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第80回 「部下を上手に動かすコミュニケーション(3) ~部下に対する説得・質問・答え~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

部下に対する説得の仕方を理解する

マネージャーは、様々な場面で部下を説得する機会が多いです。部下の考え方や態度を変えさせる場合、説明ではなく、説得を行う必要があります。

説得は、説明とは違います。説明は、知識や仕事の進め方についての原理・原則を、あまり感情を入れずに論理的に話すことで、相手の理解を促します。それ故に、話の内容をどうするかが大変重要になります。これに対して、説得は、話の内容よりも、相手の感情を動かすことに重点が置かれます。説得する人の立場と相手との関係が重要になるのです。

例えば、「昔、新入社員のころ、同じ釜の飯を食った仲間じゃないか、何とかしてくれ」といったように、相手の感情に訴えて動かそうとします。そして、説得は、話す人の態度や話し方が、相手から見て好意的なものかどうかに左右されてしまいます。話の内容が正しくても、その態度や話し方が気に入らないと、反発してしまいます。 このようなことから、説得するときのポイントをあげてみましょう。

1.説得の目的やねらいを、はっきりさせておく
何のために説得するのか、相手はどういう理由で納得していないのかを十分につかんだ上で、対処の仕方を考えます。

2.直説法でなく、間接法で話を進める
そのときの相手の心理状態を理解するために、何気ない話から徐々に核心に迫っていくようにします。ただし、これもケースバイケースで、相手の性格によっては、直接的にズバッと話をした方が良い人もいます。このようなことを十分に把握した上で、話を進めることが必要です。

3.相手のペースに巻き込まれない
説得をしているうちに、相手が感情的になってくる場合も多くあります。このようなときに注意しなければならないのは、こちらも相手と同じように感情的になってしまわないことです。説得するのが目的ですから、説得する方は、冷静に相手の話を聞く(~聞き役に回る~)ことが大切です。

4.回数を多く続ける
人間の感情というのは、そう簡単に変わるものではありません。1回説得したからといって、そのままにすると、また元の木阿弥になってしまいます。機会を見つけて2回、3回と話し合いの場を設け、相手の話を聞くことが必要です。こうすることで、相手は「自分のことに関心を持ってくれている」という気持ちになり、徐々に変わってきます。決して焦らず、気長に行うことです。

5.相手にとっての利益を示す
考え方や態度を変えると、どういうメリットがあるかを、具体例で示すことです。自分にとって利益があるものならやってみよう、という気にさせるのです。

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質問の仕方・答え方を理解する

部下との話し合いの中で、様々な質問をし、また、部下からの質問に対して答えを出す場面が多くあります。「いくら質問しても答えが返ってこない、返ってきても変な答えである」といった声がよく聞かれますが、これは、「トンチンカンな質問には、トンチンカンな答えしか返ってこない」ということです。

マネージャー自身が、自分の質問の仕方を棚に上げておいて、部下の答え方をどうこう言っているようなものです。マネージャーが内容を十分に理解することが、質問の第一歩です。その上で、部下との質問のやりとりをより良くするためのポイントをあげてみましょう。

1.討議する内容について、説明しておく
部下に対して、資料を渡して「質問はないか」と言っても、答えようがありません。必ず、その内容の要点を整理して、説明しておきます。こうすることで、部下は、質問の視点をつかみやすく、考えやすくなります。

2.質問が出ないときは、逆に質問する
説明した後で質問が出てこないときは、逆に質問してみます。「この部分についてどう思うか」というように。さらに、「このことについて説明してくれ」と言ってみるのもいいでしょう。こうすることで、相手がどの程度理解しているかがわかります。ただし、質問する相手や場面を、十分に考えて行う必要があります。

3.質問に対しては、具体的かつ丁寧に答える
部下の質問に対しては、日常的なことを例にとって答えます。身近なケースで説明されると理解しやすいのは、前段で述べたとおりです。 そして、もっとも大切なことは、できるだけ、親切丁寧に答えることです。上司の態度を、部下はよく見ています。たとえ答えの内容が適切でなくても、丁寧に答えてくれることで、部下はそのことに対して興味を持ち、行動が変わるものなのです。

4.初歩的な質問を無視しない
部下の中には、初歩的な質問をする人もいます。そのようなときのマネージャーの対応の仕方によって、その後の部下の取り組み姿勢も変わります。「そんな質問は自分で考えろ」とか「もっとよく勉強しておきなさい」という返答をしようものなら、部下は二度と質問しなくなり、やる気もなくなってしまう可能性があります。初歩的な質問ほど、部下の本音が隠されているのです。

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