第32回 生産財のマーケティング戦略パターンその1
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
前回は、生産財企業のマーケティング戦略を、顧客特性に違いにより4つのパターンに分けて考えることを提案しました。
今回から、パターン毎のマーケティング戦略の特徴を検証してみたいと思います。まずは、市場管理型生産財 です。
市場管理型生産財企業のマーケティングの特徴
市場管理型生産財は、食品原料や消耗品など単価は安く、顧客が繰り返し購入をする財であることから、個人・法人の違いはありますが、消費財マーケティングに近い特徴を持っています。(下図参照)
この財は、顧客ユーザーの完成品の価値・機能に直接的に影響を与えるものではありませんが、製造コスト、特に作業工数の効率性に与える影響は少なくありません。
例えば、外食産業向けの食品素材は、調理作業工数の削減に寄与するウェイトが高いので、製品の採用基準は、 コスト/パフォーマンス、入手のしやすさ、作業性などが重要な要素となります。
また、対象市場が多岐にわたり、顧客規模も大小さまざまです。大手顧客は、製品採用基準が年々厳しくなっていることから、メーカー直販体制で臨み、中小顧客は、代理店経由の販売体制をとっているところが多いようです。製品の販売特性として、顧客(代理店、大手ユーザーと中小ユーザー)との接触頻度が多いため、単に、製品の機能評価よりも製品を購買することにより付随する顧客利益への貢献が重要な役割を占めます。
大手ユーザーへの利益貢献は、例えば、外食チェーンに対する低原価のメニュー開発支援などがあげられ、代理店を顧客とする場合は、代理店セールスへの販売強化指導などがあげられます。
市場細分化によるターゲット戦略の仕組み確立が重要
戦略展開
ユーザーを軸とした市場細分化による攻略ターゲットの選定と拡販余地分析による戦略立案が重要です(拡販余地とは、自社の売上拡大余地)。
市場細分化の狙いは、市場を区分することにより競争状態を把握し、競争に勝つため限られた資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の有効配分と有効な打ち手を考えることです。 市場細分化の視点として、一般的な項目をあげると商品、用途、業種、エリア、企業規模などが想定されます。拡販余地分析は、市場細分化による層別を行った後で行います。(下図参照)
下図の拡販余地②(獲得可能売上高)は、セグメントにおける自社の資源投入度、競合との力関係などを分析した上で設定します。
また、このタイプのユーザー数は、他の生産財に比べ極めて多いので中小ユーザーの拡販促進には、エリア・マーケティング手法の導入が有効です。
セグメント別の地区別対応方針の設定
ユーザーを地区毎の集合体として(商圏の市場規模、成長性と自社の競争力から)評価し、対応基本方針を設定します。これは、中小ユーザーを個々の点でなく地区という面でとらえ、優先順位づけを行うことを意味します。
このタイプの財は、全般的にプル型販売であり、拠点または営業マンの配置が地域の優劣を確定する傾向にあります。そのため、各商圏に対し、どの程度の資源投入が適正かの検討から始めること重要です。これを行動基準としたものが地区別基本方針です。(下図参照)
有力代理店とメーカーとの連携強化
卸売業はカバーエリア内の顧客対応力をつけることでエリアにおける自社評価を上げ、有力メーカーとの取引を優位に進められる力量をつけます。
メーカーは、市場カバー力が十分あるかの点から代理店(卸売業)の評価を行い、選抜代理店とパートナーシップをとった戦略展開を図ります。
商品戦略
セグメントのターゲットに対しては、商品開発、生産、販売の各戦略を一元化し、資源の重点化を図ることがこのタイプの戦略展開では特に重要です。
対象ユーザーが多岐にわたることから、ユーザー個別ニーズへの対応と称して特注対応型の商品開発により、結果として管理困難な程に品種数が増し、経営指標が悪化するケースが多いのです。
そのため、新製品を出すよりも製品の整理・整頓を優先的に行う必要があります。
例えば、食品素材を扱う某社では、品種数を50%削減しても、売上の10%にも及ばず利益は大幅に増えるという結果がでました。
現在の商品構成の中身を分類すると、ある領域に集中しているケースがあります。それが、戦略的な対応結果であればよいのですが、ほとんどの場合、特定企業との商談プロセスからそのようになったケースが多いようです。正しい商品理解により、標準品で対応できるようユーザーへの働きかけを行うことでかなりの統廃合が可能です。
生産設備上の特性、特に段取り時間比率や開発面の制約などから自社の多品種あるいは特注品対応力を評価することも重要な施策です。
・品種別利益貢献度
・市場地位から見た戦略定石
・開発パワーの制約や生産設備面から見た対応力
などのアプローチにより品種の見直しを進めることにより競争力強化される可能性があるのです。
次回は、「案件管理型生産財企業のマーケティング戦略」についてお話しします。
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