第83回 「営業マネージャーの会議リードの仕方(1) ~目的・ねらいと事前準備~」
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
会議の基本とは
会議を一切なくしたという企業の話も耳にしますが、相も変わらず、朝から晩まで会議に追われている営業マネージャーも少なくないでしょう。 ところが、その目的を聞いてみると、「前任者の時代からやっているから」「上司の命令で・・・」というように、曖昧な答えが返ってくるケースが意外に多いようです。
そもそも、会議を行うからには、行っただけの効果がなければなりません。会議の効果をあげると、次の3つに集約されます(参照「表1」)。
1.一時に多人数に効率よく情報を伝えられる・・・【効率化】
2.一人の考えだけでなく、相互に刺激し合うことで、より良いアイデアが生まれる・・・【シナジー効果】
3.討議のプロセスを通じ、出席者の認識を合わせ、決定したことを実行する意欲を全員に持たせられる・・・【コンセンサス形成】
会議を開くにあたって、上記3つのうち、最低1つ以上の効果をねらうものでないと、意味がありません。 したがって、会議を計画する時には、どういう効果をねらうのかを確認し、その目的を明らかにして準備を行い、終わったらどのような効果があったか、反省してみることが必要です。
会議を目的別に分類すると、上図のようになります(参照「図1」)。
会議の事前準備
会議の目的やねらいが決まったら、会議開催に向けて準備を進めます。事前準備の項目としては、以下の5つ、1.議事、2.進行役(司会者)、3.参加対象メンバー、4.相互作用、5.演出 を考えることです(参照「図2」)。
「議事」については、会議にかけがいのある「議題」を選ぶことです。かけがいのある「議題」であるかどうかは、会議の3つの効果に基づき判断します(参照「表1」)。
まず、「効率化」の視点から、短時間・期間で決めることで効果の上がる議題です。 具体的には、通常の組織の意思決定(決済)のプロセスを通していては、タイミングが遅く、他社に先んじられる可能性があるもの、特定のテーマについて、同様の経験を有する営業マンを一堂に集めて議論した方が良いものなどです。逆に言えば、通常の意思決定プロセスを通じて、確認し決めた方が良いテーマや、特定の人だけが関係するテーマは、会議を開くことは望ましくありません。
次に、「シナジー効果」の側面から、有効な会議とは、どんなものでしょうか。通常の組織ルートを通したやり方では 行き詰まり、あまり効果が上がらなくなってしまった問題について、新しいやり方を工夫しなければならないものです。例えば、将来の核となる開発テーマの検討は、開発、営業、製造部門など異なる立場で仕事をしているメンバーが集まって議論することにより、個々の部門ごとに検討するよりも、いい成果が出る可能性が高いと言えます。また、経験者と新人とが一緒に議論することで、経験を後輩に伝えアドバイスするなど、新人のスキルアップにつなげる場となることも、効果的と考えられます。
「コンセンサスの形成」の側面では、既存の組織の情報伝達プロセスでは、意図が十分伝わらないテーマの場合、会議を開催します。例えば、今までの仕事のやり方を変える場合など、それによって影響が受ける人たちを参加させておいた方が、受け入れがスムーズになるのです。「議題」が決まったら、うまく組み合わせ、「順序」を考えます。「順序」を決めるには、「議題」のつながりや発表者の役割を踏まえます。
「議題」の次に、「進行役(司会者)」を決定します。社内における会議の「進行役」は、マネージャーが行うだけでなく、部下にも順番に役割分担させてみます。進行役になることで、会議をリードする「能力」を磨き、リーダーシップを「発揮」することができます。会議は、部下育成の場でもあるのです。
会議開催にあたって次に考えることは、「参加メンバー」をどの範囲に設定するかです。原則として、必要不可欠なメンバーを「厳選」して少人数で行うことです。そして、メンバー一人ひとりに、その「役割」を伝達しておきます。メンバー各自が用意すべき資料や発表者は、特に念を押しておきます。
時間や進め方といった「ルール」の徹底も、怠ってはいけません。特に時間に関して、開始時間と終了時間を厳守するよう、進行役だけでなく、参加メンバー全員に事前連絡しておきましょう。
また、「討議」が活発になる「ムード」づくりも、大切です。そして、マネージャーが最も気をつけなければならないことは、TPOを考えた「演出」の仕方です。例えば、議題ごとに誰を最初に指名するか、次に誰を指名するかといった、話す「順序」を考え、「進行役」の人と事前にすり合わせておきます。
以上のようなことを、会議の開催前に準備しておくのとしないのとでは、その成果に大きな差が出るのは、言うまでもありません。この会議準備の領域を示すと、前出の「図2」のようになります(参照「図2」)。
(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)
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