第40回 「ハイ・マーケティング革新型企業を考える ドライビング・パワー④プログラム力」
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
今回は、マーケティング先進企業(ハイ・マーケティング革新型企業)の定性的評価指標のプログラム力を取り上げます。プログラム力評価の基本コンセプトは、「ハイ・マーケティングの戦略方針が明確化されているか 」です。
JMACでは、企業におけるコンサルティング経験を踏まえた実証研究を通じ、企業のプログラム力を構成する機能として、『顧客定義』『環境変化対応方針』『顧客対応方針』『戦略展開方針』4つのマネジメントの仕組みがどの程度確立できているかが重要と考えます(マネジメント・トリガー)。(下図参照)
それでは、プログラム力のマネジメント・トリガー毎の評価内容(マネジメント・リクワイアメント)を解説しましょう。まず、『顧客定義』です。(下図参照)
マーケティング戦略を立てる上で、まずやらなければならないことは、自社ビジネスの顧客を定義することです。後ほどお話しします自社の提供する価値(製品やサービスではありません)を誰に買ってもらいたいのかということです。
日頃、商品やサービスの売り買いの商談をしている取引先なのか、その先にいる生活者やユーザーなのかということです。
また、現在対象としている顧客が、将来も同じなのか、変えるべきなのかなどについてどの程度明確になっているかです。現在及び将来の顧客を決めるためには、顧客候補となる層の顕在化したニーズだけでなく、潜在化しているニーズを把握し、それを定期的、組織的なレベルに組み立てておく必要があります。
常に、自社のビジネス顧客の変化をとらえ、将来の顧客像を明確にすることが優位なマーケティング戦略につながるのです。
2つ目は、『環境変化対応方針』です。(下図参照)
種々雑多な環境変化が自社ビジネスを取り巻く環境で起こりますが、その変化にアンテナを立て、取捨選択を行いながら的確に対応していくことです。しかし、日々目の前の競争に多くのエネルギーを注がなければならない状況が続くと、目先の対応に追われ、大きな変化に目が行きとどかないケースが多いのです。
業界動向や直接競合している企業の動きに素早い対応をすることも大事ですが、顧客の購買行動の小さな変化や、マクロな変化に意図的に着目することが必要です。顧客の変化に気づくため、顧客の先に目を配るのです。消費財であれば、商品を購入する人でなく商品を使用する人に着目します。生産財企業であれば、顧客の顧客に着目することで、変化の兆しを掴むきっかけができるでしょう。
また、一見自社ビジネスに影響がないマクロな変化であっても、強制的に自社ビジネスへのつながりを考えることにより、変化への対応力が養われるのです。このような環境変化への感受性を組織的に持つことが大変重要となります。
特定部門のスタッフだけでなく、全社的に環境変化に敏感になる風土をどう作っていくかが大事です。常に、市場や、世の中の変化に関わる習慣をつけることにより閉鎖的なマーケティングから脱却できるのです。
3つ目は、『顧客対応方針』です。(下図参照)
顧客定義を明確にすると同時に、顧客にどう対応していくかを明確にすることが大事です。顧客対応で明確にしなければならないことは、顧客にどういう価値を提供するのかということです。
あなたの会社では、現在までの顧客対応を踏まえ、顧客の反応を確認していますか。製品だけでなく、営業担当者による取引先との商談、物流、日々のコールセンターなど自社と顧客とのあらゆる接点を通じ、顧客の真の評価を確認していますか。
単なるアンケートにより確認した声は、表面的な評価であり、真の評価とは言い切れません。顧客は、自社のどこに価値を見いだしているのかを掴むための手が打てているでしょうか。既存顧客の真の評価を確認するとともに、将来顧客になってもらいたい顧客の声を確認することにより自社が今後、強化開発すべき価値を明確にすることです。
自社が提供する価値を顧客がどう評価するかは、競合製品やサービスとの比較により決まります。いくら、自己評価が高くても、競合との比較により価値評価は決まるのです。今は満足している顧客も、自社の提供価値を上回る価値を持つ製品やサービスを競合がだすと、自社の価値評価は下がります。
常に、他社の提供価値との相対比較で、顧客に満足を与えられる価値水準を目指すことです。できれば、顧客に感動を与えられるような価値を目指したいものです。
最後に『戦略展開方針』です。(下図参照)
顧客定義を明確にし、環境変化対応方針や顧客対応方針が明確になりました。次は、それをどのように展開していくかを明確にすることです。目指すべき目標を明らかにし、達成に向けた道筋を描くことです。どういうステップと時間軸で目標達成するのかが見えるようになっているかがポイントになります。
しかし、ビジネスを取り巻く環境変化が激しい時代において、道筋を細かく描くことがその後の展開の足枷になる可能性があります。このような状況化では、戦略展開方針を、柔軟に軌道修正を図ることができる内容にしておくことが重要です。
戦略は実践に移さなければ絵に描いた餅です。そのため、戦略展開方針づくりの段階から、全社横断的に各部署が連携して関わっていく体制づくりが求められます。
当然のことながら、立場の違いから反対意見を戦わせ、なかなか合意に至らない場面が多くなるでしょう。しかし、それを恐れていては、真の戦略展開方針は固まりません。意見を戦わせる過程を通じ、お互いのやるべきことが集約されてくるのです。
短期間で纏めることに固執せず、議論と実践の組み合わせ戦略を練り上げていくことです。
あなたの企業(ビジネス)のプログラム力を診断してみてください。
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