JMAC品質経営研究所だより Vol.22
自社の品質保証システムと体制を見直す視座(Part1)
- 生産・ものづくり・品質
宗 裕二
昨年の課題1位は「品質保証の体制強化」
昨
年、「品質保証の体制強化」というテーマが、各企業の考えられている課題の1位でした。「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」:一般社団法人日本能率協会実施)
多くの品質不適切事象が発生しておりましたので、当然の結果だろうと思います。 私どもの品質経営研究所では、企業の品質保証システムを評価するとき、右図に示す4つの視点を基本に置いています。1.システムの成熟度、2.顧客視点の品質定義、3.フェーズ別品質機能、4.部門別品質機能、の4つです。
本来、右図にもあるように、真ん中に基本的な考え方があり、品質保証システムを見直す時には最も重要な位置づけとして考えなければならない存在ですが、あえて、詳しくは紹介していません。それは、企業には「想い」や「個性」が必ず存在しているはずであり、そうした企業らしさを大切にしたいという思いから、限定的な表現を避けたいと思うためです。
ただ、自社が保証していると考える品質保証レベルと、顧客が望んでいるレベルにはギャップがあり、そのギャップを認識できることと、そのギャップを埋めることができることとを備えたシステムが品質保証システムであるということは、どの企業でも共通して言えることでしょう。顧客の要求は常に変化していますので、きめ細かくギャップを把握することは当たり前のことですが、一方でとても難しいことだと思います。
自社の品質保証システムが十分なのかを考えるとき、多く聞かれる声は、「自社の品質保証レベルが世の中の水準と比較してどの程度のレベルなのか分からない」と言うものです。こうしたご要望から私どもでは20年ほど前から、品質保証システムの成熟度レベルの考え方を公表しご提案してきました。
経営層と現場の第一線で見られがちなレベル認識の違い
品
質保証システムを評価するときの最初の視点が品質システムの成熟度です。これは、アメリカのカーネギーメロン大学で研究された組織成熟度モデルを参考に品質保証システムに特化して考えた5段階評価となっています。組織イメージと表現されている部分は自社の状態であると考え、どのレベルにいるかを自己評価してみて下さい。
私共では、日本の企業であればレベル4「予知予見」のレベルであってほしいと考えています。大きな企業では部門によって異なったり、多くの製品を手掛けている企業では製品によって異なったりする場合もあると思います。
「ある特定の部門はレベル4と言えるが、他の部門はレベル1である」とした評価になることもあるでしょう。分けて評価したほうが良い場合は異なる評価結果であっても問題ないと思います。ただ、自己評価は問題意識の高い方は低めに評価する傾向がありますので、なるべく客観的な視点を心掛ける必要があるかも知れません。
弊社で行った品質保証実態調査 にご参加いただいた方々はご存じかも知れませんが、国内の製造業全体ではレベル1~2近辺を自己評価とした企業が多くありました。経営層に近い方たちは、「既にわが社はレベル4である」と主張したい気持ちは大いに理解できますが、現実問題を直視している現場の第一線では「レベル1かも知れない」と感じていることが多いようです。
さらにマネジメントに特化して5段階レベルと表現すると下表のようになると考えています。少しでもご参考になれば幸いです。
我が社はレベル4であると胸を張って言える状態を築くべく、謙虚な姿勢でご支援し続けたいと思います。
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