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第92回 「営業アウトソーシング成功の5つのポイント」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

営業業務のアウトソーシング(外注化)を導入されている企業が多くなっていますが、残念ながら、いわゆる「派遣営業マン」を採用する企業の大半が、実際の運用で多くの課題を抱えているようです。その要因は後述しますが、派遣営業マンを活用する企業のなかには、失敗に懲り、外部戦力の活用から撤退する動きさえ見られます。 しかし、言うまでもなく、きちんと活用さえできれば、企業にとって大きなメリットがあります。さらには、労働力の活用という点で、社会的にも意義は大きいと言えます。 これから紹介するいくつかのポイントを踏まえ、この貴重な外部戦力をフル活用してください。

派遣=プロという認識は幻想

「派遣営業マン」を活用する領域は、そもそも目的に応じて次の二つに大別されます。

① 効率化

② 即戦力

①は、企画業務などのブレインワークとマニュアル的な定型業務に仕事を分類し、後者に「派遣営業マン」を導入して固定人件費の圧縮を図るものです。同時に、正社員をブレインワークにシフトさせることで、付加価値の増強を図ることができます。このパターンは、主に人件費の高い企業で見られます。

②については、中堅・中小企業やベンチャー企業などに多いケースで、素早く営業体制を整えることが目的です。販売ノウハウや実績をもった人材を確保して、新規事業に取り組み、新しい販売チャネルを開拓しようというものです。
いずれも、実際に「派遣営業マン」の活用に成功すれば、その効果は大きいです。しかし、現実に聞こえてくるのは、「期待どおりに働いてくれない」といった落胆の声が多いようです。 さまざまな失敗事例を分析すると、その理由は、次の5つのポイントに集約できます。逆に言えば、このポイントが「派遣営業マン」活用の要諦です。

(1)どの業務を任せるのかを明確にする

意外にも、この点が曖昧なまま外部戦力を受け入れている企業が多いです。
実際にあった例で、「派遣営業マン」が出社すると、いきなり訪問先リストと商品を渡し、「これを売ってきてくれ」と言っただけで、「実績が上がらない」と嘆いていたマネジャーがいましたが、このような受け入れ方でうまくいくはずがないのです。
正社員と同じ仕事を期待するのか、定型化された業務を任せるのか、あるいは、新規開拓なのか、既存客のフォローなのかといったことは明確にしておかなければなりません。そのためにも、現在行なっている業務を棚卸しする必要があります。

(2)マネジャーが採用に関わる

「派遣営業マン」が出社する日に初めて上司と顔を合わせたという事例がありましたが、これもナンセンスなことです。営業マネジャーは多忙なため、採用は人事部任せにしてしまいがちですが、それでは現場で役立つ人材を採用するのは難しいと言えます。
採用に当たっては、最低でも三回は採用担当者が本人と会って話をするべきですが、そのうち二回はマネジャーも同席し、さらに、そのどちらかの機会には、マネジャーの右腕的存在である営業マンも立ち会い、感触をつかんでおくことが望ましいです。
そのくらいの時間と手間をかけなければ、期待どおりの外部戦力は採用できないでしょう。

(3)過剰な期待はしない

このように言うと身も蓋もなくなってしまいますが、「派遣営業マン」=「何でも売るプロの営業マン」というのは幻想です。
一般に、パソコンの入力作業や受付業務といった仕事では、アウトソーシング会社に依頼すれば、きちんとしたプロがやってきて滞りなく仕事をこなしてくれます。ところが、営業という仕事は属人的な要素も強く、商品や販売ルートによってスタイルの違いも大きくなります。ルートセールスを30年間経験した営業マンが、訪問販売でもそれなりの実績を残すとは限らないのです。
自社営業マンのなかでもトップクラスの力量を「派遣営業マン」に期待する企業が多いのですが、そのようなケースは、ほぼありえないと考えた方が良いのです。

(4)アウトソーシング会社を慎重に選別する

営業業務が、パソコン入力や受付業務といった仕事とは性格が違う以上、外部戦力を導入するのはアウトソーシング会社との「業務委託」だと考えるべきでしょう。それだけに、アウトソーシング会社を慎重に選ぶ必要があります。
というのも、この業界では「下請け」「孫請け」は常識です。つまり、クライアント企業からの派遣依頼を受けるのはA社であっても、実際に派遣されてくるのは、その「孫請け」にあたるD社に登録されている営業マンということが決して珍しくないのです。こうなると、どんな人材が派遣されてくるのかわかりません。
社会人としてのマナーは当然のこと、アウトソーシング会社にクライアント企業の業界知識や商品知識がしっかりと教育される体制ができているかは確認しておくべきです。また、「派遣営業マン」の過去の実績を報告するような管理体制がととのっているかも調べておくべきでしょう。

(5)マネジメント能力のある人材の配置

これに関しては経営陣が押さえておくべきポイントですが、「派遣営業マン」の上司となる人材にマネジメント能力が欠如していては、せっかくの戦力も活かせません。
通常、「派遣営業マン」は短期間で目に見える成果を出さなければ雇用が保証されないため、特に最初の1~2ヶ月は懸命に働くものです。それが周囲の営業マンにも好影響を及ぼして支店や営業所全体が活性化されれば問題はないのですが、逆に、派遣営業マンが働きづらくなる雰囲気ができることもあります。周囲の営業マンから「そんなに働くとオレ達の立場がなくなるじゃないか」といったプレッシャーを与えられるケースがあるのです。
そのようなことにならないためにも、マネジャーには現場をしっかりと掌握するだけの能力が欠かせないのです。

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以上述べてきたポイントを踏まえ、貴重な外部戦力を活用してください。

(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)

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