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第27回 マーケティングの個別戦略を考える(8)

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

前回まで4P個々の戦略課題と対処策について考えてきました。
今回は、これまで検討してきたことから4P戦略を進める上で考慮すべき課題を整理してみたいと思います。

セグメンテーション&ターゲットと4P全体を連動して考える

4P戦略を考える前提として、セグメンテーションを行い、ターゲットを絞ることが不可欠です。その上で、個々の(P)戦略を検討する際は、常に4P全体において、今検討している戦略の関係性を意識しながらターゲットにどう訴求していくかを考えることが重要です。

例えば、アパレルの優良企業ユニクロを例にとって考えてみます。ユニクロは、男女を問わず、あらゆる年齢層を対象としてターゲット軸を絞っていないように見えますが、商品で軸を絞り、その軸を基に整合性を取っています。一つひとつの商品は、以下のような共通のコンセプトを持ち、他の服との組み合わせを考えた上で、パーツとして提供しているのです。
 "ベーシック" ⇒ パーツとして使える、ロゴなし、低価格
 "あらゆる年齢層、みんなの服" ⇒ 高品質かつ低価格、CMも大人から子供まで、ユニセックス、シンプル
 "高品質"  ⇒ 一流デザイナーを起用

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常に顧客の変化に敏感になる

新たな市場に出て行く場合は、セグメンテーションを行い、ターゲットを決め、情報収集を通じ顧客を理解しようとします。しかし、戦略を実践に移し軌道に乗ると、顧客の変化に鈍感になって戦略の見直しを忘れがちになります。その結果、ターゲット顧客を中心とした購入形態の変化に気づかず、過去の延長線上の戦略が効果を示さなくなるのです。常に、顧客の変化情報を把握し続ける感度を高めていくことが不可欠であり、それを組織としてどう制度化していくかが、ますます重要になっているのです。

このことを実際にやるとなると、相当なエネルギーが必要であり、企業にとってはさらに大きな課題が提起されるといえます。たとえば、消費財ビジネスでは、(競合も含め)既存商品が、生活者の家庭内に入ってどのように使用され、廃棄されているかを調べることが重要になるのです。

社内連携問題による影響

セグメンテーションと4P戦略の連動ができていない企業は、関係部署間の連携に起因する課題が多いようです。過去にコンサルティング支援をした企業を例に考えてみましょう。
トイレタリー事業を行っているA社でマーケティング戦略を推進する際、以下のような社内連携に起因する課題が明らかになりました。

(1) 顧客ニーズ・競合分析段階
 ・活用目的を曖昧にしたまま外部専門家に依頼するため、具体的な打ち手につながらない。
 ・調査部署だけの活用にとどまり、関連部署と連動した活用が不足している。

(2)商品コンセプト検討段階
 ・営業、研究、生産など異質な視点からの検討が不足している。
 ・関連部署内での原価評価のキャッチボールがうまくできない。

(3)商品の市場導入後の初期段階
 ・小売店関係者の評価情報が関係部署間で共有されていない。

(4)各段階に共通する課題
 ・部門専門家はいるが、全体を統合して意見調整をできる人がいない。あるいは組織の中に機能がない。

事例企業では、部署間連携強化を目的に、各部署から選抜されたメンバーでマーケティングサイクルを考えるチームをつくり、メンバーは自部署の実態を把握し、検討の中で意見をぶつけ合い、他部署の考え方を理解し、そこで決められたことを自部署で指示徹底する仕組みを作りました。
色々な課題検討のプロセスを通じ、自分たちの仕事がどう繋がって、お互いにどう価値を与えているか(いないのか)がわかり、信頼感を高められる活動となりました。

このようなケースは、多くの企業でも見られます。
どのように組織連携をさせるかは4P戦略を推進する上での大きなテーマと認識することが重要です。組織連携の取組みは、かなり高いハードルですが、それを超えられた時、関係者の働きがいにも繋がるなど企業にとって大きな財産になるのではないでしょうか。

次回テーマは、「消費財、生産財における4P戦略事例」についてお話しします。

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