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サステナブルな経営が2023年はどう注目されていくか

  • SX/サステブル経営推進

茂木 龍哉

 2023年がスタートした。SDGs(持続可能な開発目標)の達成年となる2030年まで、残すところ7年となり、また同様に、温室効果ガス排出量を2030年までに約半減という目標に対しても、その期限が近づいてきた。
 その中で、2022年を振り返ると、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などの言葉を耳にする機会も増えつつあり、世の中に認知し始めている一方、ひとりひとりが自分事として理解し行動出来ているかというと、まだまだ黎明期を脱していない状況ではないかと思われる。

 企業においては、プライム市場上場企業に対して気候変動によるリスク情報の開示(TCFD)が実質的に義務付けられたのをきっかけとして、大手企業から中小企業に至る各業界のサプライチェーン全体に対して、脱炭素に向けての動きが拡がってきた。また、2022年8月には、経済産業省より、SX版伊藤レポートとして、“SXの実践こそ、これからの日本企業の「稼ぎ方」の本流となっていく”メッセージが提示され、経営層を中心にますます関心は高まってきている。

サステナビリティ経営課題実態調査2022から見えたこと

 JMAホールディングの3社(JMAC、JMAM、JMAR)で行ったサステナビリティ経営課題実態調査2022においては、サステナビリティ先進企業における10個の特徴が示されたとともに、サステナビリティ経営実現への4つのアプローチが提言されている。本調査は、上場企業を中心とした202社の回答を集計したもので、主要事業が10年後も通用すると回答した2割強の企業群(サステナビリティ先進企業)とそれ以外の企業群の回答の有意差に基づき、抽出しまとめられたものである。

 調査結果から、求められる枠組みや水準へ到達することでサステナブルを実現する動きは進んでいる一方、イノベーションにより付加価値を生み出すことでサステナブルを実現する動きは一部の企業に限られていることが見えてきた。そして、そのような企業になる為には、シン・市民主義経営の4つのコンセプトとして、
① 現場実態に根差した“一挙両立”テーマの設定
② 自社らしさの追求
③ 社員の参画機会の創出と当事者意識の醸成
④ 外部との積極的な連携と人材育成を可能にする企業文化づくり の必要があると提言されている。
 以上のサステナビリティ経営の現状を踏まえ、サステナブルな経営が2023年はどう注目されていくかについて紹介していきたい。

1つ目の注目点としては、アクティブな活動へのシフトが進むかという点だ。
上記調査結果にもあるように、経営者は、これまでのリスク対応や投資家対応中心のパッシブな取り組みから、成長に向けたイノベーションなどのアクティブな取り組みに移っていく必要性を強く感じている。そのためには、まず、「自社(グループ)らしさ」があふれる理念・パーパス・ビジョン・戦略を再考し、自社のDNA・強みと未来予測に基づき、自社の製品・サービスが実現する新しい未来像を考えること、そしてさらになぜ自社がこの課題解決を目指すのか、なぜこの事業に取り組むのかについて、社員全員が腹落ちできるものになっている状態を作り上げていくことなどが必要といえる。

2つ目の注目点としては、現場への浸透がいかに進むかという点だ。
経営層がサステナビリティ経営を推進しようと思っても、現場では日々の目の前の仕事・課題に忙殺され「サステナビリティ経営どころではない、余計な仕事が降ってきた」と思っているという意識のギャップがある企業も多いことが、調査結果からも読み取れた。そのギャップ解消のためには、経営層が掛け声を発信するだけではなく、現場の実態・問題点を把握することが重要である。そして、現場課題の解決とサステナビリティ経営実現の課題解決を同時に取り組むための“一挙両立”のテーマ設定を行うことが近道といえる。

3つ目の注目点としては、人的資本経営の具体的な実践が進むかという点だ。サステナビリティ経営の担い手となる監督機関、経営者、マネージャー、現場において、必要な機能と能力が可視化され、それらの過不足を定量的に把握し、戦略的に採用・育成を進めていく必要がある。とくに、人材育成については中長期的な視点でのプラン作成や企業文化・風土の醸成無しには実現しない課題であり、早急に取り組むことが求められる。2023年は、各社が人的資本経営の為の人材投資が大きく進む1年になるのではないだろうか。

 以上の3点は注目点でもあり、各社の取り組みの参考にもなろうかと思われる。日本企業のサステナビリティ経営2023年のステップアップに期待したい。

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