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【業務マニュアル作成の手引き・前編】業務マニュアルはなぜ必要か、改めて考える

  • 業務改革・システム化

梅田 修二

 働き方改革の位置づけで、属人化を解消し、助け合える職場をつくるために、業務マニュアル作成に取り組んでいる企業が増えてきている。

 その際、自己流で活動に取り組んでも、活用できない業務マニュアルが作成され、狙った成果は出ない。このコラムでは、業務マニュアルの作成の意義、活用方法などを解説する。

業務マニュアル作成の意義

 まず、なぜ業務マニュアルが必要なのか。一般的な業務マニュアル作成の意義は、大きく4つに分けることができる。

①企業として業務の遂行状況を管理できている状態をつくる    
 近年、企業の社会的責任が強く追及される時代になってきており、従業員やアルバイトの起こした不祥事でも経営トップの管理責任が問われる。不祥事が起きた際に、ニュースとしてよく取り上げられるのが、「マニュアルはあるのか?マニュアルの内容がどうなっているのか?」ということである。

 マニュアルがない、マニュアルに不備があるということは、企業として業務の遂行状況を管理できていないことを意味する。みなさんも新しい業者と取引を検討する際に、<業務マニュアルがある会社>と<業務マニュアルがない会社>どちらの方が安心して取引ができるかというと、業務マニュアルがある方がいいと答える方が多いだろう。つまり、業務マニュアルがあり、業務マニュアルどおりに業務遂行させることで、企業として業務の遂行状況を管理できる状態をつくることができるということである。

 したがって、業務マニュアルに記載されている手順は、組織として効率面や品質面等を総合的に考慮してもっとも良いと組織的に定めた業務手順(=標準手順)になる。そのため、業務マニュアルを作成・更新する際には、必ず上長なりに会社の承認を得る必要がある。

②業務標準化を推進し、生産性を向上させる
 業務標準化とはなにか聞くと、「もっとも良い手順を決めること」と答える方がいるが、それは100%の答えではない。もっとも良い手順を決めてもそれを守らなければ、効率も品質も上がらず意味がない。業務標準化とは「もっとも良い手順を決め、かつその手順をみんなが守っている」状態である。

 生産性向上のためには組織として決めた手順を徹底させる必要があり、そのためのツールとして業務マニュアルを活用する。

③業務の応援を可能にする
 業務を遂行できるスキルを持った担当者が1人しかいない、いわゆる属人化の状態では、現担当者が急な休みになった場合、業務を継続できないリスクが高い状態にある。しかし、そこに業務マニュアルがあれば、他の担当者が代行応援することができる。

 近年、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革が叫ばれている中で、属人化により担当者が休めない状態・業務負荷を軽減できない状態を解消するため、業務マニュアル作成を推進する企業が多くなってきている。

④引き継ぎの際の教育ツールになる
 担当者変更により、生産性が大きく低下するということがよくある。新しい担当者へ引き継ぎする際に教育ツールとして業務マニュアルを使用することで、教える内容が人によって異なるといった不具合も防ぐことができ、担当者変更による生産性の落ち込みを抑制することができる。

 また、業務マニュアルがあることで、引き継ぎ相手が自習することができ、教える側の教育時間の削減にもつながる。

 数年に1回定期的にジョブローテーションがある会社や非正規社員を多く活用している会社など、人の入れ替わりが多い会社では、引き継ぎのための教育ツールとして業務マニュアルを活用することは特に有効である。

本社部門(総務・人事等)の業務特性からみる業務マニュアル作成の意義

 本社部門は、業務マニュアルがなく属人化しているのが多くの企業の実態である。属人化している要因を、本社部門の3つの業務特性から説明する。

 1つ目の業務特性は、「多品種少量」である。各業務の業務量はさほど多くはないが、業務種類数が多い。そのため、複数担当制にする人的リソースもなく、業務種類数が多いことから、業務マニュアルを作りきれないことが属人化につながっている。

 2つ目の業務特性は、1年に1回、2年に1回など「発生頻度が少ない業務が多い」ことである。そもそもの発生頻度が低ければ、引き継ぎするタイミングで実際にやって見せて教えることができない。それ故に、担当者の独自の方法での業務遂行となりやすい。

 3つ目の業務特性は、「着手から終了までの期間が長い」ことである。社内イベントや採用業務などの典型的なこのタイプの業務は、引き継ぎのタイミングで経験として教えることができない。

 この「多品種少量」「発生頻度が少ない業務が多い」「着手から終了までの期間が長い」といった3つの業務特性から、本社部門は属人化しやすく、引き継ぎをしても業務効率や業務品質が落ちやすい部門となっている。だからこそ、業務マニュアルがあることが有益であり、その重要性が特に高い部門といえる。本社部門の場合は、業務種類数が多いため、優先度を設定して、業務マニュアル作成を進めてほしい。

 今回は業務マニュアルを作成する理由について説明した。次回は業務マニュアルを実際に活用する方法について、ポイントを述べる。

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