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オムニチャネル成功の鍵

第1回 オムニチャネル化の大きな波 その1

小河原 光司

 最近「オムニチャネル」という言葉をよく耳にしますが、一方で「オムニチャネル」と聞いてそれがどのようなものか、また、具体的にどのような活動をするものなのか、ということを正確にわかりやすく説明できる人は比較的少ないのではないでしょうか。
 オムニチャネルとは、「オムニ」+「チャネル」が合成された用語です。「オムニ」とは『すべての』『あまねく』という意味であり、「チャネル」とは、『商品・サービスを提供するあらゆる場/方法』を意味しています。
 つまり、オムニチャネルとは、「顧客が望む商品・サービスを、望むタイミング、価格で、あらゆる場/方法で購入・利用できる一連の仕組み」ということになります。
 小売業発展の歴史をひもとくと、1910年代にアメリカではじめられた「チェーンストア」は、その後「チェーンストア理論」として確立し、「小売業におけるイノベーション(創造的破壊)」の原動力となり、小売業が大きく変化、成長することに寄与しました。
 「オムニチャネル」推進の動きは、20世紀の「チェーンストア化」と同じくらいインパクトのある、21世紀における"イノベーション"になり得るものであり、現在は、まさにその潮流が動き始めているタイミングにあります。
 小売業にとっての「オムニチャネル」推進は、業態論を超えた小売業における『戦略そのもの』であり、小売業はもちろんのこと、小売業と関係があるメーカー、卸においても、この「オムニチャネル」推進に向けた動きが、今後の事業成長に大きな影響を与えることを十分に理解し、準備、推進してゆくことが必要となります。
 本コラムでは、オムニチャネルを理解するためのフレームワークを提示し、さらに実際の事例を紹介してゆく中で、小売業における戦略そのものである、オムニチャネル成功に向けた鍵を解説していきます。
 第1回目となる本稿と第2回目で、まずは「オムニチャネル化の大きな波」と題して、オムチャネルが求められる背景とその概要を説明します。

購買行動の変化を理解する

 まずは、みなさんに質問をしてみたいと思います。
 「みなさんはどこで買い物(商品・サービスの購入)をしますか?」
 実店舗ですか? AMAZONのようなEC店舗ですか? 紙のカタログの通信販売ですか? 毎週生協を届けてもらっていますか? EC店舗で注文後にコンビニエンスストア店頭で商品を引き取っていますか?

 続いての質問です。
 「買い物(商品・サービスの購入)をするとき、購入すべきかどうか、どのような情報を参考にして最終決定しますか?」
 店舗にいるスタッフのアドバイスでしょうか? 商品についているPOPでしょうか? ECサイトの商品レビューでしょうか? アーンドメディア(*1)でのクチコミでしょうか? 価格.comなどの比較サイトの情報でしょうか?

 最後にもうひとつだけ質問します。
 「買い物(商品・サービスの購入)をするとき、何らかのこだわりや特徴はありますか?」
 食べ物は自然食にこだわりお金をかけるけれども衣服は安いものを探す、デートのときは高級レストラン中心にする一方で1人のときはとにかく安い食事を心がける、おいしいものが好きなのでよく外食をするけれども給料日前1週間は自炊する、というように「自分自身の中にさまざまなこだわりや嗜好があり、しかもそのこだわりも状況変化する」ことはないでしょうか?

 コンサルティングの現場や研修などでみなさんに、上記の質問をすると、回答例以外にも実にさまざまな回答がでてきます。このような質問をすると、まさに"今"動いている購買行動の実態が見えてきます。

オムニチャネルが求められる理由

 上記の回答から現在の購買行動の特徴を少し整理してみると、いくつかの示唆を導き出すことができます。

1:【購入チャネル選択肢の拡大】

 店舗、EC双方のさまざまな店舗(*2)で商品・サービスの購入がいつでも可能となっていること

2:【購入における判断情報の適時入手および質量の増大】

 商品・サービスの購入を判断する「判断情報」が質・量ともに増大しただけではなく、必要とするタイミングで入手することができるようになっていること

3:【顧客多面性の増大】

 個々人のこだわりや嗜好が多様化し、高所得者/低所得者といった所得区分、M1層/F2層(*3)といった性別年齢別区分に代表される既存の「顧客特性層別概念」の一元的な適用ができなくなっていること

 この3点が、なぜ今オムニチャネルが求められているのか、を理解するキーワードです。
 「訪店できる行動範囲内の店舗に行き、そこで得られる情報の中で、そこに置かれている品揃えの中から商品・サービスを購入する」ことを前提とした、これまでの小売業の事業運営の考え方そのものが、その根底から崩れてきています。
 顧客の購買行動が大きく変化している中で、小売業自身もその変化に対応しなければならなくなっています。その対応方向性を示しているのが、オムニチャネルの推進による新たな顧客との関係性づくりです。

オムニチャネル時代以前の購買行動は、空間的時間的制約を前提として、店舗チャネルで購入していましたが、オムニチャネル時代では、そうした制約を排除されたハイブリッドチャネルでの購入となります。
 オムニチャネルとは、「オムニ」+「チャネル」が合成された用語です。「オムニ」とは『すべての』『あまねく』という意味であり、「チャネル」とは、『商品・サービスを提供するあらゆる場/方法』を意味しています。
 つまり、オムニチャネルとは、「顧客が望む商品・サービスを、望むタイミング、価格で、あらゆる場/方法で購入・利用できる一連の仕組み」ということになります。

 次回以降、本コラムでは「顧客が望む商品・サービスを、望むタイミング、価格で、あらゆる場/方法で購入・利用できる一連の仕組み」である「オムニチャネル」の推進について、その理解と成功に向けたポイント=鍵を紹介していきます。

【注記】
(*1)アーンドメディア:Facebook
企業が生活者からの評判や信用などを得るメディアのことで、生活者が情報の起点となるブログやSNSが代表的なアーンドメディアである。
(*2)店舗
本稿においては、EC上で物販もしくはサービスを販売しているサイトも「店舗」として定義している。
(*3)M1層/F2層:
 広告業界におけるマーケティングで用いられる、ターゲットとなる顧客の年齢別区分の名称のひとつ。M1層は「20歳〜34歳の男性層」、F2層は「35歳〜49歳の女性層」を指す。区分として、M1層.M2層.M3層.F1層.F2層.F3層.C層.T層、がある。

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