お問い合わせ

第60回 「キープロセス(2):営業第一線を変える その2 ~営業活動資源の確保と有効活用~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

mk60_1.jpg

営業活動資源の側面から営業競争力を上げるには、以下の2つの視点で考えます。 一つは、顧客に直接会って営業活動をするための必要な活動資源枠(顧客と直接接触して、自社商品やサービスを訴求するための時間枠)をどう確保するか、次に、その資源をどう有効に活用するか、です。

営業活動資源をどう確保するか

前回、営業第一線の活動成果は、活動資源枠が多いか少ないかに比例するとお話ししました。 同じ営業スキルの営業マンで比較すると、活動資源枠が多いほど、営業成果(生産性)が高い傾向にあります。

営業第一線の活動成果を上げるには、まず、適正な活動資源枠をどう確保するか、が課題と言えます。 適正な活動資源量を確保するためには、現在の活動資源の使い方を正しく把握することから始めることが重要です。

営業マンの活動資源に関するデータ(JMACデータベース)を見ると、広域エリアを担当している営業マン、都心型エリアを担当している営業マン、マネジメント業務を兼務している営業マンなど、同じ役割を担っている営業マンであっても、活動資源量やその使い方には大きなばらつきがあります。

例えば、ある月の出勤日数が20日であっても、10日以上を内勤業務に費やしている営業マンがいます。 また、1日の実質的な勤務時間が、9時間あったとしても、その内訳をみると、内勤時間、移動時間、休憩時間などを除く正味の訪問(商談)時間を、4~5時間とっている営業マンもいれば、1時間程度しかない営業マンもいるでしょう。

mk60_2.jpg

まず、月単位、1日単位で、営業マンの時間の使い方を見えるようにすることです。 その上で、会社全体あるいは拠点ごと、営業マンの役割ごとの適切な営業活動資源枠を決め、実態とのギャップを埋めるために、原因を特定し対策を講じることです。

必要以上に会議や資料作成などに使われる内勤日数が多くないか、営業活動へのスタート時間が遅くないか、移動時間が多過ぎないか、など原因により打ち手も変わってきます。

営業活動資源をどう有効活用するか

営業マンごとの担当分担や役割の違いを踏まえ、適切な営業活動資源枠を確保すると同時に、その資源枠をどう有効に使うか、を適切に判断することが重要です。

ところが、多くの企業では、その判断を営業マン個々人に任せています。 そうすると、多くの営業マンは、自分にとって行きやすい先へ多くの活動資源を投入することになります。 営業マンが行きやすい先とは、自社商品をよく購入してくれている先です。 このことは、一見、適切な投入であるように考えられます。 しかし、会社や営業拠点にとって重要なことは、今日の売上を確保しながら、明日の売上の種を創っていくことです。

今日の業績を構成している顧客だけに対応していたのでは、業績の先細りは否めません。 常に、新しい顧客を創っていくことが不可欠です。 中には、競合他社商品の取引き量が多い顧客を攻略することも必要になります。 しかし、多くの営業マンにとって、そのような顧客とは、良好な関係づくりができていないので、心理的な不安感が大きく、訪問しづらいのです。

営業マン任せでは、継続的な対応も進まず、その結果、攻略成果の可能性も低くなります。 現在の業績と将来の業績を確保するため、営業マンの貴重な活動資源を投入すべき対象顧客(コア顧客)は、会社全体あるいは拠点として基準を明確にして決めることが重要です。

mk60_3.jpg

数多くの顧客からコア顧客を決めるには、まず、個々の顧客の実態を把握しておかなければなりません。
 1.自社および競合他社の商品やサービスを導入する上で、顧客のどういう部署の誰が関わっているのか
 2.自社のビジネスの対象となる、顧客のポテンシャル(購買力、成長性等)がどの程度あるのか
 3.自社ビジネスに関わる、顧客の政策内容はどのようになっているのか
を把握することです。

そして、顧客における現在の自社の力量がどのようなものか、についても確認します。
 1.自社の実績(売上、利益等)
 2.競合の実績(売上、利益等)
 3.顧客の意思決定に関係するキーパーソンに対する、自社と競合の訪問活動やつながり度合い
を把握することが必要です。

上記の情報に基づいて、営業マンが活動対象とすべき顧客を適切に評価するのです。
 1.顧客の評価基準が明確になっているか
 2.定期的な顧客評価を行っているか
 3.その上で、コア顧客を決めているか
といった顧客評価の適正度合いをチェックします。

営業マンの活動資源を投入すべきコア顧客が設定できたら、自社の商品やサービスを直接顧客に訴求するための業務を設定します。 まず、顧客に対する活動基準を明確にすることです。
 1.(業態等)顧客タイプ別の活動重点はどこか
 2.顧客の意思決定プロセスごとの活動対象者(キーパーソン)はだれか
 3.顧客評価に応じ、どういう対応を図るべきか

また、営業マンの活動が顧客に対し、付加価値を提供しているか、の実態を把握することも重要です。
 1.営業マンの時間の使い方や活動内容など、業務実態を定量的に把握しているか
 2.営業マンは、顧客の要求に付加価値を提供しているか
 3.営業マンの顧客接点量の目標水準をクリアできているか
などを確認してください。

その上で、以下の視点から営業マン個々の業務を見直すことです。
 1.付加価値を高めるコア業務を明らかにしているか
 2.効率化すべき業務を明らかにしているか
 3.あるべき業務分担と業量を明らかにしているか

最後に、営業マンごとに明確にした、やるべき業務の品質を継続的に高めていくことを検討します。 現状のレベルよりも、もう一段高い水準に高めるため、
 1.新しい営業活動のやり方のステップを整理する
 2.関連ツールや実践対応型のトレーニングを実施する
 3.ノウハウ・成功事例を共有化する仕掛けをつくる
などの取組みが求められます。

また、顧客との接点量を増やすため、効率化すべき業務を明らかにし、必要な手を講じることも大事でしょう。
 1.効率化すべき業務の業量やピーク・オフを把握する
 2.業務の集中化、標準化策を打つ
 3.モバイル化など、IT技術を活用する

そして、営業マンがより動きやすくなるように、トップやスタッフによるバックアップを行い、取組みのプロセスを評価に入れ込むことを検討します。
 1.トップ自らが拠点に足を運び、生の声で推進のねらいを徹底する
 2.スタッフによる拠点へのフォロー体制を確立する
 3.営業評価の仕組みに連動させる

上記の視点を参考に、営業マンの活動資源を有効活用するため、貴社の重点課題を明確にし、必要な打ち手を講じてください。

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第30回 心理的安全性は待つものではなく、自ら獲得するもの
  • 「自分自身を技術を通して表現する」という技術者の生き方とは?
  • TCFDに基づく情報開示推進のポイント
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット
  • 一人一人の「能率」を最大化させる、振り返りのマネジメント「YWT」のすすめ
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!

業務改革を同時実現する『基幹システム再構築』推進

  • 第1回 基幹システム再構築を行う背景
  • 品質保証の「本質」を考える ~顧客がもつ、企業に対しての「当たり前」~

オピニオン一覧

コラムトップ