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第74回 「売れない時代の営業活動を改めて考える(2) ~営業第一線の変革方向~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

売り抜くための営業変革点

前回、顧客心理・行動の変化に伴う、営業の難しさについてお話ししました。 他にも、営業面の難しさは様々あると思いますが、次に、営業第一線の変革方向について考えてみたいと思います。 今までの営業のやり方をみると、「犬も歩けば棒に当たる」式の活動です。 それでも、数をこなせば顧客に当たって、売れました。 手抜きの営業≒三段跳び営業とも言えますが、ホップ、ステップ、ジャンプで、その間が全部抜けています。 それでも売れたのです。競合に対抗しなくても、自社の取り分はありました。 実態を調査・分析しなくても、顧客も需要もあったのです。管理不在でも、機会はあったのです。 創意工夫がなくても、慣れと経験で売れたのです。 しかし、今は、そうはいかない時代です。

売るためには、徹底してテリトリー、あるいは管轄するマーケット、顧客、競合、チャネル・・・・これらの実態調査・分析が必要不可欠になったのです。 企業のマーケティング調査部門で情報を集め、分析することも必要です。 しかし、重要なことは、営業成果につなげるため、マネージャーを通じて、第一線の人たちが足で歩いて実態調査・分析をすることです。

私は、セールスマンとは呼びません。営業マンと呼びます。 なぜなら、営業マンは、以下にあげるように、売るだけでなく調べるという幅広い役割を持っているからです。

・厳密な営業行動計画が必要です。
・機会ロス、管理ロスをなくすことです。
・顧客を説得するための武装化が必要です。
・徹底した顧客管理が肝要です。
・人的サービスでの格差づけが、プラスアルファ要因として出てきます。競合より、ちょっといいサービスです。
・効率的な時間活動が必要です。
・質の高い営業スキルが不可欠です。
・創意工夫を駆使した作戦営業が求められます。法人や組織を対象にしたビジネスは、特に重要です。
・競合対応の情報の早取りです。1時間遅れでも、遅いという感じです。その情報によって、先制攻撃をかけるのです。そういう営業が必要です。
・自己管理力です。マネジメントと言えば、上の者が下の者を管理すると思いがちですが、そうではありません。一人ひとりが、自分で自分をマネージする、そういう自己管理力が必要です。そういう総合的な力をつけるために、自己啓発の計画が求められます。具体的に自分の何を強めればいいのか、一人ひとりに課題を持たせることです。

営業強化展開の基本的考え方とは

顧客の購買パターンが、構造的に変化してきているので、今までのような売り方では、なかなか買ってもらえません。 このような状況に挑戦する上で、考慮すべきことが3つあります。

1つ目として、商品構成は、今までのものと変わらない。 2つ目は、選択したマーケット、チャネルは変えない。 3つ目に、営業人材は変わらない。 あいつは能率が悪いので、別の人間を手当てすると言っても、簡単に変えることはなかなか難しいでしょう。 では、何を変えていくのか、次の3つの要因があると考えます。

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第1に、「営業マンの物の考え方と体質を変えていく」こと。 第2に、「営業促進を含め、営業のやり方を変える」こと。 そして、第3に「マネジメントのやり方を変える」こと、大きくはこの3つです。

第1の「営業マンの考え方、体質を変える」とは、どういうことでしょうか。 今までのやり方では通じない、と思わせることがポイントです。 ただ「思え」と言っても、簡単にその通りにはなりません。 例えば、失敗した原因の分析を徹底的にやってみることです。 失敗原因が、今までは通用していたが、これからは通じないということを、事実で示してみるのです。 徹底して顧客の立場に立って考えさせる意識に持っていくことです。 システマチックに物を考えさせることです。 それから、調べ、考え、知恵を絞ること。営業の人はそういう体質を持っていませんから、マネージャーを通じて、そこのところを徹底させるのです。 もっと効率性を追求させるのです。 営業マンは、とかく今月の売上が頭から離れません。 売れないと、目先を何とかしようとします。 だから、物の考え方も、活動展開も、目先のところで止まってしまうケースが多いのです。 それは、ある意味でいたしかたないのですが、同時に、1、2年先をどうするか考えさせる、そういう短期と中期両方の成果を狙った活動をしようという考え方に立たせることです。

では、第2の「営業のやり方を変える」とは、何でしょうか。 手抜きをさせず、徹底したシステムに則った活動をさせることです。 ここで言うシステムとは、業種、業態、営業特性を織り込んだ自社にしかない仕組みです。 それから、顧客と直接接触する営業活動量を適正量確保することです。 同じ質の活動なら、投入量が10から15になると、50%アップの売上につながる可能性が高くなります。 ただ、この場合、労働強化になるのではないかという懸念が生じます。 ところが、ほとんどそういうことにはならないのです。コンサルティング支援をしたある企業では、毎晩10時、11時までかかった営業の仕事が、システムに則った活動展開をとり入れ浸透させた結果、活動量が増え、概ね7時半には帰れるようになりました。 しかも、業績は向上したのです。

最後に、第3の「マネジメントのやり方を変える」です。 どうしても売れないとなると、結果を見たくなります。 しかし、いくら結果を見ても業績は伸びません。 プロセスをきちんと押さえるマネジメントが必要です。 できるだけ定量的なマネジメント材料を活かしていくことが大事です。 営業マンの活動量データをとるとか、ターゲット顧客に対する活動プロセスを棚卸しするとか、そのようなところからマネジメントのやり方を変えることです。 それは、自社の営業活動の弱点を見える化し、強化するマネジメントでもあるのです。 営業マンごと、ターゲット顧客ごとの弱い面を強めていくように指導していく、育成していくことが大切です。 それには、ミーティングの質と頻度を高めることに力点を置いた運営が必要です。

何か変革しなければならない時、総合的にシステマチックにまとめることが必要です。 部分的・断片的というのは通じなくなっています。 トップが不退転の決意をもって臨まなくては、こういうことは進みません。 もうひとつ、変革の方向をはっきり示すことが必要です。 一時的でなく、本当に経営の体質として作り上げていくのならば、我慢に我慢を重ねながら、持続的にやっていかなければなりません。 半年やってみて「どうもだめだ、やめておこう」となると、第一線の人たちは新しい方法を導入した時、「また、そのうちやめるだろう」となります。 そんな意識でしか、見なくなるのです。 やるからには、じっくり構えて徹底してやり抜くことが求められます。


次回からは、「クリニックミーティング」について、お話しします。

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