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第25回 マーケティングの個別戦略を考える(6)4P接点チャネル戦略の課題と対処策(2)

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

市場情報の分析が必要

市場がどうなっているのかを掴まずに、接点チャネル戦略を検討するまずさは前回述べました。

常に、市場や顧客の何が変わってきているのか=市場の実態を継続的に掴むことが大事です。
潜在顧客・顕在顧客・見込み顧客・成約客・買い替え候補客・買い替え客・紹介客はどうなっているのかなどのデータを取っておかないと、有効なタイミングでどのチャネルを使ったらよいのか検討できません。

高度成長期の時代では、ワン・パターンのチャネル対応が主流でしたが、技術やITの進歩により、様々なチャネルが発生し選択肢が増え便利になっている一方で、どの接点チャネルを選べばよいのか分からなくなり売り手も買い手も振り回されてしまいがちです。
だからこそ、明確な情報をもって、しっかりとした戦略・軸を固めることが大事なのです。つまり、接点チャネルをつくる前提として、ターゲット層の見極めとセグメントがますます重要になっているのです。

例えば、買い替え促進を考えた場合、買い替え候補客がどのくらいいるのか、見込み客はどのくらいいるのかを把握しておかないと、有効な接点チャネルを検討できません。
コピー機の場合で考えてみましょう。
何台売ったので、買い替え候補客は何人位いる、顧客毎に初回導入後、何年くらい経っているか?といった情報を把握しておかないと、どのチャネルをどう活用するべきなのか検討できません。サービスマン、営業担当者、あるいは文書を通じ訴求するのがよいのか?ネットを活用するのかなどです。

接点チャネルを変える必要があるのはどんな時か?

自社ビジネスを取り巻く市場が大きく変わり以下のような兆しが見えた時は、そこを打破するための視点として、接点チャネルの見直しをする必要があります。

■売上が下降傾向にあり、市場の伸びも止まり踊り場にさしかかってきている。
いままでやってきた既存チャネルを継続した顧客との付き合い方ではダメになる可能性が高い場合
■新規事業ビジネスの場合。既存商品(サービス)とおなじ提供の仕方では浸透確立が低い場合。

では、どのようなプロセスで検討すればよいのでしょうか。
一つの検証例として「なぜ生命保険の契約量が下がってきているのか?」という課題を取り上げてみましょう。
仮説を立ててみます。

 1.日本全体が高齢化社会に入った
 2.自分が死亡したときのリスクが大きい人が入っていたが、60歳過ぎの団塊世代には、あまり関係ない。
  死亡給付金をもらっても嬉しくない。むしろ、医療給付金のほうを重視。病気・怪我を治すほうを重視
  してきている。
 3.死亡給付型保険から医療給付型保険に切り替えていく必要がある。
 4.主なターゲットを高齢者とした場合、高齢者との接点をつくるにはどうすればよいのか。
 5.高齢者はクチコミを重視。
 6.クチコミチャネルの確立を目指す。(地域コミュニティの活用など)。

自社だけでチャネルを構築するのか?

競争が激しくなり、顧客ニーズも多様化し、早い変化スピードにタイムリーに対応していくには、自社内だけでなく、他社・他業界とのコラボレーションを通じ最適チャネルを構築することも必要です。
外部パートナーとの提携の前提は、パートナーとwin-winになる関係づくりができるかどうかです。
win-winといっても、企業によってそれぞれの目的が違っていてもいいのです。例えば、一方は認知促進が目的、一方は購買促進が目的などです。

例えば、具体的なケースをモデルに解釈してみましょう。食品スーパーの入り口前の広場で休日に自動車ディーラーが乗用車を展示し、来店客にPRを行ったり、ガソリンスタンドにCVSを併設したりするケースがよく見られます。食品スーパーやガソリンスタンドには、他の商品の購入目的で来店したのですが、そこに車の展示があり、CVSがあることで、『ついで購入や認知』といった新たな価値を生み出し、新たな顧客との接点機会を作っているのです。
このようなケースは、他でも見られます。前回取り上げたリゾートホテルビジネスでは、ロイヤルカスタマー維持のための接点チャネルとして一流ホテルでのディナー招待や歌舞伎招待などを企画しています。
受け手の一流ホテルや歌舞伎側からみると新たな顧客づくりのための認知チャネルとして機能しているのです。

今や、自前の資源だけで他社に勝つマーケティング戦略を描くことは難しくなっています。その打開策の一つとして他社との連携による接点チャネルづくりは有効な方法です。

企業同士の連携を更に推し進めていくとターゲット顧客自身との直接接点機会を増やすことによりビジネスのあり方のヒントをもらうことにつながります。
多くの消費財企業では、女子高生など仮想ターゲット顧客を集めて日頃の生活や製品に関することについて意見交換の場を設け、そこから得られた情報を商品開発につなげるような取り組みがなされています。
このような場は、単に顧客情報をもらうだけでなく、接点をもった顧客自身に自社製品やサービスを認知させて、同世代に拡げていくことにもつながっているのです。

軽自動車のトップ企業であるスズキは、MRワゴンの開発に際し、ターゲット顧客の主婦層と接点を持ち、車利用に関する声を徹底的に聴き、それを商品づくり・価格設定・あるべきプロモーションを考えていくことにつなげています。

ターゲット顧客との接点・対話を通じた4Pの見直し

以上、接点チャネル戦略は、単に、製品やサービスを顧客に売り込んでいくルートではないのです。顧客と双方向のコミュニケーションをとり、そこから他の戦略(Product、Price、Promotion)と併せて最適な方向づけをしていくためのものなのです。

次回テーマは、「 4Pのプロモーションについて 」をお話しします。

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