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第23回 マーケティングの個別戦略を考える(4)~4P価格戦略の課題と対処策(2)~

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

価格の決まる源泉は何か?

前回、いくつかのケースを見てきましたが、価格が決まるには様々な要素がからんでいます。
伝統的な売り手の発想で原価に利益を乗せて価格設定するやり方や、先発企業がいくら位で設定しているから、当社は、1割くらい下げて売ろう、そのため原価をいくら下げよう・・・といったビジネスモデルは崩壊してきています。

>先行しているビジネスであれば、価格設定は自由にできますが、そういうビジネスは少なく、すぐ競合に追いつかれてしまいます。価格を一度設定したからといって固定概念に縛られることなく、市場・環境の変化を見極めて柔軟に見直しをしていく必要があります。(下図参照)

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Appleのi-podは、技術的に追いつかれても、顧客の囲い込みができるようにi-tunesという仕組み・ルールをつくりました。

家電や自動車の場合、多くの顧客は、購入後の使用場面における安全面のリスクが大きいので安心感を重視し、製品ハード+使用後の故障有無、アフターサービスも含めて、価格を評価しています。例えば、液晶テレビの国内トップ企業であるシャープは、国内生産を間接的に表現した「亀山ブランド」により、顧客に安心感を与えて、価格の安定維持が図られています。

 ■事業のKFSは何か。
 ■ターゲットとする顧客が重視しているKBF (Key Buying Facter : 購買主要因)は何か。
 ■自社製品の訴求すべき価値はなにか。
 ■その対価として価格はどうあるべきか。

これらのことを検討してはじめて、価格の妥当性が生まれるのではないでしょうか。
プライスバリュー(価格価値)を上げるための価値が何かをまず知ることから始めましょう。
特に、一般消費財の場合は、消費者一人ひとり、とらえ方次第で価値の見え方は千差万別です。価格戦略個別でなく 4P 全体最適を考え、いかに価値を尖らせて「見える」ようにし、明確に伝えることが重要です。伝え方もその価値に合った方法を演出することが重要です。

何が自社製品(サービス)の価値か(=競争優位性は何か)をしっかり見定めた価格デザインが必要です。改めて、自社製品の価値が何かを徹底的に掘り下げ、それに見合う価格設定をすることへのこだわりが重要ではないでしょうか。

収益モデルをどう構築するか?

売り手発想を脱却して、市場価格を設定しようとすると、原価率が高く利益が出ずビジネスとして成り立ちません。適正な利益が取れる収益モデルをどう構築するかも価格戦略上の大きな課題です。

製品戦略のところでお話ししましたが、多くの製品(サービス)を検証すると、製品開発プロセス(商品企画→基本設計→工程設計→試験評価→量産製造)の各段階で様々な費用が発生しています。特に、商品企画段階での費用が大きいのが実態です。(第21回参照

価格戦略を考える時に、各段階のコストの分解と見極めを重視し、どこで利益をとるのか、収益モデルをどう構築するのか検証することが重要です。
 ■製品・サービスそのもので利益を取るのか? 
 ■購買プロセス・利用プロセスで利益を取るのか?
 ■オプションで利益を取るのか?
などです。

例えば、ビジネス向けのプリンターやコピー機器は、本体のそのものは赤字であったとしても、用紙類の販売やトナー交換やメンテナンスで利益を確保しています。
リゾートホテルは、買い換え促進による手数料収入で収益を上げています。

インターネットを活用してビジネスの拡大を遂げている格安宿泊予約サイト「トクー」は、旅館側からは一切手数料費用をもらわず、空き室広告の掲載を行い、宿泊者には、会費をもらうことで、単なる値引きだけでなく当日予約でキャッシュバックまでするというビジネスモデルを構築しました。
始めて利用する体験顧客を増やすことで、価値を知ってもらい口コミで広まることを期待しているのです。価格戦略をプロモーション戦略と連動させて実施している例でしょう。

他のビジネスにおいてもビジネスプロセス全体で収益評価をするという考え方が必要だと考えます。

次回テーマは、「 4P の接点チャネル戦略について 」をお話しします。

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