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自主保全(autonomous maintenance)

 ものづくりの現場で設備オペレーターが操作だけでなく、設備の状態を把握して故障する前にさまざまな予防措置を実施する活動で、TPMの主要活動に位置づけられている。自主保全を実施するねらいは、設備面ではトラブル減、不良発生数減、安定稼動、故障しにくい設備への改善などで、人の面ではスキルアップ、モチベーションアップなどである。

 自主保全を実施している現場では、オペレーターが設備の日常点検や給油、部品交換、異常発見など行うことで設備の劣化を防ぎ、設備トラブルの未然防止により製品の安定供給を図っている。「私つくる人、あなた直す人」という製造と保全の分業による弊害を解消し、「自分の設備は自分で守る」という意識改革を促すことも自主保全の特徴の1つである。

 自主保全の「自主」の意味合いは、個人は「自主的にルールを決めて守る」こと、組織は「顧客要求や市場環境への柔軟な対応を自律的にできる」ことである。そのためにオペレーターには、1)異常を発見する能力、2)異常を処置・回復する能力、3)正常と異常の判定して条件を設定する能力、4)正常な状態を維持管理する能力が求められる。また、マネジメント側には個人がステップアップしていける「場づくり」、活動の停滞や後退を防止する「仕掛けづくり」が求められる。

 現場の「あるべき姿」を描き、それに向けて組織を動かし続けるためのマネジメント手法という面もあり、いわゆる「現場力」を強化するための必須項目がすべて自主保全で網羅されていると言えよう。

自主保全の特徴:ステップ方式による活動推進

 自主保全は従業員の意識改革・行動改革が伴うため、定着させるまで比較的長期間(〜3年)を要することもあり、中だるみや挫折をなくするために、段階を踏んで先に進む「ステップ方式」を取り入れている。完成形までを7つのステップで進めるように、その実施項目が整理されている(→自主保全の7ステップ参照)。

 ステップ方式はステップごとの目標達成度合いから「合格基準」を決めて、診断により基準をクリアすれば次のステップに移行するため、後戻りしない工夫が施されており、つどの「達成感」と成功体験を得られる利点がある。その診断では、自己診断・担当上司の診断だけでなく、社長、担当役員、工場長などによる現場での「トップ診断」を実施することになっており、トップ自らが現場・現物・現実でものづくりを評価できる仕掛けになっている(自主保全に限らず、仕組みが定着して自律的に運用できるまでは、トップの関心度が成否に大きく影響する)。

 国内のものづくりの現場では、正社員、派遣、外国人労働者が混在していることも多く、自主保全が成立する条件が厳しくなっていると指摘されている。ステップ方式という基本の進め方は踏襲しつつ、「あるべき姿」まで何ステップで進めるか、ステップごとの実施項目や目標をどう設定するかなど、自社に合ったものを検討したうえで、活動を推進していくとよい。

(文責:TPMコンサルタント  和泉 高雄)

■関連用語
TPM
自主保全の7ステップ

 

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