企画段階から具体的なモノづくりまで色々な段階で費用が発生しますが、商品企画段階における費用が製品原価に大きく影響を与えます。言いかえれば、製品企画段階における検討が重要ということです。
この点がうまくできていない企業が意外と多いのではないでしょうか。

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市場導入商品の成功確率向上を狙うには、開発プロセスのロス低減や無駄な工数の発生防止に着目した取組みが求められます。

【市場定着商品づくりに向けたあるべきプロセス】
事例のA社では、技術(開発)/製造サイドと(商品)企画/営業サイドが一体となり、下図のような製品戦略を軸とした検討プロセスの確立を目指しました。
この図をご覧いただいてお分かりのように、実のある製品戦略を検討するには、接点チャネルやプロモーションなど他の4P戦略視点を連動させることが不可欠です。特に、商品企画段階における検討が重要となります。

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次回テーマは、「4Pの価格戦略について」お話しします。

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