第82回 「部下を上手に動かすコミュニケーション(5) ~部下に対する適切な指導とコーチング~」
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
部下の成熟度レベルに合わせた指導を
的確な部下指導を行う上で、マネージャーは、部下の成熟度レベルを判断し、適切な能力開発アプローチをとることが求められます。部下一人ひとりの業務知識や経験などの職務遂行能力はどの程度あるのか、仕事上発生する課題や問題を自発的に解決する意識はどうなのか、といった点から部下の現状を評価することが重要です。
上図に示すように、部下の能力成熟度によって、指示型の対応をすべきか、コーチング型の対応をすべきかを判断することで、部下の動かし方を工夫します。
コーチングの基本を理解する
マネージャーの大きな役割の一つに、部下の悩みや問題の相談に乗り、それらを解決するために、適切なアドバイスを与えることがあります。これを、コーチングあるいはカウンセリングと呼んでいますが、マネージャーとして、部下をコーチングする上で気をつけなければいけない点を、あげてみましょう。
1.決して自分から聞いたりしない
コーチングを行う上で、まず気をつけなければならないことは、相手が自由に感情を吐き出せるような雰囲気をつくることです。そのためには、最初からあれこれ質問すると、相手は心の中に壁をつくってしまい、本心を出さなくなります。じっくりと落ち着いて、相手が話すのを待つことです。まず、マネージャー自身が、ゆったりとした態度で相手に接することが重要です。
2.相手の立場に立って聞く
部下が悩みや問題を打ち明けてくれたら、それらを自分の悩みや問題として聞く必要があります。人間誰しも、自分の心を打ち明けるのは相当勇気の要ることです。悩みを打ち明けるというのは、相手を信頼しているということです。 このことを十分理解して、部下の話を聞かなければなりません。
3.アドバイスは、できるだけ具体的に行う
コーチングによって部下の悩みや問題を解決するときには、抽象的な答え方でなく、部下がすぐに行動に移せるような、具体的なアドバイスを心がけます。話を聞いてもらっただけで、気持ちがスッキリするということもありますが、解決策を見つけようとしているときには、特に具体的であることが重要です。
4.コーチングの内容は、決して口外しない
部下はあなたを信頼して心の中を開き、話しているのですから、そのことについて第三者に口外してはいけません。マネージャーがコーチングの内容をベラベラしゃべると、その時点で、部下はあなたに対して二度と心を開かなくなるばかりか、あなた自身の信頼も失われてしまいます。
(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)
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