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第54回 「これからの営業を考える(2) ~営業強化に向けた戦略とプロセス~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

営業強化に向けた3つの基本戦略

営業強化を考える場合、以下3つのアプローチを重視する必要があります。

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■川下作戦
一つ目は、「川下作戦」です。 お客さまに近い方を川下、生産側の方を川上と言い、「川下作戦」とは、自社商品を拡販するため、問屋任せ、販売店任せでなく自ら顧客の実態をとらえていかなくてはならないということです。 特に、環境変化が激しい時は、自社商品やサービスが使用(利用)される最前線を確認することが不可欠です。 そして、既存の商談相手だけでなく、もう一歩先をみつめた上で商談相手と交渉することが肝要です。

ある食品メーカーは、長年「星のマーケティング」という言葉で次のようなことをやり続けています。 星座(一次取引先)で見るのでなく個々の星(自社商品を使用する顧客に近いところ)で見なければ欠品が発生し、販売チャンスを逃してしまうということです。 要するに、"お客さまが欲しいと思う場所に、どう提供していくのか"です。 当然のことながら、情報を適切につかむ仕組みを構築できているかどうかが重要です。

一方、生産財の場合は、「(ディーラーの)ファン化作戦」という形で進めることが効果的と考えられます。 「ファン化作戦」とは、特約店あるいは代理店の中に自社商品のファンになっている営業(マン)を何人つくるのかということです。 仮に、A代理店に営業(マン)が10人いて、そのうち自社商品をよく売ってくれる営業(マン)は何人なのかという情報をつかんでいるか。 代理店の仕入窓口から「お任せください」と言われても、実際に得意先を担当している営業(マン)が売ってくれなければどうしようもないのです。 現在自社商品をよく売ってくれている営業(マン)が10人中3人いるのならば、売上を上げるためには3人を5人に増やすのか、あるいは3人がそれぞれ売っている台数を、月1台から2台にしていくのか、といった具体的な「川下作戦」が売上拡大の大きな決め手になります。

■エリア戦略
二つ目は、「エリア戦略」です。"全てのエリアを一律に"でなく"どのエリアを掘り下げるか"という戦略です。 これは、よく知られていることですが、現実には、多くの企業が全国展開という政策をとっています。 競合がいなければ全国展開もよいのですが、戦略的な準備もなく、かけ声だけの全国展開では、営業の第一線の負荷が大きく、その成果も多くは期待できません。 特に、後発イメージを持たれている企業の新製品拡販の場合は、重要です。このような企業が、先発企業同様に一気に全国展開を図ることは、投資対効果の関係からすると効果が薄いケースが大半です。

このような企業は、特定のエリアだけに絞り込んで、No,1拠点づくりに向けた戦略対応を図るべきです。 モデル・エリアの中で成功モデルをつくり、実施ノウハウを積み上げ、その上で他エリア、全国に広げるという方法が有効です。単なるテスト販売方式による発売でなく、1つのエリアに徹底集中して、成功プロセスを開発実験するのです。このようなやり方を、「B・B・T(Business Building Test)方式」と呼びます。

■業績評価
三つ目は「業績評価」です。 多くの企業が、売上高を始めとした結果指標を業績指標としています。 安定的な業績を継続的に維持するため、結果を確実にあげているかどうかを評価指標とすることは重要です。しかし、結果さえ良ければ・・・ではなく、そのプロセスが望ましい形かどうかを評価すべきです。 自社商品やサービスを提供すべきターゲット顧客で確実に上がっているのか、営業(マン)は、ターゲット顧客に望ましい時間を投入しているのか、顧客の満足度、感動度はどうか、地域社会などでどう評価されているか、などについての評価軸を明確にすることです。

また、"人の活性化"という観点から評価方法を変えていかなければなりません。 ここ数年、従来の年功序列型評価では限界がくるということで、多くの企業がその評価制度を大きく変えていますが、はたして"人の活性化"という点から本当に良い方向に進んでいるのかにはやや疑問があります。 JMAグループが2009年に行った「人づくり実態調査」によりますと、好業績企業は、「プロセス重視」「信賞必罰が明確」「加点主義」をとっています。

営業サイクルのあり方

それでは、どういうプロセスで営業を行うべきでしょうか。 市場が混とんとしている時期において、顧客は、個別に様々なニーズを持っています。 更に、時間経過とともにニーズの中身も変化していきます。 供給側にとって、このような個別性に対応していくことは極めて非効率です。 目の前に広がる需要に一律対応していきたいところです。 しかし、「売切ごめん式」の対応では、目先の実績は確保できたとしても、顧客との継続的・安定的な関係を構築することは難しく、将来の実績につながる種は育ちません。

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まず、自社商品・サービスを提供すべき重点顧客・市場を明確にし、その顧客の真のニーズを掘り下げることから始めるべきです。 そのため、営業(マン)は、顧客と同じ場所に足を運び、顧客自身も整理できていない潜在ニーズを一緒に感じとることが重要です。 単なる訪問活動ではなく、「顧客との密着化」が必要です。 このステップは多くの時間を必要としますので、どこを対象とするか明確にしなければなりません。

真の顧客ニーズ(らしきもの)が何とか把握できたら、次は、それに対する自社の提供でき得る価値を創り込むことです。 ここでいう「価値」とは、必ずしもハードとしての商品・サービス開発ということではありません。 顧客の求めるニーズを解決できる商品開発ができれば、それに優るものはありませんが、ここでは、既存の商品やサービスを変更しなくても、新しい使用方法や使用上の困りごとに素早く対応するといったソフト価値を創り込むことが、営業のアクションとしてむしろ重要なのです。

次に、提供すべき価値を顧客に正しく理解してもらい、活用してもらうため、様々なサポート活動を行います。 どう利用すればよいのか、本当に役に立っているのかなどの検証も必要です。 こうして、顧客が抱える課題のニーズ解決実績を一つひとつ蓄積していくのです。 とにかく、あせらず顧客と一緒になって確認しながら動いていくことを意識してください。

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