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第53回 「これからの営業を考える(1) ~復興期に求められる営業とは~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

旧来型と異なる復興期のビジネスモデル

全ての企業が、継続的で安定的な成長を目指し、市場環境の変化に対応しながら、いかに自社の競争力を高めるかという課題に取り組んでいます。

日本国内マーケットは、バブル崩壊後20年以上、多くの市場で需要が供給を上回る超成熟期とも言える時期が続いていました。しかし、3・11ショック後、マーケット環境は、一変しました。短期的にみれば、多方面で市場が縮小することが想定されます。しかし、10年単位の期間で見ると、インフラ整備を軸とした公共投資など新しい市場環境の到来が想定されます。1950年から1970年代の戦後復興期~成長期に似た環境となる可能性もあります。

成長期におけるビジネスの特徴は、供給不足を解消するモノを作れば売れる市場があることです。 そこでは、自社の商品やサービスを認知してもらうことができれば、顧客に受け入れられることが可能です。 供給側の企業は、いかに早く顧客と接点を持つかにより、売上や利益の大小が決まるとも言えます。

それでは、企業は、スピーディに復興特需とも言える需要をキャッチアップし、モノやサービスを供給する成長期のビジネスモデルを繰り返せばよいのでしょうか。市場環境の劇的な変化に対応して、継続的で安定的な成長体質を確立するには、新たな視点が必要ではないでしょうか。

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復興期において、企業は、新しい日本の姿を創る社会的な使命を果たす役割があります。 その際、重要なことは、売り手、買い手という対立軸でなく、ともに責任を果たす主体となって、新しい市場を創る『担い手』としての役割を果たすことが求められます。

そのため、企業は、徹底的に市場・顧客起点で、正確に事実を把握した上で、顧客と相互の知恵を結集する仕組みをつくり、対応策を考える必要があります。企業活動を評価する指標も、社会貢献度、顧客感動度、営業利益率といった視点でみていくことが求められます。 また、自ら考え、知恵を出し、実践する人財(材でない)を創り出せる企業でないと、復興期において価値を示せないのです。過去の常識にとらわれず、新しい発想で、やるべきこととやらないことを仕分けられる人財資源をどう組織化できるかが、極めて重要な要素になります。

新時代の営業とは

では、以上の点をふまえ、新しい時代の営業のあり方を考えてみましょう

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多くの企業の営業マンは、混沌とした状況に流され、目の前の案件処理に追われることが想定されます。 個人的には、営業マンやマネージャーのガンバリズムには敬服しますが、過剰労働による肉体的・精神的ストレスにより、モチベーションが減退しないかと心配になります。個人の力量に委ねられた営業活動では、企業として、社会的な使命感を十分果たせず、「目先の実績さえ確保できれば良い」とするスタイルに終始してしまいます。

これからの営業のあり方を考えると、個人の力量頼りに闇雲に動き回るのでなく、市場実態を正しく把握しながら、やるべきこととやらないことを明確にします。「いつまでに」「どこまでやるか」など自社の目指すべき少し先の着地目標を描きます。そして、緻密な対策検討をした上、効果を見据えた活動をチームとして機動的に進めることが求められます。 当然のことながら、フィールドから継続的に把握した情報(インフォメーション)を知恵(インテリジェンス)に変える作業が必要になります。言い方を変えると、情報を武器とする新しい売り方を確立するのです。

「売れさえすれば良い」ではなく、重点対応すべき顧客に自社の価値を提供するための作戦行動が重要です。 そこでは、物事を進める上のGo Stopを判断する際の考え方を「戦略思考」に変える必要があります。 戦略思考とは、簡単に言うと、『分ける(セグメンテーション)』、『重点を決める(ターゲット)』、『時機を得る(タイミング)』3つの視点からとるべきアクションを決めることです。

また、組織メンバーの相互信頼も不可欠です。チームで共通の目標達成に向け、効果と効率を上げるには、目標と達成プロセスを確認し、後は、個々人が自己の責任において、自主管理する仕組みを確立する必要があります。

これからの営業活動のポイント

できる限り多くの、市場・顧客に対応していこうとするのではなく、市場実態と自社が提供すべき商品やサービスの価値を正しく評価した上で、本当に役立つ市場・顧客に重点を当て、感動を与えられる対応をすることです。そのことが、目先の実績だけでなく、将来の実績につながるのです。

多くのプロスポーツでは、年間の試合数が決められていて、その中で、勝敗や勝ち点が一番多いチームや個人が優勝(勝者)となります。しかし、どのチーム(個人)も年間のすべての試合に勝っているわけではなく、個々の試合では大敗を喫することもあります。強いチーム(個人)に共通しているのは、ここぞという試合には、 たとえ僅差であったとしても勝ち、年間トータルで見るとその積み重ねの結果として他チームよりいい成績を残しているという点です。

確かにプロスポーツにおいても、形成する選手の構成により成績が大きく左右されることは事実です。しかし、同じようなチーム力を有しながら、勝利数の多いチームと少ないチームには、"どの試合に勝つか"、"勝つためにどう準備すべきか"といった点で差があるのです。

企業社会も同じように、勝つ必要のある得意先を明らかにして確実に勝っていくことが、業績拡大と地域の顧客満足度向上(プロスポーツで言うとファンと一緒に優勝を味わうことなど)につながるのです。 事前に、どの市場、得意先で勝つのか、あるいは、勝つ必要があるのか、を評価するための情報を把握しておく必要があります。

勝つべき先で確実に勝つためには、策を事前に練る必要があります。 "どういう目標設定をすべきか(何点とれば勝てるか、何点とられなければ勝てるか)"、"どういう資源投入をすべきか(どういうタイミングでどういう選手を起用すべきか)"、さらには、"部下にどういうアドバイスをすべきか(選手にどういうアドバイスをすべきか)"などです。これらのことは、結果が出た後で手を打っても遅いのです。事前の計画策定を重視した活動が不可欠です。

また、個人の力量に任せきりでも勝てません。メンバー個々人がどのような状態であれ、現在持っている自分の力をできる限り発揮するためには、マネージャーが勝利に向け有効な策を練り、メンバーを望ましい方向に動かすため、メンバーに対して信頼感を持ち、きめ細かいアドバイスを行うことが欠かせません。 優秀なマネージャーは、試合に臨んだ時よりも事前のアドバイスが的確です。

それでは、勝利実現に有効な策を練るには、どこから情報を得るのでしょうか。 自ら、フィールドに出向いて集めると同時に、マネージャーの主対象となるフィールドについては、メンバーの日常活動を通じ収集することです。

また、メンバーとの接触を通して有用な情報を得るためには、ことばをかけるだけでなく、反応することも必要です。普段は放任管理のお任せスタイルで、成績が悪くなってから反応しても、そこには、事後処理の対応しかできず、マネージャーとメンバー間に疑心暗鬼が醸成される危険性があります。 そのため、定期的にチーム・ミーティングや個別ミーティングを行うといった形をつくり、そこからスタートするのも効果的です。 いずれにせよ、個人任せの営業スタイルから組織的な営業スタイルへの転換をどう実践できるかが重要です。

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