第2回 市場セグメンテーション(2)
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
製品市場区分が決まり、マーケティングの対象が確定したならば、いよいよマーケティング戦略全体の方向を考えるステージに入ります。この方向性は、自社の土俵となる市場とその市場における己の位置づけを知ることから導かれます。
具体的には、
(1) 市場のセグメントを知る
(2) 事業特性とKFS(キー・ファクター・フォー・サクセス)を知る
(3) 顧客を知る、市場を知る
(4) 自社の市場地位と競争余地を知る
(5) 自社の強みと弱みを知る
(6) 環境分析から脅威と機会を知る
ことが必要になってきます。
市場のセグメントを知る
まず、(1)の「市場のセグメント」とは、市場をある意図をもって細分化した区分のことです。この区分を行うことを「市場セグメンテーション」と言います。たとえば、消費財であれば、年齢層別・性別といった人口統計学的なセグメントやライフスタイルで分けたセグメント、あるいは地理的なセグメント等が考えられます。一方、生産財であれば、顧客の業種や規模、製品の流通形態(直販市場、ルート市場など)、製品の用途、使用頻度などによる区分があります。
生産財の場合の一例として、B社の機械の市場セグメント(上図)を掲げておきました。斜線が入っているのは存在しないセグメントです。また、ここでは各セルをくくらずにそのまま表示してありますが、実際には、「製品市場区分」同様、他のセルとどうくくるべきかを考える必要があります。「製品市場区分」も「市場セグメンテーション」も、自社の利点が活かせるようなくくり方を工夫することが重要です。
このように、区分するという点では「製品市場区分」も「市場セグメンテーション」も同じですが、前者がマーケティング戦略を検討する対象を決めるための大分類であるのに対し、後者はよりきめ細かくマーケティングを考えるための中分類と言うことができます。
なお、「製品市場区分」という言葉は「市場セグメンテーション」と混同されやすいため、「市場セグメンテーション」よりも広い概念であるという意味を込めて今後は「事業区分」と呼ぶことにします。
そのほか、「製品のポジショニング」と呼ばれる区分の仕方があります。この方法は製品の種類や特性で市場を細分化して製品戦略を検討するのに用いられることが多いため、一般的には、「市場セグメンテーション」よりもミクロの次元のものとしてとらえられています。前記の大分類、中分類に対する小分類の位置づけです。しかし、「製品のポジショニング」による区分をそのまま「市場セグメンテーション」とすべき場合も少なくありません。つまり、区分結果を製品のバリエーションと考えるよりも市場のバリエーションとしてとらえた方がよい場合には、「市場セグメンテーション」と位置づけて、個別戦略としての製品戦略ではなく、この基本戦略のステージで検討します。本連載では、この「ポジショニング」は製品戦略の項で詳述します。
なお、これらのセグメントは、P.コトラーが言っているように、
(1)測定可能であり、
(2)到達可能であり、
(3)別個の戦略を立てる価値があるほどの規模を持っていること
が必要です。(P.コトラー、小坂・疋田・三村訳「マーケティング・マネジメント」プレジデント社)
たとえば、概念的にはセグメントが存在しても、そのセグメントに属する顧客に訴える方法論を見つけることが現実的に不可能であれば、その区分には意味がないわけです。
「区分するということは、その区分ごとに異なったアクションをとれる」という前提があって初めて意味があるものになりますが、この「市場セグメンテーション」に限らず、無意味な区分に時間を割いていることが多いものです。
(小林 裕)
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