第90回 「営業マネージャーのための営業数字(5) ~付加価値を見る~」
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
今回は、「付加価値」を取り上げ、見るべきポイントを解説します。
付加価値とは
「付加価値」とは、企業が生産活動や営業活動の結果として、生産物(または役割)の価値の中に独自に生み出した価値(稼ぎ高)のことです。
簡単に言うと、売上高から、他の企業で作ったものの購入価格など、製品やサービス完成品の作成に要した費用を引いたものを言います。
「付加価値」の求め方には、控除法と加算法の2通りがあります。控除法は、中小企業庁が採用している方式で、広義の「付加価値」と言い、加算法は、日本銀行が採用している方式で、狭義の「付加価値」と言います。
【控除法】
付加価値=純売上高-直接材料費-購入部品費-外注加工費-補助材料費
【加算法】
付加価値=当期純利益+人件費+金融費用+貸借料+租税公課+減価償却費
例えば、次のような会社における「付加価値」を求めてみましょう。
労働生産性とは
「付加価値」を従業員数で割ったもので、企業の生産性を測定する指標として使います。
労働生産性=付加価値/従業員数
例えば、先ほどの会社の従業員が800人であったとすると、「付加価値」(加算法による)を従業員数で割った「労働生産性」は、
10,109,000/800≒12,636千円
となります。
労働分配率とは
「付加価値」の何%を人件費に支払っているかという比率で、人件費を「付加価値」で割って求めます。
労働分配率=人件費/付加価値×100
この「労働分配率」は、アメリカのラッカーが、製造工業統計を分析して、賃金が「付加価値」と一定の比率で分配されているということを発見したものです。
「付加価値」の中に占める賃金の割合は、長期的にみると一定しており、約40%です。
先ほどの企業の労働分配率を計算してみると、
4,100,000千円/10,109,800千円=40.6%
で、ほぼ望ましい数字になっています。
付加価値アップのチェックポイント
1.設備の改善を図れ
「付加価値」を高める最も身近な方法は、設備の改善です。
労働生産性=(設備資本/従業員数)×(売上金額/設備資本)×(付加価値/売上金額)
の公式で示されるように、設備改善が、労働生産性向上の大きな要素になります。
しかし、設備投資による生産性向上は、投資分の減価償却を考慮すると、費用増加となり、必ずしも収益性に貢献しないことに注意しなければなりません。
2.管理者のマネジメント能力の向上を図れ
設備改善による付加価値アップ策は、即効性があるが収益を圧迫するということから、真の意味での生産性向上は、マネージャーの部下指導能力向上に負うところが大きいと言えます。
③ 従業員の質を高めよ
管理者のマネジメント能力向上と同様に、従業員一人ひとりの能力をアップすることが、長い目で見て、 生産性向上に寄与すると考えられます。管理者は、このことに自らの仕事の大半を使う必要があります。
④ 成果配分向上による動機づけを図れ
従業員の質を高めるためには、会社の成果(利益)をどのように配分すべきかを見直し、全体のバランスを見た上で、手当などの支給により動機づけを図ることも、必要です。
⑤ その他付加価値を高めるために、チェックすべき要素項目
・技術向上策
・高収益率の製品開発
・柔軟性のある経営組織
・制度や手続きの改善
など
(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)
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