第19回 ターゲット設定について
- 営業・マーケティングの知恵ぶくろ
笠井 和弥
前回まで、18回にわたりマーケティングの基本戦略の考え方について触れてまいりました。今回は、基本戦略の最後のテーマとして『ターゲット設定』について考えてみたいと思います。
市場セグメンテーション、ポジショニングとターゲット市場設定
第1回、 第2回で取り上げた市場セグメンテーションの必要性と考え方を振り返ってみましょう。
マーケティング戦略を検討する上で、漠然と市場を見ても市場特性はつかめません。 市場特性を正しくつかむためには、有効な単位で市場をセグメント(細分化)することが必要です。様々な視点でセグメンテーションを行い、ある市場セグメント(ターゲット市場)に焦点を当てたとき、高い確率で受け入れられる商品やサービスはないだろうかと着想することが可能となります。
厳しい競争環境下、どこに自社の製品・サービスを提供するのか考えないと、効果的な施策展開はできません。ターゲット市場を選定する上で、
・ 市場における自社のポジションをどこにとるのか
・ 競合プレーヤーとどう差別化するのか
というポジショニング検討を同時に行います。ポジショニングとは、ターゲットとする市場や顧客に対して、企業独自の価値や差別化ポイントを認知させ、自社の存在価値を確立することです。
ターゲット市場設定の進め方
市場セグメンテーションを行った上で、自社の強みを発揮できる余地がどこにあるのかを決めることを ターゲティングと呼びます。
一般的に、ターゲットとする市場設定は、市場の魅力度と自社地位の2つの視点から総合的に評価した上で、自社の経営環境(規模・業績・経営資源など)から見て自社の強みが最大限に活かせられる市場はどこなのかを判断します。
市場の魅力度は、市場規模の大きさと市場の成長性を分析することにより評価します。
自社地位は、自社の実績や競合プレーヤーの動向、顧客層の特性、チャネル(商流・物流)特性などの視点から評価します。
■市場の魅力度
・ 市場規模はどの程度あるか
・ 市場のライフサイクルはどうか ...成長性は十分か、成熟期に入ってはいないか
・ 参入障壁はクリアできるか ...法規制・参入条件など
■自社地位
・ 現在までの自社実績はどうか ...伸長しているのか
・ 競争状況はどうか ...寡占状態でないか、主要競合の動向はどうか
・ 主要顧客、商・物チャネルはどういう特性をもっているか
健康食品ビジネスを例に考えてみます。(下図)
まず、健康食品取り扱い業態と自社商品の効能から市場をセグメントします。このときのポイントとして、
・ 市場環境(競合が同じ、成長市場か成熟市場か、など)が似た者同士は、ひとまとめに
・ 売り方(一般市場向けか業務市場向けか、店舗販売か無店舗販売か、など)が同じものは、
ひとまとめに
・ 商品や技術の用途や機能が同じものは、ひとまとめに
・ 市場規模、拡販余地がつかみやすい区切りになるように
します。
次に、市場セグメントごとに、市場の魅力度(過去3~5年の市場規模と成長性予測)、自社の強み発揮の可能性(チャネル活用、商品開発力、顧客活用など)をデータで検証しておきます。
その上で、
・ 効果・効能(商品価値)を競合他社と比較し、自社商品の強みのある部分を明らかにする
・ 各効果・効能に対して顧客ニーズが存在する市場を選択する
・ 自社商品の強みが発揮でき顧客ニーズが強い市場をターゲット候補市場として選び出す
というステップで検討を進めます。
ターゲット市場設定検討の注意点
ターゲット市場設定のプロセスで、注意すべき2つのケースを挙げます。
一つは、何をやればよいのかという仮説(意思)がなく、分析さえすれば何か出てくるのではというケースです。分析をすればターゲットが自動的に決まるものではありません。多面的な分析結果は、あくまでも ターゲットを決めるための材料です。
もう一つは、自分達のやりたいことが決まっていて、それを裏づけするためのデータ収集をしてしまうケースです。こちらの方は、客観的な分析がおろそかになり、間違った方向に進んでしまう危険性があります。
以上2つのケースに陥らないようにするため、意思決定者に関わるメンバーが複数の仮説を持った上で、客観的なデータに基づいて『ターゲットを決めるプロセス』をどう作っていくかが重要です。 また、セグメンテーション、ポジショニング、ターゲッティングを検討・活用する上で共通する考え方として、『市場、自社の実績、競合の動きを見ながら、定期的に見直し流動的に変えていく』ことを心がけて下さい。
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