お問い合わせ

第76回 「クリニックミーティングのすすめ(2)~アタック段階~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

前回は、「クリニックミーティング」の「アプローチ段階」について、事例を通じて、ご説明しました。 今回は、第2段階である「アタック段階」のポイントを見ていきたいと思います。

「アタック段階」の事例

社員が営業活動をした翌日の朝、会議室で所長と社員の会話。

所長: 昨日は、ごくろうさま。早速だが、GMエージェントの件、報告してくれるかな。
社員: 早速この間のシナリオでデモをしてみたのですが、やはりターゲットの検索には困っていたようです。
所長: そうか。具体的には何と言っていた?ヒアリングしてきたのだろ。
社員: はい。ターゲット検索は、名刺情報でなく、過去の顧客情報検索が中心だそうです。 そのため、いつも同じようなお客さまが、常にリストアップされるようです。 こんな形で使えますとデモをしたら、名刺情報が活用できれば、新たなターゲットが見つかりそうだということに、気がついたみたいです。
所長: そうか、いい感じだな。やった甲斐があったじゃないか。その情報は、(顧客情報シートに)残しているの?
社員: すいません。まだ入力していません。

所長: すぐに入力なさい。いい情報なのだから、すぐに書くようにしなさい。 ところで、クラウドの件も確認してみたか?
社員: 聞いてみました。でも営業企画の人は、その辺のことは、どうでもいいみたいなので、ニーズはないと思います。
所長: 情報システム部には確認してみたのか?
社員: いいえ。
所長: 会社が意思決定する時は、色々な人が関わるのだよ。 窓口となって交渉する人、実際に使う人、最終的に意思決定する人など。 この案件の場合、情報システム部は、採用するにあたって、意思決定に影響を与える人になる。 だから、情報システム部のニーズも確認しておかないといけない。 特に、案件規模が大きくなればなるほど、意思決定に関与する人も増えるので、誰がどういう形で関与するのか、把握することが重要になる。情報シートを確認してみろ。
社員: (顧客情報シートをみる)
所長: そこにキーパーソンの欄があるだろ。 それは、今言った意思決定者を押さえることが重要だから、収集すべき情報項目として設定しているのだよ。 いつも言っているだろ、「売りながら調べ、調べながら売る」。 情報システム部に確認してもらうとして 、聞いたのはこれだけか?

社員: やっぱり、競合企業にもこの案件の相談をしているみたいです。
所長: それで?
社員: 何か調べ足りないところがありますか?
所長: よく考えてみろ。
社員: あっ。競合の動きについて、もっと細かく確認するのを忘れていました。
所長: じゃ、何を調べないといけないのだ。
社員: まず、どこまで進んでいるのか。デモはやっているのか。アプリケーションの提案をしているか。さらに、見積まで提出しているのか。 アプリケーションの提案をしているのであればその内容と、見積を提出しているのであれば、その条件と額をつかむこと。
所長: 他にないか?
社員: まだありますか?
所長: 競合企業の営業担当が誰に会っているかだよ。 さらに言えば、競合企業が会った人がどう反応したかも、確認した方がいいな。 誰が競合企業を後押ししているかによって、こちらも打ち手が変わってくる。
社員: わかりました。次回行ったときに確認してきます。

所長: そうか。競合企業も提案するとなると、こちらももっと材料を揃えないといけないな。 営業現場の視点で見たときに、名刺管理ソフトを入れるメリットはないだろうか。
社員: そうですね。営業の現場からすると、GMエージェントの営業が、重要顧客のどの役員と人脈があるかわかると、アクションがとりやすいと思います。
所長: そうだよ。いいアイデアじゃないか。 確か当社のアプリケーションには、名刺情報から人脈マップが作れる機能があったよな。 もしかしたら、受注獲得のキラーコンテンツになるかもしれない。
社員: そうですね。いつも窓口部門の人としか接していないので、ついその人たちの立場だけから提案を考えてしまっていました。 所長が言われたように、現場の視点で考えるということを忘れていました。

所長: よし。ところで、提案プランまで作ってあるようだが、内容を確認しよう。(提案プランの内容を見る)いきなり営業担当者全員では、コストが膨らみ過ぎるな。重点となる顧客を担当している部門に絞ってはどうか。 また、導入教育の部分も、こちらで実施してはどうか。今後のつきあいもあるのだから。
社員: そうですね。もう一度、先ほどの現場の視点の部分も含めて、プランを練り直してみます。
所長: ところで、ここは営業部門のシステムであるSFAは、入っていないのか?
社員: そうか。名刺管理ソフトが入ったとしても、SFAとの連携がとれなければ、同じ情報を2度入力しないといけなくなるか・・・・。 その連携も必要か確認してみます。
所長: そのように、お客さまの使う場面を想定して、不都合はないか、もっと役に立つ提案がないか、考えることが重要なのだ。 でも、なんだかいけそうな感じがしてきたじゃないか。 提案書ができたら、見せてもらうとして、次回の訪問目的を整理しようか。・・・

「アタック段階」のポイントとは

mk76_1.jpg

この「アタック段階」では、相手の情報が十分把握できていないケースが多いため、必要な情報をいかに収集するかがポイントになります。 担当者が、把握すべき情報の意味などをわかっているかどうか確認し、理解が不足しているようならば、徹底することが重要です。 攻略すべきキーパーソンとは誰か、競合について集めなければならない情報は何かを理解させることです。 そして、訪問前に何の情報を集めなければならないか意識させておくのです。また、常に他の提案チャンスがないか意識させておくことも、大事なことです。(上図参照)

第76回 「クリニックミーティングのすすめ(2)~アタック段階~」動画はこちら

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第30回 心理的安全性は待つものではなく、自ら獲得するもの
  • 「自分自身を技術を通して表現する」という技術者の生き方とは?
  • TCFDに基づく情報開示推進のポイント
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット
  • 一人一人の「能率」を最大化させる、振り返りのマネジメント「YWT」のすすめ
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!

業務改革を同時実現する『基幹システム再構築』推進

  • 第1回 基幹システム再構築を行う背景
  • 品質保証の「本質」を考える ~顧客がもつ、企業に対しての「当たり前」~

オピニオン一覧

コラムトップ