お問い合わせ

第89回 「営業マネージャーのための営業数字(4) ~回収をみる~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

今回は「回収」を取り上げ、みるべきポイントを解説いたします。

回収のチェック項目

1.信用限度額
得意先に対する売上は、貸し売りとすれば、いくらでも伸びますが、会社の資金繰りや、シェアに対する信用状況を十分把握して行う必要があります。個々の得意先に対する「信用限度額」を決めることが回収チェックの第一歩と言えるでしょう。「信用限度額」の決め方には、以下に示すような方法があります。

(1)自社の資金繰りに基づく設定法
 得意先の信用状況よりも、自社の資金繰り状態から決める方法
 信用限度額 = 売上高 ×(資金固定期間/365日)

(2)得意先売上見積りに基づく設定法
 得意先売上高における自社製品の回収期間から、設定する方法。
 この方法で設定すると、得意先の信用状態が入れられないので、財務状況や経営者の考え方などを加えて、修正する必要があります。
 信用限度額 = 得意先仕入見積高 × 自社仕入れ比率 ×(回収期間/365日)
 注)得意先仕入見積高 = 得意先売上見積り高 - 得意先売上総利益見積高

mk89_1.jpg

(3)得意先売上目標と回収期間による設定法(上表参照)
 過去の実績をベースに、マネージャーと営業マンが話し合い、信用状況などのバランスを考えて設定する方法で、現在多くの企業で行っています。
 信用限度額 = 得意先別売上目標 ×(得意先別回収期間目標/365日)

(4)総合指定法による設定法
 信用限度額設定法(72.3KB)を使い、得意先を総合的に見て設定する方法で、現在最も正確性が高いと考えられています。
 信用限度額 = 1ヶ月販売基準 × 標準信用期間 × 信用指数
 注)・1ヶ月販売基準 = 売上高 × 原価率
   ・標準信用期間 = 請求日から現金になるまでの標準月数
   ・信用指数 = (比率指数値 × ウェイト) + (経営者評価値 × ウェイト) + (その他の評価値 × ウェイト)

信用限度額は、経営環境や競合他社の条件の変化によって、少なくとも年1回は修正する必要があります。

2.回収サイト
 回収サイト = 手形期日 × (手形金額×売上高)
 当月100万円の商品を販売し、その代金として、現金で30万円、60日手形で30万円、120日手形で40万円を受け取ったとすると、回収サイトは何日になるでしょうか。

3.回収率
 回収率 = (回収額/請求額) × 100
 例えば、当月請求額が36,000,000千円で、回収額が32,000,000千円であったとすると、回収率は以下の数字になります。
 回収率 = (32,000,000千円 / 36,000,000千円 ) × 100 = 88.9%

回収におけるポイントとは

1.信用限度額合計と運転資金のバランスを考えよ
「信用限度額」を正味運転資金の範囲内にすることで、資金繰りを悪化させないようにできます。「信用限度額」の合計が、運転資金を上回っている場合は、
 (1) 現金回収先を増やす、回収サイトを縮める
 (2) 売掛金を減らす、回収サイトの長い得意先を圧縮する、在庫量を減らす
 (3) 現金支払いを手形にする、支払手形の期日を延ばす
といった手を打つように努めます。

2.回収基準比率を設定せよ
売掛金の回収は、回収日数ができるだけ短く、回収率が高ければ高いほど、良くなります。このことから、得意先ごとの回収は、回収期間と回収率の両方から見ることが必要です。
これを、回収基準比率 = (回収率/回収期間) × 100 と言い、回収の効率がどの程度上がっているかをチェックする指標として使います。例えば、請求額2,500千円に対して、回収額が2,100千円で、回収期間が90日であったとすると、回収基準比率 = 回収率 (2,100千円/2,500千円) × 100 / 回収期間 (90日) = 93.3% となります。

(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)

コラムトップ