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第36回 「ハイ・マーケティング革新型企業を考える」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

企業の目的は、顧客を獲得して維持することです。マーケティングとは、この「顧客を獲得して維持する」という企業目的のために、企業活動の全ての機能を統合することであり、単に企業の一機能ではありません。
益々厳しさを増す競争環境の中で、企業が顧客の変化し続けるニーズや価値観をうまく組みあげられる組織体をどう作り上げるかの重要性が改めて問われています。

D.K.クリフォードとR.E.キャバナーは、「ウィニング・パフォーマンス(勝利企業の条件)」の中で、企業が勝利をおさめる重要な要素は、どのような「方法」で競争したかを掘り下げることであり、勝利企業になるためには、第一に「革新」を武器にすべきと述べています。

たとえば、新製品開発とその売上向上を達成し、製品構成を革新した勝利企業は、売上の25%以上が「5年前には存在しなかった製品」で占められています。さらに、「既存事業の拡大を目指し、事業展開のやり方を革新していくこと」の方が、単なる「新製品などに基づく革新」よりも長続きすることも指摘しています。 当然のことですが、企業活動はボランティア活動ではなく永続的に発展していく必要があります。そう考えると、伸びていく顧客(市場)を捉え、継続的な関係を構築することが重要です。

また、「競争優位を確保していくための革新は、競合企業と比較していかに優位に立つか」という点からマーケティングのあり方を考えることが重要です。

マーケティング視点で企業革新の方向性を定義づけると、

 ●伸びる顧客(のニーズ)を探し出し
 ●伸びる顧客(の満足)を創造して
 ●魅きつけて、逃さない

マーケティング体質をいかにつくりあげるかです。一言でいえば"伸びる顧客との密着化"をいかに徹底するかです。

日本能率協会コンサルティング(JMAC)では、永年のコンサルティング・ノウハウをベースとして、クライアントとの共同実証研究を通じ、先進的な企業革新のあり方を探っています。

今回は、この研究の一環として、「ハイ・マーケティング革新企業」と呼ぶ先進的なマーケティング革新企業の特徴を紹介したいと思います。

この研究では、マーケティング革新企業を2つの視点から評価測定します。

① 革新水準を図る定量的な評価指標(「ビジネス・スクリーン」と名付けています)
② マーケティング革新の原動力となる仕組みや状態がどう整備・運用されているかを示す定性的評価(「ドライビング・パワー」と名付けています)

「ビジネス・スクリーン」は、売上高全体に占める新製品売上高の構成比(新製品とは、過去3年間に発売された製品)と、売上高全体に占めるシェアNo.1製品売上高構成比(シェアNo.1とは、相対的シェア1位以上の製品)2つの指標を取り上げ、下図のようなマトリックスを用いて「相対的優位性」が判断できるように分析をします。何%を「ハイ(High)」とするかなどは実証研究を重ね決定します。
このビジネス・スクリーンの考え方には、新製品売上構成比、No.1シェア製品いずれかが多いだけでは「ハイ・マーケティング革新型企業」とはいえないと厳しい評価眼を取り入れています。
狙いは、"伸びる顧客との密着化"に繋げるための取組み着眼として役立てることです。(下図参照)

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マーケティング革新水準を評価するもう一つの「ドライビング・パワー」について、触れておきましょう。

望ましいビジネス・スクリーン指標を達成するため、何が原動力となるのでしょうか。実証研究を通じ、JMACでは、企業のマーケティング革新の原動力つまりドライビング・パワーとして5つの力をあげています。(下図参照)

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この5つのドライビング・パワーが相互に連動しあい、"伸びる顧客との密着化"へ向かって競争企業より優位な水準を確保することにつながらないと意味をなしません。
JMACの実証研究企業に5つのドライビング・パワーの革新度の自己評価をしてもらった結果、どのドライビング・パワーとも革新度評価は低くなりました。(下図参照)

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多くの企業で、まだマーケティング革新が確立していないということかもしれません。マーケティング革新に向けた第一歩として現在のドライビング・パワー水準を把握することが必要です。

5つのドライビング・パワー個々の革新水準を2段階に分けて評価することで可能になると考えています。

一つは、どのようなマネジメント上の仕組みが導入活用されているかであり、これを「マネジメント・トリガー」と呼びます。
さらに、この「マネジメント・トリガー」が有効水準にあるかどうかは、現実にどのような運用ルールが適用されているかによって決まる関係にあります。この内容を規制する日常の運用ルールを「マネジメント・リクワイアメント」と呼びます。

次回は、この「マネジメント・トリガー」と「マネジメント・リクワイアメント」の具体的内容について紹介します。

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